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心が現実逃避を始め、無心で路地を往復する。もしかしたら雨の日が見せた幻みたいな? そんなフィクションじみた展開を望んでいた。
しかし目の前に広がるのは望んでいない感じのフィクション展開。これってもしかしなくても異世界的なあれですよね。
さすがに往復回数二桁に突入しかけたところで往来がざわめき始めた。不審者を見る目の人々に対して愛想笑いを浮かべながら路地から離れることにした。もはやなんの変哲もない路地だと証明されてしまっていたけれど、それでも元居た場所に戻る手掛かりから離れてしまったような錯覚を覚える。やっぱりあと一往復……いや二往復くらい……。
後ろ髪を引かれる思いでその場を後にする。とりあえずは状況を、というか気持ちを整理したい。落ち着ける場所を求めて、人目を避けるように道の端をこそこそと歩き始めた。
お上りさんのような気持ちで見える全てをまじまじと見てしまう。馴染みのない簡素な造りの建物や異邦人さながらの外見の人々、果ては道端で眠っている犬のような生物までが違和感の塊だ。
特にその辺を歩いていたりする人々は、格好もへんてこだし、顔立ちもかなりのもの。
若い男はかなりのイケメン、若い女はかなりの美女、少年少女は端正な顔立ちで将来有望、果ては年嵩の方々までイケオジイケオバばかりだ。