プロローグ
初の投稿です。
至らぬ点は多いと思いますが、暖かい目で見守ってください。
週に一~二話投稿予定です
ーーー問おう理を……者よ
暗闇の中から誰かの声が聞こえた。
深い叡知を感じさせるその声は何かノイズの様なものが混じっており誰かの正体が男か女かの判別も付かず、齢の方も分からない。
相手の正体が分からない不安はあるが、勇気を出して聞くことにする。
「あなたは誰?」
ーーー我は理を紡ぐもの、いずれお主の敵となる存在だ
敵、その言葉を聞いてぶるりと体が一瞬震える。
だが、それも一瞬のことだ。
「なら、なんでそんな人が話かけてきたんですか?」
ーーーお主の選択を我には聞き届ける義務があるからだ。
「敵なのに?」
ーーー敵であるからこそだ
先ほどから全くその声音は変わっていないが、何故かその言葉には優しさがこもっている気がした。
「じゃあその前に一つ聞かせてください」
ーーーいいだろう、何だ?
「あなたのお名前を」
その問いに声の主は数秒の間をおいてから答えた。
ーーー名・・・名か。 自身の名などとうの昔に忘れてしまったな
「えぇ!?」
予想外の答えに思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
ーーー? どうしてそこまで驚く、よく知りもしない相手の名前なんぞ知る意味がないだろう?
「何言ってるんですか、名前はとっても大事なんですよ! 名前は力を持つって話を知らないんですか!?」
ーーーふむ、しかし我は名を持たぬことを不便には感じておらぬーーー「じゃあ、[ルール]なんて名前はどうですか?」ーーーお主、人の話を聞いておったか?
名案とばかりにそう名付けると、声の主は呆れたような声を出した。
もちろん先ほどから全く声音は変わってないが、そこはなんとなくの雰囲気って奴だ。
「良い名前でしょ? 理を紡ぐっていうあなたにぴったりですよ!」
ーーー・・・まあいい、では我はこれからルールと名乗ろう
声の主は渋々といった感じであったが心なしか嬉しそうでもあった。
ーーー人間から名を貰うなど五千年近く生きていて初めてのことだが・・・、ふむ存外悪くない。 では、そろそろ本題に入らせて貰う。
パチン、そんな音が辺りに響くと同時に前方に三つの大きな球が現れた。
ーーーさあ選択せよ理を……者よ。 お主が選ぶのは辛い“未来”か?
声の主がそう言うと同時に一番左にあった大きな球が眼前に近づいてきた。
そして、その球が光りだしそのなかの光景が見えた。
それを見て思わずゾッとした。
そこに見えたものは地獄としか言いようがなかったのだ。
積み上がっている多く人々の死体、それを喰らう見たこともない生き物、血で染まった大地・・・。
他にも目を覆いたくなる様な光景はまだたくさんあったが、それら全てを見る前に球の光が消えて中が見えなくなる。
「それとも温かい“過去”か?」
すると、目の前にあった今の球は元の場所へと戻り、今度は一番右の球が眼前にきて光りだした。
それは思わず涙がこぼれてしまうくらい優しい光景だった。
路地で震えている子供に自らの食料を笑顔で渡す男性、見知らぬ人の死に心の底から悲しむ少女、食卓を囲む温かい家族の姿・・・。
おそらくこれが本当の正しい人間の在り方というものなのだろう。
まだ見ているとこの球の中には少し陰りがあるように見えた。
そんなことを考えているとやがてこの球の光も消えて元に位置に戻り、そして真ん中の最後の球が眼前に近づいてきた。
「それとも数多くの試練を抱える“現在”か?」
そして光り出すーーー、
それを見終わり、最後の球が元の位置に戻ったところでまたパチン、という音がし、三つの球が全て消える。
ーーーさあ、理を……者よ、時代の担い手よ。 お主は一体、どの時代を救うのじゃ?
その質問に俺はーーー。