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皆違って皆いいっぽい

英雄「毎回新キャラ登場しすぎじゃね?」

シャドウ「拙者それは思っていたでござるが、言った方がいいかな……でも怒られるかな……と思い迷っていた次第にござる」

「しかし本当に色んなチートがいるもんだな。まじで友達だと思わされたぞ」

「何を隠そう拙者も、影の中から魔王様の様子を見ていて、拙者の方が魔王様と仲がいいはずなのにどうしようかな……このまま親友ポジションを取られちゃうのかな……と心配していた次第にござる」

「お前は親友ポジとはまた違うだろ」

「無念」


 友情チートを倒した後、俺たちは改めて摘んでいく花を選んでいた。


「魔王様、これはどうでござるか?」

「いいなそれ」


 シャドウが花冠を作って自分で被っている。

 更にはネックレスや腕輪も作り始めた。


 俺は、こういった風にモンスターたちが時折とる、モンスターらしくない行動を見るのが結構好きになって来ていた。


 当然と言えば当然だけどこいつらも生きていて、「モンスターらしくない」というイメージだってあくまで俺たちが植え付けた勝手なイメージに過ぎない。


 魔王としての自覚が芽生えて来ているのか何なのか、俺はこいつらのことをもっと知った方がいいと、最近はそう思っている。


「英雄さん英雄さん!私も作りましたよ~!見てください!」

「その身体のまま作ったのか、器用だなおい」


 ソフィアも妖精モードの身体に合わせたミニ花冠を作って被っていた。


 段々とただ俺たちが花畑に遊びに来ただけみたいになって来たので、適当にそれぞれが綺麗だなと思う花を見繕って持っていくことにした。

 枯らさず鉢に入れて飾ることが出来るようにと、シャドウの魔法で根の部分を土ごと引っこ抜く。


「ま、こんなもんだろ。一度南門付近にテレポートして植木鉢かそれに代わるものを調達してから帰ろう」




 テレポートで一瞬にしてルーンガルドに戻って来た俺たちは、相変わらず人気の少ない南大通りを練り歩いている。


 南門方面はチート系が侵入してきた場合に真っ先に戦場になる。

 だから俺が魔王ランドに来たばかりの頃は住民はゼロだったが、そこそこにチート系を駆逐出来た今では少しずつ居を構えるモンスターが出て来ている。


 特に、南門方面でも端の方では新しく商売を始めようというモンスターたちが建物を借りている風景もちらほらと見ることが出来た。


 そして、街の中心に近い、南門方面でも復興の気配を色濃く見せる一角にて俺たちは店頭に植木鉢を置いていたその店を見つける。


 生活雑貨店「ゴブリンゴ」。


「ヘイラッシャイ!おお!もしかして噂の魔王の旦那と精霊様ですかい?シャドウの旦那もお久しぶりでさあ。俺っちはここの店主をやっとりやすゴンってもんで。よろしくお願いしやすぜ」


 背が低くずんぐりむっくりな体型に、サンタみたいなモジャモジャとした髭。

 恐らくはダークドワーフだ。漫画とかで見たことがある。


 俺はチート系が潜入していないかとパトロールがてら、そこそこの頻度で街をうろついている。

 そして見た目が人間に近く、精霊がいつも一緒にいるという噂のおかげで名乗らなくても誰かわかってもらえるようになって来ていた。


「店頭にある植木鉢が欲しいんだけどいくらだ?」


 ゴブリンゴって店名なのに店主がダークドワーフな点にはツッコミを入れず、俺はすぐに本題に入る。


「魔王の旦那からお代はいただけやせんぜ。ここに店を構えることが出来るくらい街が復興したのもあなた様のおかげでさあ」

「そんなことを言っても無駄ですよゴンさん!英雄さんには魔王成分が足りないので、『だったらありがたく頂いていくぜえ!ゲハハハァ!』なんて言ったりしませんから!」

「お前は俺に一体何を求めてるんだよ。まあそんな感じで俺には魔王成分とやらが足りないらしいから、普通に金は払うよ。チート系が落としていくやつだから遠慮なく受け取ってくれ」


 俺も最初は驚いたんだけど、どうやら魔王ランドでは人間もモンスターも通貨は同じものを使っているらしい。

 ますます人間とモンスターの差異がわからなくなってくる話だ。


 考えてみれば、RPGなんかでモンスターを倒すとプレイヤーが使えるお金を落とすわけだからむしろ当然なのか?


