38 ラストバトル
再び大侵攻が行われる日になった。平日の間も湧いている悪魔を五千程倒したので、残りは六万強ってところかな。相変わらず西側から攻めて来たのだが、先日と少し異なり、数が前回よりも圧倒的に少ない。その代わり複数のグループに分かれて、大まかに北と南に分かれて進んでくる。しかも進行速度が前よりも早い。
とはいえ、何にもしない訳にも行かないので、南西の方の敵に向かい戦闘を行う。数が少ないし分割されているので、一度に釣りだして連れてくる数も少なく、殲滅の速度が遅い。二戦すると、別の砦に向かわないと敵の進軍速度に追いつかない。
『このままのペースじゃと、明日には北側の敵がチュートリアに到達するかも知れんな』
師匠の言う通り、南側の敵は何とか駆逐しているが、北側の敵は大分進んでいる。でも全体的に数が少ない、とても合計しても六万を超えるような数にはならない。なぜだ? 考えていると、一番最西の砦の方から狼煙が上がった、あれは敵発見の合図、数は…四万、四万だ、どうやら主力を温存していたらしい。
「一旦最西に向かいましょう」
『いや、それだと北側の敵が明日にはチュートリアに到達する事になるわ。西の本隊が到達する前に北の敵を殲滅するべきよ』
『それだと、本隊に対しての対処が遅れてしまうぞい』
「マル、ドワ、考えがあります。それは今すぐに最西に向かわないと成り立ちません。まずは直ぐに向かいましょう」
『分かったわ、いいわよねドワ、皆も』
全員が同意したので、南側の敵も放置し、最西に向かって走る。師匠や先生が居るので大抵の敵は逃げて行くので行動は阻害されない。
最西の砦も通り過ぎて、ウエスマウンテンの麓まで来ている。ウエスマウンテンの麓から少し北側に向かってゆっくりと前進する悪魔軍が見えている。かなりの数だ、でもどうやって四万と数えられたんだろう不思議だな。そして進軍の様子を確認して確信した、これならいける。
『ここじゃと、あの大軍を迎え撃つのは不向きじゃぞ』
「いいえ、倒すのは悪魔じゃないです。マル、範囲魔法の準備をお願いします。ドワは少し前で待機して、先日と同じ感じでお願いします。ビジンは指定の敵だけを集めてきて」
私も山道の近くまで前進して魔法を唱える準備をする。ビジンがウエスマウンテンの山道を進む、幸い今回の敵は魔法を唱えないので、結構容易に多くの敵のヘイトを集められるようだ。そして数百匹となるバッファローを連れてこちらに向かって来た、見た感じ悪魔は居ないので大丈夫だろう。
『スーパーセル』
すぐに雲が円状に広がり、更にその上にも雲が広がって二重の雲が形成され、雹のようなものが物凄い勢いで降り出した。私も魔法の効果範囲内に居たので特殊効果にビビる、いやダメージは無いんですけどね、もしこれが私にもダメージを与えると思ったら怖いですよ。
竜巻が発生して、山道に向けて進んで行く。その竜巻を抜けてビジンが走り抜けて来た。私も念のためビジンの後ろに向かってナパームやトルネードを撃ちまくる。リンクした敵などが走ってくるので、ビジンと一緒に師匠の元まで走る。
『土竜』
師匠の横まで行くとスキルが発動して、私を追って来たバッファローや、地面から湧いた敵などが空に舞う。しかし、その後ろからも数百匹近いバッファローが走ってきている。以前と比較すると、これ位何とかなりそうにな気持ちになるのは慣れなんだろうか?
