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第一話

 「………主よ」


 「・・・zzz」


 何か聞こえた気がしたが、布団の持つ魔力に抗えずに俺はその声を聞き流す。


 「・・・もうこれ以上寝させんぞ! 主、いい加減起きろ!!」


 「・・・うっ?」


 だが、再び深い眠りにつこうとした瞬間、揺さぶられながら耳元で叫ばれたせいで意識を現実に引き戻させられる。

 俺は無理矢理起こされたことに対して若干苛立ちながら薄っすらと目を開け、目の前にいる人物を見る。

 そこにはいつも見ている顔があった。

 きれいな薄い銀髪に整った顔立ち、特徴的な碧眼の瞳、町なんかですれ違えば誰もが美人と表現するであろう少女だ。

 少女の名は雪菜、俺の《理解者(パートナー)》だ。


 「まだ眠ーーー「主!」ーーーへぶっ!」


 俺を起こしていたのが雪菜だと分かったのでまだ眠いと素直に言おうとしたその時、顔をグーでぶん殴られた。

 その細腕のどこにそんな力あるんだよとツッコミたくなるくらいその威力はすさまじく、俺は眠っていたベットから吹き飛ばされ、近くの壁に激突する。

 激突の衝撃で壁に若干めり込んだ俺はその状態で意識が覚醒し、無言で壁から抜けて雪菜へと向き直る。


 「何すんだ雪菜!」


 「何すんだもこうすんだもあるわけなかろうが! もうとっくに昼過ぎじゃぞ! 朝に起こせと言ったのは主じゃろうがぁ!?」


 「・・・・・・・へっ?」



 雪菜のその言葉を聞いた瞬間、一瞬覚醒しかかっていた思考がフリーズした。

 すると、壁に付いている時計は今ちょうど午後一時になったことを知らせる音が鳴ったところだった。

 それを聞いた俺の顔がサーッと青くなっていくのが見なくても分かる。


 「な、なぁ雪菜?」


 「・・・聞きたいことは分かるが、敢えて聞いておこう。 何じゃ?」


 呆れたように溜め息を吐きながら雪菜は俺に応じてくれる。


 「きょ、今日って何日だ?」


 「光月の一日じゃ、ちなみに春風との約束も光月の一日じゃな」


 察しが良すぎる我が理解者様は正面から現実を叩きつけてきた。


 「えっと、約束の時間って・・・」


 「六時じゃ、朝のな」


 どこまでもリアリストな雪菜に僅かな望みも一蹴された。

 ちなみに春風とは俺の幼馴染みのことで約束ごとにはすごくうるさいやつのことだ。

 しかも、キレると洒落にならないレベルでおっかない。

 今までに何度か半殺しにされかけているくらいだ。

 俺はそれを聞いてさっきも見た時計をもう一度確認し直す。


 一時、上から見ても下から見ても紛うことなく一時だ。


 それを見た俺は雪菜の方を一回見てからもう一度時計を見て、更にもう一回雪菜の方を見てから大きく息を吸い、


 「どうして起こしてくれなかっーーー「起こしたわぁ! それはもうさんざん起こしたわ!! そうにも関わらず十二度寝もする主が悪いんじゃろうがぁ!!!」ーーーえっ?」


 思い切り愚痴ろうとして、俺以上にキレていた雪菜に怒鳴られた。

 その内容を聞く限り、どうやらずっと雪菜は俺のことを起こしてくれていたみたいだが、何度も俺が寝直してしまったらしい。

 プンスカ膨れている雪菜に素直に謝って何とか機嫌を直してもらい、とりあえず近くの椅子に座ってどう春風に言い訳しようかを考える。


 (・・・あれ、詰んでね?)


 だが、どれだけ考えても殺されるイメージしか浮かばない。

 絶望的すぎる現状に暑くもないのに大量の汗をかきながらついに俺は現実逃避をしはじめた。


 それから10分くらい現実逃避した後、


 「うん、もう無理だな。 よし、いっそのこと寝直そう」


 「はっ?」


 俺がそう開き直ると、隣から素で呆れたような声が聞こえた。

 だが、そんな声を無視し、雪菜におやすみと言って再び布団に潜ろうとすると、



          ガシッ



 雪菜に布団を捕まれ、そのまま勢いよく剥ぎ取られた。

 絶対無敵装甲であるHU・TO・Nを奪われ、若干キレ気味に雪菜に怒鳴る。


 「何してんだ!」


 「こっちの台詞じゃアホ主! 一体全体何をしようとしとるんじゃお主は!」


 「は? いや、何って言われても・・・」


 嘆かわしいことだ、どうやら俺の《理解者》はこの状況を見て俺が何をしようとしているか分からないほどに頭の出来が良くなかったらしい。

 俺は、見てわからない?という風にその場で両手を広げるが、そんな俺を見た雪菜は頬をピクピクとひきつらせて固まっている。

 やがて、何かを決意したのか雪菜はその場からゆらりと立ち上がり、冷めきった目でこちらを見てくる。


 「・・・一応聞いておくぞバカ主」


 「お、おう?」


 俺は雪菜の謎の迫力に押され、思わずコクコクと首肯く。


 「今から学校に行く気はもうないんじゃな?」


 「えっ? いや、学校って言ってももう入学式終わってるだろうしいまさら手遅れじゃないかな雪菜さん!?」


 後半俺の声は裏返り、思わず雪菜をさん付けで呼んでしまった。

 その理由は雪菜の今の表情にある。


 「な、なあ雪菜。 お前今何企んでる?」


 「なーに、そんなたいしたことではないぞぉ?」


 頬を引きつらせながらそう聞く俺に雪菜はおどけてそう答えた。

 まずい、この状況は非常にマズイ。


 だって、だって今の雪菜はーーー、


 先ほどまでの冷めた目からは考えられないほどとても無邪気な笑顔で俺を見てきているんだからなぁ!!


 雪菜がこんな顔をした時は大抵俺がロクでもない目にあう。

 何が来るのか警戒し、慌てて身構えるが、そんな俺に全く構わず雪菜は部屋の扉から出ていった。

 俺はそのことに首を傾げながらもしばらくその状態でいると、やがて完全に雪菜がいなくなったことに気づき、慌てて扉を開ける。


 するとそこには、


ーーーーーーーーーーーーー

 主へ

 主がイヤでも学校に行きたくなるよう我から今日のことを春風に学校まで伝えに行ってやろう


 追伸 バカな主がこれを見ている頃には我はもう学校についてるおると思うぞ

ーーーーーーーーーーーーー


 そんな悪魔の書き置きが残されていた。

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