「でしたら魔王の旦那にだけ特別にイカした植木鉢をお見せしやしょう。ちょっと待っててくだせえ」


 ゴンは一瞬店の奥に引っ込むと、妙な形をした植木鉢を手にして戻って来た。


「これが試作品のフラワーポットVでさあ」

「これは……見事なまでにV字型な植木鉢でござるな」


 地球にあった某V字ギターを思い浮かべるとわかりやすい。

 あれのネックが伸びている側を下にして地面に置いたような形をした植木鉢だ。


「いや、実は花を、さらって来た人間の女の子にプレゼントする為の植木鉢でな。別に奇抜性は求めてないんだ……悪い」

「そうでしたか……」


 力なく肩を落とすゴン。余程の自信作だったのかもしれない。

 ゴンはフラワーポットVを持って奥に引っ込むと、また違う植木鉢を持って戻って来る。


「それでしたら。女の子向けの植木鉢、フラワーポットジュエリーズでさあ」

「お前人の話聞いてたか?」


 今度は植木鉢全体に無駄に宝石が散りばめられている。

 間違いなくこの宝石を何か他のものに使った方が女の子を喜ばせることができるだろう。


「この無駄に散りばめられた宝石がポイントでさあ」

「自分で無駄って言っちゃってるよな」

「これを作った技術も無駄にすごいでござるし、ゴン殿は色々な意味で植木鉢意外を作るべきでござったな」

「お褒めに預かり光栄ですぜ」

「別に褒めてませんよ!」

「おいソフィア、明るい表情と声で人に現実を突きつけるのはやめとけ」


 埒が明かないので仕方なくフラワーポットジュエリーズを買ってやった。

 少々値段は張ったけど金には余裕があるし、ゴンのどこか満足そうな顔も見れたので良しとしておこう。


 何はともあれ物を作る技術は確かなようだ。

 また一人何かあった時に頼れる人材を見つけることが出来て上々な気分のまま、俺たちは城に戻って来た。


 留守の間のことを聞くため、まずはライルの部屋に顔を出す。


「お帰りなさいませ」

「ようライル。アリスの様子はどうだ?」

「はい、まだ多少不安がってはいるようですが、もう大丈夫かと」

「そうか。早くもっと心を開いてくれればと思って花を摘んで来たんだ」

「人間に対する配慮とは、さすがはヒデオ様でございます」


 俺たちは買って来た植木鉢に摘んで来た花を植える。


「時にシャドウよ」

「どうしたでござるか、ライル殿」

「最近ヒデオ様の側近の真似事をしているようですが、真の側近はこの私ですので余計な事をされては困ります」


 何だかライルまで面倒くさい事を言い出したな……。


「えっ……え?何を言っているのかちょっとわからぬでござるが……魔王様は拙者の隠密向けスキルの数々を頼りにしてくださっているのであり、側近とは言ってもライルとは全然違う仕事を割り振られていると思うのでござるよ?」

「ですからそれも必要ありません。私が本気を出せば隠密行動も出来ます」

「ちょっ……ライルどうしたんだよ」

「ほう……これは面白いことを仰るでござるな。ライル殿が我らの専売特許である隠密行動だって出来ると?いいでござろう、ならばどちらが先にサキュバスの下着をこっそり拝借できるか勝負しようではござらぬか」

