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鍛治師 前編


前後に分けるでござる。





「ん?」




いつものように壊を振るっていると違和感を覚えた。




「重心がおかしい… 刀身が歪んだ…のか?」




僅かながら曲がっている気がする。確かに最近あいつの所に行っていないからしっかりとしたメンテナンスが出来ていない。たまには行くべきか。




「ミウ、完全に人化出来るか?」




「ん〜 それってはねとかだすなってこと?」




「ああ、そうだ」




「だいじょうぶだけど…」




「なら一緒に散歩に行くとしよう」




「おさんぽ!?いく!」




ミウの世界を広げてやらねば。人化をさせるのは、昔よりマシだが亜人は排斥される傾向がある。この子はまだ幼いのだ、人の悪意に触れさせるものではない。何とも生きにくい世界だ。




あいつなら亜人に対して偏見もない。それどころか力になってくれるだろう。私の武器も手入れ出来て一石二ハーピーとでも言うべきか。




「準備は出来たか?」




「うん!たのしみ〜」




今日の服は真っ白なワンピースか。ミウの髪は長い黒だから白がよく似合う。そしてぶち模様のケットシーの形をしたポシェットを掛けている。ミウの少女らしさが出ていて良い。うむ、よく似合っている。恥を忍んで店員に子どもの流行服を聞いた甲斐があった。怪訝な目をされたがこの姿を見ることが出来たので良しとしよう。




「ミウ、ポシェットを貸しなさい」




「は〜い」




少しのお金とお菓子を入れる。




「これから首都に行くから何か好きなものを買うといい。お腹が空いたなら飴を舐めるといい」




「は〜い!」




先ほどよりも元気な返事が返ってくる。やはり女の子だからか、甘いものをよく食べる。出来ればたくさんあげたい所だが身体にあまり良くないからな、しっかり制限をしなければ。




「さあ行くとしようか。ほら手を」




「うん!!」




ミウが転ばないように手を繋ぐ。フ、やはり小さいな。それに温かい。人であれ竜であれ、子どもというのは変わらないものだな。






ーーーーー

ーーー






首都の新市街地と旧市街地のちょうど境目、ひっそりと気づかれないような場所に鍛冶屋がある。そこが私の目指している場所だ。戸の前に立てば熱気を感じる。




「邪魔をする」




「おじゃま〜」




開ければより一層強い熱気が放出された。カーン、カーンと鉄を打ち付ける音が響き渡る。普通ならばここで待つべきだろう。だが私は工房に入っていいと言われている。今更遠慮する必要はない、奥へと進む。




「ふわぁ〜 みけケットシーさん!」




「スンスン… この匂いはゼニスか!なんだよ〜 来るなら連絡よこせ…よ…な………… お前その子…」




「ああ、この子は「お前どっから拾ってきた!?もしかして誘拐したんじゃないだろうな!?」…落ち着け」




「この子は俺の娘だ」




「…娘?」




「ああ」




「は、はぁぁぁあぁぁぁ!?」




口を大きくあんぐりと開けて喚き続けるちっこい猫耳男。こいつが現在の俺の武器の整備士、テオドール・B・フォースターだ。整備士というのは回りくどい言い方だが壊と穿を造り上げたのはこいつの先代、ドワーフのお爺さんだ。先代が亡くなったので弟子であるこいつが整備している。




「待て待て待て待て!!お前いつ子ども出来たんだよ!?結婚したのか!?」




「いや、結婚はしていない。拾った。」




「拾ったって… ペットじゃねぇんだぞ…」




「もちろんわかっている。責任を持って育てるつもりだ」




「そこまで言うんならもう何も言わねぇよ… んで用は何だ?」




「3つほど。壊と穿の整備を頼みたい、あと新しい武器の開発、それにこの子のことだ」




「ほォ〜新しい武器か… どうせお前のことだ、面白えの考えてんだろ。鍛治師の血が滾るぜ!んで整備するんなら2つをあそこの台に置いといてくれ。そんで…俺にこのチビをどうしろと」




