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魔人の使いがやって来た

うおおお更新うおおお

 波乱に満ちた「萌え萌え大運動会」から数週間。


 第二の魔王、三枝詩織は事あるごとに俺を訪ねてくるようになった。

 わざわざルーンガルドに来る為だけにテレポートも覚えたらしい。


 俺の部屋には日本人の魂、こたつがある。

 そして日本からの転生者であるリカもよく遊びに来るわけだ。


 おまけにリカは女性で、詩織にとってはいい相談相手になる。

 するとどうなるか?


「ちょっと兄さん、もうみかんないの?」

「みかんならそこにいつもストックがありますよ~!」

「それならもう私が全部食べたわよ!」


 こうなる。

 ソフィアが薦めたせいか、詩織は俺の事を「兄さん」と呼んでいる。

 まあ別に嫌というわけでもないから止めはしないけど。


「ていうかお前ら、何で俺の部屋に集まるんだよ」

「え、だってこたつあるし。リカちゃんもいるから」

「私はヒデオと遊ぶためよ!」

「ふふふ、英雄さんモテモテですね~!」


 やれやれ……とため息を吐きながらベッドを降りて、俺もこたつに入る。

 さっきエレナとアリスが淹れて来てくれたお茶を飲み始めた。


「え、何?兄さんって冴えない顔してるのにモテたりするわけ?」

「またまた~詩織ちゃんだって毎日来てるじゃないですか~ふふふ」

「わっ、私は別に……兄さんに会いに来てるわけじゃないから!」

「はいはいうふふ」


 ソフィアが詩織から見て何ポジションにいるのかがよくわからん。


「私はヒデオに会いに来てるわよ!!」

「っっ!!ごほごほっ!!」


 飲んでたお茶が変なところに入った。


「な、お、お前何言ってんだよ」

「だったら私が何しに来てると思ってたのかしらね」

「普通に遊びに来てたのかと……」

「もちろん、それもあるわよ」


 そこに詩織がにやにやしながら割り込んでくる。

 俺はやれやれともう一度お茶を飲み始めた。


「へ~リカちゃんってこんなのが好みなんだ~?」

「そうよ!ヒデオと結婚したら毎日楽しいかなって思ったりするわ」


 今度は飲んでたお茶を噴き出してしまった。


「あらあら。今日のリカちゃんは何だか積極的ですね!」

「別に前からヒデオに対してはこんな感じで接してるけれど」


 何でこいつこんなに男らしいんだ。

 からかおうとした詩織が逆に顔を赤くしてやがる。


「逆にあなたはどうなのかしら!シオリちゃん」

「なっ、べ、別にこんなのどうとも思ってないわよ!」

「あらそう?その割には随分と頼りにしてるみたいじゃない!」

「か、勘違いしないでよ!私が頼りにしてあげてるの!しょうがなくね!」

「言ってることの意味がわからないわ!」

「ふふふ、詩織ちゃん可愛いですね!英雄さん」

「ソフィア……本当に人をからかうのが好きだよな、お前は」


 そんな会話で盛り上がっていると、扉をノックする音がした。

 返事をすると、ライルが入ってくる。


「ヒデオ様、来客です。炎の魔人、アグニ殿の使いの精霊が来ています」

「炎の魔人?」


 また面倒くさそうな単語が出て来たな……。


「炎の魔人というのは、その名の通り、炎にまつわる事象を司る炎の精霊たちの長です。気温や天気にも影響を与えることもある、極めて重要な存在です」

「だったら何で今まで出て来なかったんだ」

「気温や天気にも影響を与えるゆえに、チート系主人公によって封印されていたようです。ですが、最近ヒデオ様が倒したチート系主人公の中にその封印を施した者がいたようで、封印が解除されたようです」

