戦う為の力
大丈夫、私は生きている。この作品はこれからどんどん所謂厨二になっていくぞ。
「おっさんが使ってた部屋、使えよ」
「ああ、感謝する」
テッツイさんの部屋へ行く。埃1つない綺麗な部屋だ。ベットもしっかりとメイキングされている。全く… 素直じゃない男だ。
「ねぇパパ…」
「どうした?」
「今日、一緒に寝てほしいな…」
「…ああ、そうだな」
あのようなことがあったばかりだ。そうなるのも当然だろう。
「さあ、おいで」
「うん…」
そう言いベットに入り込む。しかしミウの顔はどこか浮かない表情だ。
「ねぇパパ…」
「どうした?」
「私も、戦えるようになりたい…」
「それは…」
正直戦っては欲しくない。傷つくのを見たくない、その手を汚して欲しくない。理由は多々ある。けど私がずっと見ていることは出来ないのだ。ミウを信じる時なのだろう。正しく育てる為には必要なことだろう。その力の使い方を教えるべきなのだ。
「いや、わかった… 明日出かけるとしよう。だから今日は寝なさい」
「うん… おやすみ」
「ああ、おやすみ」
疲れていたのだろう、すぐに寝息が聞こえた。それにしても本当に子どもは温かいな。私も今日はすぐに眠れそうだ。
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あれはどれほど前だったか、いつの会話だったか。父と母を亡くし私と妹だけのボロ小屋生活。妹はとても病弱で、"あの時"から常に何らかの病を患っていた
ベットで横たわっている妹、ソフィーは顔をこちらに向けて口を開く。
『ねぇ兄さん』
『どうしたの?』
『どうして私の為にそこまで頑張ってくれるの?』
『何故って… それはソフィーのことが大切だからだよ』
『大切と言っても限度があるでしょ。この前大怪我して帰ってきたじゃない。それより前も、ずっとずっと前も… 怪我をしても毎日毎日お仕事してたじゃない。どうしてなの?』
『大切の限度か… 確かにあるかもしれない。けど僕にとってソフィーは限度なんて無い程大切で、たった1人の家族なんだ。僕には僕自身のことよりも、たった1人のソフィーを大切にしたいんだ。だから僕に守らせてくれないかな… こんな答えじゃダメかい?』
『んー… ダメね』
『えぇ…』
『それは当然よ。私にとっても兄さんはたった1人の大切な存在なの、限度が無い程にね。だから兄さんには傷ついて欲しくない、本当の事を言えば冒険者なんて辞めて欲しいし闘技場なんかに出て欲しくはないの。けど…そうはいかないのよね…』
『そう… だね…』
『だからお願い… 無理だと思ったらすぐに逃げて… 怪我はしないで… 必ず生きて帰ってきて… 何も出来ない私には祈る事しか出来なくて、それしか出来ないのが悔しいの…だからどうか、私を救うと思って自分の身体を大切にして…』
『うん… わかったよ… 約束する』
『ふふ、聞いたからね。嘘ついたらエレメントニードル千本だからね』
『え、えぇ… わ、わかったよ。刺されないよう気をつけるよ』
『刺されないよう、じゃなくて破らないようにでしょ』
『あ、そうだね』
『約束だからね…… ねぇ』
『どうしたの?』
『ありがとね、兄さん』
『うん、どういたしまして』
『今日は一緒に寝て欲しいな』
『わかった』
『ふふ、兄さんは温かいね』
『そういうソフィーだって』
『今日はとてもよく眠れそうよ、おやすみ兄さん』
『おやすみ、ソフィー』
疲れていたのかすぐに寝息が聞こえた。僕もすぐに眠れるだろう
そして翌朝、ベットの中の温もりは失われていた。簡単な事だ。ソフィーが死んだ、たったそれだけだ。死んだというたった3文字が脳に過ぎる。ただでさえ病弱な身体で、竜の瘴気を吸いここまで生きてこれたのは正直奇跡だ。母譲りの魔法の才を得ながらもこの世に証を刻む事なく彼女は死んだ。その時、ただ土を掘り墓を作ったことだけは覚えている。