「良いでしょう」

「いやいや何も良くねえから。何てもので勝負しようとしてんだお前ら」

「ではサキュバスの下着を先に英雄さんに捧げた方の勝利としましょう!」

「ソフィア、お前も煽るな。そしてそんなもん捧げんな。俺まで怒られるだろ」


 とりあえず俺さえ巻き込まなければ後は勝手にやってくれと告げてライルの部屋から出てきた。

 植木鉢に植えた花を運ぶため、ライルと俺の部屋の両方の扉を開けようと移動する。


 それで隣にある俺の部屋の扉を開けたんだけど。

 

 扉が開いて室内が見えたその瞬間に、全ての時が止まってしまった。


 視線の先には俺のベッドに横たわるアリスと、それを押し倒したような形で覆いかぶさるエレナの姿。


「あらあらまあまあ。人もモンスターも、愛の形というのは様々ですねえ~」


 そんなソフィアの感想を聞きながら、俺は自室の扉を閉めた。


 エレナが攻め側だったな……いや、そこは別にいいか……。


 後ろではまだソフィアが扉越しに「私は応援してますよ~!」とか言っていたけど、俺は今見たことを全て頭の中から消し去ろうとするという無駄な努力をしながら食堂を目指して歩き出す。


 しかし、直後に俺の部屋の扉がものすごい勢いで開かれた音がしたかと思うと、強めの足音が俺の背後に近寄ってきて、誰かが俺の腕を掴んだ。


 振り向くと、息を切らして頬を紅潮させたエレナが立っていた。


「ち、ちちち違うんですヒデオさん……!その、あ、あれはアリスちゃんに!その……ア、アリスちゃんがあ……うっ……うえぇ……ひっく……」


 最初こそ今まで聞いたこともないような調子で、声を荒げて何かを伝えようとしたエレナだったけど、それだけ言うと膝から崩れ、両手で顔を覆い隠して泣き出してしまった。


「ええっ……ちょっ……どうしたらいいんだよこれ……」

「ちょっと英雄さ~ん?女の子を泣かしちゃいけませんよ~?」

「俺が何をしたって言うんだよ!」


 その時、いつの間にか俺の部屋から出て来ていたアリスがよろよろとエレナに寄り添い、涙声で語り始めた。


「ごめんなさい魔王様……エレナちゃんは私に仕事を教えようとしてくれていただけなんです……エレナちゃんは何も悪くなくて……」

「わ、わかった!わかったから!二人とも頼むから泣き止んでくれ!」


 訳が分からずにほとほと困り果てていると、何事かとライルとシャドウが部屋から顔を覗かせていたところだったので、二人に「あれを持ってきてくれ」と指示を出した。

 程なくして二人が戻ってくる。


 俺はライルから花を受け取ると、自分も膝を折ってエレナの前に置いた。


「ほら、良くわかんないけどこれをエレナにやるから。元気出してくれよ」

「…………?」

「これはアリス殿の分でござる」


 シャドウはもう一つの植木鉢をアリスの側に置く。


「あ、ありがとうございます……」


 アリスはそうお礼を言ったけど、エレナは何だか固まっている。


「い、いやその何て言うか、エレナへのプレゼントだよ。花なんてちょっとキザで恥ずかしいかなと思ったけど……良かったらもらってくれないかな」


 ここで「本当は全部アリスにあげる予定だったんだけど」なんて言ってしまうほど俺もデリカシーがないわけじゃない。

 ライルとシャドウも気を使ってか、もう一つあるはずの植木鉢はここに持ってきてないしな。


「あ、ありがとうございます……」


 エレナの表情は俯いていてよくわからなかったけど、何とか泣き止んでくれたみたいで一安心だ。


 何だかひどく疲れた俺は、そのまま自室に入ってベッドに飛び込む。

 ちょっといい匂いがする……。


「あれれ~?そう言えばさっき、エレナさんって英雄さんのことをヒデオさんって呼んでませんでしたか?」


 ソフィアが少し嬉しいような楽しいような声で俺にそう問いかけてくる。

 

 そうだっけ……あれ、元からそうじゃね?

 思ったことを口にすることも出来ず、まどろむ意識に身を任せた俺はそのまま眠りに就いた。

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