「なるほどな」

「それに、炎の魔人の封印が解けたということは、他にも氷や雷、風など各事象を司る魔人たちも復活していると思われます」

「魔人ってそんなにいるのか」

「はい。それはそうと、今は炎の魔人の使いが来ておりますので、用件も含めて色々とお話になるのがいいと思われます」

「わかった。すぐ行く」


 俺は立ち上がると魔王っぽいマントを着て部屋を出た。

 ちなみにリカと詩織は当然のように部屋に残ってくつろぐ構えだ。


「魔人さんの使いって、どんな方なんでしょうね!」


 わくわくしている様子のソフィアの声を聞きながら、玉座の間に向かう。


 魔王城ことサンハイム森本に来客があると、基本は玉座の間で対応する。

 俺は玉座に偉そうに座って、ライルの案内でやって来た炎の精霊を迎えた。


「お初にお目にかかります。炎の魔人アグニの使い、シニと申します」


 シニは、いわゆる「ヒトダマ」みたいな感じのやつだ。

 火の玉がふわふわと宙を浮いている。

 それが意志を持って話しかけて来ているのだ。


「あー、そんなちゃんとしなくていいから。ここのモンスターたちみたいに俺にはフランクに接してくれ」

「ありがたいお言葉ですが、普段から私はこんな感じですので……」

「そうか。それで、今日はどんな用事があって来てくれたんだ?」

「はい、本日は我が主、アグニ様の命によりご挨拶に伺いました」

「挨拶……それだけか?」

「はい。アグニ様は今後、人間よりも魔族側と懇意に付き合うことを考えておいでです。チート系主人公に封印される以前は人間も魔族も平等に付き合うという方針でしたが、自分を封印した人間にはもう愛想が尽きたのだとか」

