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「げっ……雨降ってきてんじゃん……」
コンビニで会計待ちの列にて。
ふと雨音が聴こえてきたと思えば、その音は次第に強まりやがて豪雨と言って差し支えないほど大きくなっていた。
近くにいたスーツ姿の中年や学生たちも外を見ては、おそらく俺と同じようなことを思っていただろう。
面倒だな、と。
最近はカラッとした暑い日が続いていたが、今日はやけに厚い雨雲が空全体を覆っていていつ降ってきてもおかしくないような天気ではあった。
が、まさか外出しているタイミングで降ってくるとはツイてない。
家までさほど遠くもないが、さすがに雨が強すぎて降られながらという気にもなれない。一度列から外れて入口横まで商品のビニル傘を取りにいく。ただの安傘一本500円也。足元を見た強気な値段だが仕方ない。
列に戻ると、先程まで後ろで並んでた兄ちゃんが会釈をしながら前を手で示した。戻っていいよというジェスチャーに見える。
(なんて気の良い兄ちゃんなんだ)
些細なことだが、少しだけ心が揺れた。こんなん惚れるわ。イケメンかよ。
イケメンに返礼しつつ厚意に甘えさせてもらい、列に加わる。