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通りをゆく人々を眺めながら、自分の顔の輪郭を手で確かめる。鏡など持っていないので確認出来ないが、自分の顔立ちはどんなだったろうか。
飽きるまで通りを眺め回してから今までずっと持っていながら意識していなかった持ち物に視線を落とす。
コンビニの買い物袋とまだ滴の付いた傘。
袋の中は飲み物やカップ麺。栄養ドリンクや炭酸水はもしかしたらかなり貴重かもしれない。今後を考えると、飲み水に食糧、雨風を凌げる寝床など心配事は尽きないかと思われる。カップ麺はお湯の確保がどうか判らない以上難しいかもしれない。最悪そのままかじって食べることになりそうだ。どちらにせよ、これらはかなり重要だ。大切にしていかねばならない。
「――というかこういう場合ってスマホが神器なんじゃねーか? そういうの最近流行ってるし」
ふと思い付いたことが口をついて出てしまった。それほどまでに肝要なことのように思えた。
正味な話、スマホひとつで何かが出来るとも思えないが、それはそれとして期待してしまう自分がいるのも事実。現代科学の粋を集めた精密機械はもはや魔法みたいなもんなのでは?
いつも携帯をしまう右のポケットを上からまさぐり、背筋に冷たいものが這う。
ない。左ポケット、ない、ケツポケ、ない、お気にの糞ダサトレーナーを胸から腹から脇からまさぐるがそもそも収納スペース皆無。
脂汗がにじむ。やべえ……スマホ、充電器に繋いだままコンビニに行った……んだっけ?
何回も同じ場所を探すが、やはり見つからない。希望が手から滑り落ちた。難易度が一気に上がったような気がする。