「まあ……それはそうだろうな」

「そんなわけで、直接アグニ様がこちらに伺ってはご迷惑になる可能性があるために本日は私が参上いたした次第です」

「迷惑?……そんなことはないけど……」


 ソフィアはもうこの辺りで寝ている。

 俺の肩からすやすやと気持ちのよさそうな寝息が聞こえて来ていた。


「それでは今日のところはこれにて失礼致します」

「ああ、迷惑じゃないから気が向いたら遊びに来いってアグニに伝えてくれ」

「……よろしいのですか!?」

「ん?ああ、もちろん」

「何と寛大な……!かしこまりました、必ずやその様にお伝えしましょう」


 そう言ってシニは去って行った。

 シニを案内してきた後は傍らで控えていたライルに聞いてみる。


「迷惑とか寛大とか、何のことだろうな」

「さて……そこまで気を遣うところからして、性格など内面の問題とも思えませんし……私にも見当がつきませんね」


 ライルは、知ってはいるが会ったことはないといういつものパターンだ。


「まあ、ああ言っておけばその内会いに来るだろ。そしたらわかるさ」




 部屋に戻ると、人は更に増えていた。

 仕事が終わったエレナとアリスが輪に加わっていたのだ。


 こいつらは本当にここが誰の部屋かわかっているんだろうか。


「あ……お帰りなさい……ヒデオ様……」

「お邪魔してま~す!」

「良かったわね兄さん、女の子が一杯よ」


 日本にいた頃なら心が躍るのを通り越してびびってた光景だ。

 でも魔王ランドに来てからは良くも悪くも慣れっこ。


「それよりお前、ローズはどうしたんだ」

「ローズはソフィアが怖いからってここにはあまり来たがらないわ」

「拠点に一人でいる方がよっぽど怖い気もするけどな……」


 ローズとは詩織を担当した女神のことだ。

 最近になってようやく名前を覚えることが出来た。


 ソフィアに仕返しをするべく、どうにか詩織の担当になって復讐をしに来たものの、返り討ちにあってしまった下っ端女神。


 可哀そうと言いたいところだけど、正直自業自得だな。

 ちなみに、なぜソフィアに執着していたのかとか、どうやって下っ端なのに詩織の担当になれたのかとかはまだ聞いていない。


「あ、そう言えば兄さん、またお願いしたいことがあるんだけど」

「詩織、お前な……ちょっとくらいは自分でどうにかしろよ」

「何よその言い方!もういい。兄さんなんて頼ってあげないから」

「そうしてくれ」


 何でもかんでもやってやると後が大変だ。

 少し心が痛むけど、たまには突き放さないと俺の身が滅ぶ。


 あわあわと慌てる様子のエレナを尻目に、俺はマントを脱いだ。

 それからベッドに寝転ぶ。


「あの……シオリちゃん、もし良かったら私たちに相談してくれないかな……」


 エレナは姉の性分が出てしまうのか、詩織を放っておけないらしい。


 ちなみに、エレナを始めルーンガルドの住人たちは最初詩織の事を「シオリ様」と呼んで敬語を使っていたが、詩織の申し出により、今はほぼ全員タメ口で話している。


「廃墟だった街を少しずつ修復して綺麗にしてるんだけどね、中々進まないのよ。兄さんの配下にも手を借りられればいいかなと思ったんだけど」

「あっ……そ、そうなんだ……」


 これはさすがにエレナでは力になれない。

 エレナの声はどことなく歯切れが悪くなっていた。


「そっちのダークドワーフ一族にやらせればいいだろ。あいつらはそういうの得意だぞ」

「兄さんには言ってないから。黙ってて」


 め、面倒くせえ……。

 やってられないので俺はふて寝を決め込むことにした。


 するとぼそぼそと詩織がエレナに話しかける声が聞こえる。


「ねえねえ、エレナちゃんが兄さんを誘惑してよ」

「わあ!それいいですね~さすがはシオリちゃんっ」

「ちょ、ちょっとアリスちゃん……またそんな……」

「エレナちゃんが本気を出せば英雄さんなんてイチコロですよ!」


 誰がイチコロやねん。

 部屋に帰るなりベッドの枕元にある、ソフィア用の寝床で寝ていたソフィアがいつの間にか輪に加わっていた。


「じゃあ私も本気を出そうかしら!私もね、エレナちゃん程じゃないけど脱ぐとすごいのよ!」

「リカちゃんは何に本気出すつもりなのよ……」


 詩織が呆れた声でツッコミを入れている。


「でも、前にリカちゃんとお風呂に入ったとき、たしかにすごかったよねっ」

「ふふ、そうなのよアリスちゃん。まあ、エレナちゃんほどじゃないけどね!」

「ちょ、ちょっとリカちゃん……」


 慌てた様子のエレナの声。

 頼むから俺がいるところでそういう話をしないでくれ……。

 健全な男子高校生なんだから想像しちゃうだろ……。


「ふふふ、英雄さんは今きっと『エレナってそんなにやらしい身体してやがるのか……健全な男の子なんだから想像しちゃうぜ……ぐへへ……』って思ってますね」

 

 ソフィア……半分ぐらい当たってるけどやめろ。


「本当に兄さんって変態よね……まあいいわ。じゃあエレナちゃん、寝てる兄さんに添い寝して、潤んだ目で『私のお願いを聞いてください……』って言って来て。そしたら一発だから」

「え、ええっ……」

「英雄さんはエレナちゃんの言う事ならなんでも聞いてくれますよ!」

「ソフィア様の言う通りっ!ほらエレナちゃん、早く早くっ」


 悪ノリが加速するアリス。

 エレナの困り過ぎて泣きそうな顔が今にも浮かぶようだ……。


 俺は寝てるフリをやめて起き上がった。


「あ~わかったわかった!修復でも何でも手伝ってやるよ!だからエレナをいじめるな」

「ヒデオ様……」


 うっ……エレナに見つめられて少し照れてしまう。


「ほら詩織、さっさと行くぞ」


 俺は照れを誤魔化すために、魔王っぽいマントを羽織って部屋を出た。

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