私1人が家族をしっかり覚えていればそれでいい。背負わなければならない、数々の約束を。私自身が生きた証になるのだ。
だから私は剣を振るい続ける。
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ーーー
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「起きろ、ミウ」
「ん〜… 起きりゅ…」
大きなあくびをしながら目を擦るミウ。ぐっすりと眠れたようで安心した。
「ん〜…………そうだ!戦い方を教えてくれるって」
「ああ、これから出かけるぞ」
ベットを元どおりにし部屋から出る。どうやらテオは既に起きていたようだ。
「おはよう、テオ」
「おはようさん」
「早速だが俺たちは出かける」
「へぇ〜 どこに?」
「"彼女"のところに」
「おま、あのアッパラパー聖女のところ行くのか!?」
「まあ、私とお前の共通の知り合いなどあいつぐらいだろう」
「そうかい。いってら」
「テオ、お前にも付いてきてほしい」
「悪りぃけどお断りだ!俺はあいつのことが苦手なんだよ!」
「そうだ、テオ。断、あれの使い心地は最高だった」
「ほぉ〜」
「魔力を流した瞬間にスムーズに展開される刃。そしてその刃も素晴らしい切れ味だ。どちらも至高の職人が丁寧に作り上げたからだろう。だからこそ…」
「おん?」
「更に高みを目指してもらいたい。この武器には改良すべき点がある」
「んでそれは?」
「それは…」
「お、おう…」
「秘密だ」
「おい!!」
「改良するにはテオ1人じゃ無理だ、それは彼女にも同じことが言える。もしお前が更なる職人になるというのなら私と一緒に来い」
「………」
「来い」
「…………」
「こ「わぁったよ!!!行けばいいんだろ!!」」
「フ、それでこそテオだ」
「さっさと行ってさっさと帰るぞ…」
「ああ。ミウ、これから行くところは私とテオの知り合いの所だ。彼女は魔道具のプロでな、間違いなくミウの力になる。あまり怪我を欲しくないという私のエゴがあるが、ミウはその潤沢な魔力を使うスタイルが合っている」
「うん、わかった!」
「そして戦いを学ぶにあたって、私とある約束をしてもらう」
「約束?」
「ああ、3つある。1つは危なかったら逃げること。2つ目は大怪我をしないこと。3つ目は必ず生き延びることだ。力を使うということは当然危険な目にあう。だからこの3つは必ず守ってくれ」
「うん、わかった!でも大丈夫だよ」
「それはどうしてだ?」
「だってパパが必ず助けてくれるもん!」
「…ああ、そうだな。必ず助ける」
「えへへ」
「さて、行こうか。ほら、手を」
「うん!」
約束は受け継がれ続ける。少しだけ、身体が軽くなった気がした。
少しだけ言い訳を失礼します。うるせー!しらねー!という方は飛ばしてください。
この作品の流れは少し唐突であるという意見をいただきました。確かにその通りだと、私もその後確かにと思いましたし友人に聞いても唐突かもしれないという意見を貰いました。
本当にくだらない言い訳です。王道的ファンタジーでは勇者が旅に出て、仲間を集め、魔王を倒すという流れです。しかしこの作品は既に魔王を倒したという世界でこれから所謂新ボスや裏ボスというのに挑む言わば終わった世界なのです。
なら魔王を倒すとかからやれよ!その意見ごもっともです。しかし私は敢えてそこを飛ばしその過去が徐々に明かされるような書き方をしてみたいと思い現在の形式にしました。意味不明な形式で混乱される方もいらっしゃると思うので謝罪いたします。
もちろんなるべく唐突な話の流れにならないよう気をつけます。しかし次回のお話だけは唐突になるかもしれません。文才のない筆者をお許しください。そして筆者のメンタルは豆腐です。これからもアドバイスなどの感想や評価を下さると嬉しいです。以上です。