「テオ、お前だからこそ頼みたい」




「回りくどいな、何が言いたい」




「ミウ解いていいぞ」




「んーうん」




ミウに魔法解かせ少し竜に近い状態にする。




竜人(ドラゴニア)だと… 確かに同じ亜人、猫人(ケットシー)である俺が最適ってわけか。だが俺はな、チビが嫌いなんだよ。期待はすんな」




「ああ、わかっている」




私は知っている、こいつは嫌いと言いつつもしっかり面倒を見るタイプだと。過去に異世界から来た勇者の言葉で言うのなら…ツンデレだったか。




「ふぉ〜… ふわふわ」




「そりゃ俺が毎日しっかりと耳の手入れをしてるからな!じゃねーよ!何俺によじ登ってんだよ。だぁ〜!!耳は止めろ!やめ、ちょっ… ヤメロォ!!!」




ミウは初めて見る多種族の亜人に興奮しているようだ。テオの頭によじ登り、耳をふわふわさせ遊んでいる。




「クソッ!」




テオはゆっくりとミウを降ろすと店の奥へ消えていった。3秒後、ジュースとクッキーを持って帰ってきた。何という早業。




「おいチビ!俺はな子どもが嫌いなんだよ!これからお前のお父さんと大事な話があるんだ!大人しくそれでも食ってろ!!」




私は知っている、世話をしないと言いつつもしっかり世話をする優しい男だと。しっかりともてなすためのお茶菓子を用意していることを。




「たくっ… 面倒ごと持ってきやがって。」




「すまない… だが適した人物はお前しかいなかったんだ」




「はぁ… 別にいいよ。さっさと仕事するぞ、調整して欲しいところ言えよ」




「ああ、穿は恐らく大丈夫だろう。ただ壊が調子が悪い。重心がおかしいんだ」




「なるほどねェ… 確かに穿は軽く磨いて弦を張り直せばいいだろ。壊は…ゼニスお前…」




「どうした」




「どうしたじゃねぇよ!何でオリハルコン製の刃が曲がるんだよ!微妙に欠けてるしよォ!!」




「す、すまない、硬い魔物と刃に悪い魔物とばかり戦っていたから…」




「お得意の魔法はどぉーしたよ!保護魔法できんだろォ!!!それにちゃんと手入れすりゃこんなことにはならねぇぞ!」




言えない、ミウと遊ぶためにすぐ手入れを終わらせることを。言えない、早く家に帰るために保護魔法よりも付術ばかり使っていたことを。




「はぁ… 大方あのチビのためだろ」




なぜバレた。




「それなりの付き合いしてんだ。慣れりゃお前は随分と分かりやすいよ」




どうやら私は分かりやすい人間らしい。




「すぐ終わらせるが少し時間がかかる… チビとでも遊んでろ」




「ああ、お言葉に甘えさせてもらおう」





1人クッキーを咀嚼し続けるミウの元へ向かう。




「パパ!すっごいおいしいよこれ!!」




「フ、そうか。よかったな、あとでしっかりお礼を言うんだぞ」




「うん!!」




「ほら、口の周りが汚れているぞ」




ハンカチを出しミウの口の周りを拭く。




「んみゅ…」




あまり詳しくはないがこのクッキー、確か王室御用達とかの高級な奴じゃなかったか?私も感謝せねばなるまい。




「ねぇパパ…」




「どうした?」




「あのケットシーさんとはどうやってあったの?なんでなかがいいの?」




「そうだな…」




出会い自体は簡単なものだ。ただ私が先代さんに用がある時に会っただけ。しかし仲が良いかと聞かれたら怪しいところだ。実際、テオには嫌いと言われている。こうして迎え入れてくれるだけでも奇跡なのかもしれない。




「私はな、あいつに、テオには嫌われていると思うんだ」




「どうして?」




「そうだな… あれはテオが小さい頃の話だ」




少し語ってみるのも良いかもしれない。ミウの人付き合いの参考になるかもしれないしな。







亜人・・・俗に言う獣人(フレンズ)猫人(ケットシー)なんかもいれば犬人(クーシー)もいる。ミウは竜人(ドラゴニア)という扱い。



ケットシー・・・猫の神と人間の神が恋して互いの魔力を合わせて作り上げたとされている種族。事実は不明。



新武器・・・秘密兵器。ロマンの塊。



異世界の勇者・・・転移者。解析不能な魔道具や新たな文化を持ち込んだ。絵本なんかもそれにあたる。現在は子孫がいる。



クッキー☆・・・例のアレ、ではなく普通のお菓子。テオ君はちゃっかり高級なお菓子を用意していた模様。ココアはやっぱりバンホー○ン。



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