『ナパーム【二】』
物凄い炎が起こり、バッファローがどんどん燃えていく。私も範囲魔法をバンバン使って倒していくと、バッファローキングミニが湧いた…あれ? これバッファローキングミニなの? ちょっと違うような感じが。
『気を付けて、あれはバッファローキングミニではないわ。バッファローキングミニジャンボよ』
「意味が分からん!」
運営のネーミングセンスを疑う。しかし、目的を達成しないと。
「ビジン! フンミャンのヘイトを稼いで、そしてぶつけて! マルは支援魔法を掛けれるだけ掛けて」
『なんですかそれ!』『分かったわ』
どうやらビジンには略称が伝わらなかったみたいだセンスが無いなマッタク。再度説明してバッファローキングミニジャンボのヘイトを稼ぎ、悪魔軍の方に誘導する。バッローキンボには様々な支援魔法が掛かり、防御力増加や自動回復などが付与されていく。
ビジンを追いかけ、ファーングニンが悪魔を踏みにじると悪魔から反撃が行われる。悪魔からの攻撃にターゲットが直接悪魔になり、悪魔を吹き飛ばすと悪魔から再度反撃が行われて、どんどんと悪魔の数が減っていく。
とりあえずここはバフングミに任せて大丈夫だろう、村側に向かって走って戻る。そして北側の先行部隊に追いつく。
「ビジン頼む!」
ビジンは頷き、悪魔のヘイトを稼ぎ、魔法や矢を喰らいながら、そして光りながら砦に向かう。
「ナパーム、トルネード、ファイヤーボール」
砦に向かってくる悪魔を倒しまくる、今日はもう十五時間位戦って、先行していた北の敵も半分位は倒すことが出来た。しかしここまでかチクショウ、知らせが何度も届ている。
折角ここまで頑張ったのに、一体どこで何を間違えたというんだ。最善と思われる手立ては全部取って来たはずだ! 無念で仕方がない。砦の周囲の敵を倒したところで、急いでチュートリアに走る、頼む、早く早く着いてくれ!
『カトウさん! 無事でしたか』
シャルが心配して出迎えてくれる、しかし今はそれどころでは無いんだ!
「ごめんシャル、そして皆…」
心の底から、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
『気にするな、皆分かっておる』
『そうよカトウ、仕方が無いわ』
直ぐにログアウトをしてトイレに向かう、もう膀胱がもたないところだった、ふう~。トイレサインが通知されていたので慌ててログアウトする事になった。今日は十六時間を超えたので後は皆に任せて今日は休む、明日に備えて休養をしっかりとらないとね。
翌朝、チュートリアに向かうと敵の進撃は止まっていた。二十四時間進撃されるとプレイヤー側がもたないからね。再び師匠や先生を連れて砦に向かい悪魔を倒し続ける。北側と南側の先行部隊はだいたい撃破出来た。取りこぼした程度の敵はチュートリアに着いたとしても留守番部隊で撃破出来るだろう。
相手の主力、いや主力だったと言うべき部隊がやって来た。数は一万にも満たなそうだ、これを倒せば終わりだ。ありがとうロングミニンボ、君の事は忘れないよ一両日中くらいは。
砦に籠り、いつもの戦闘を繰り返し大半を倒したところで、ついに奴がやって来た。大きな獣っぽい何かに騎乗してゆっくりと近づいてくる。
プレッシャーが半端ない、これはどう考えても無理だろう。だって指揮官だろ、当然LVだって+-3の範囲に居るとは思えない、そして何よりも攻撃不可の文字が上に付きっぱなしだ。これじゃあどうやっても倒せないし無理じゃね。奴は砦の前まで来て、ついにその全貌を露わにした。
『様配下、第二軍団、第一師団、第四旅団、第二連隊、第一大隊、第六中隊、第二小隊、第一分隊、隊長のマグラワシイだ』
「タメが長いよ長すぎ! 一週間も引っ張るなよ! なんだ雑魚じゃないか、驚かせやがって」
『カトウ、それは違うわ』
なに! こいつはそれなりの強者なのか? 確かにあの攻撃力、他の敵よりも十倍は強そうではある。
『これは天丼すべきネタよ』
「うるせーよ! 真面目に聞いて損したよ!」
攻撃不可のマークが取れたので戦う事が可能になったようだ。しかし、あいつはトンデモナイ破壊力がある攻撃を行うので砦に籠ったまま戦うのは不利だ、砦ごと狙い撃ちされてしまう。思い切って砦から一人飛び出し武器を構える、皆を巻き込むわけにはいかない。
『ほほー、なかなか度胸があるじゃないか、サシで戦おうというのか』
「ちょっと待ってくれ、サシと言うなら、その獣っぽい何かから降りて戦ってくれないか?」
『なるほどなるほど、確かに言う通りだな。そこで座って待て、獣っぽい何かよ』
「お前も名前を知らないのかよ!」
『ん? 違うぞ、種族名が獣っぽい何かだ』
「いい加減過ぎんだろ! てか名前を付けてやれよ」
『いや、名前も種族名と同じで、獣っぽい何かだ』
「安易な名前をつけるなよ可哀想だろ!」
ついに相手の分隊隊長との戦闘になった。いや、分隊隊長との戦闘って全然クライマックスじゃないじゃん、これってどうでもいい戦いだよな、まあ良いけど。しかし、気になることがある、先日手に持っていた棒のような武器を装備していない、どういう事だ?
「マグラワシイ、お前の持っていた武器はどうした? 手加減でもするつもりなのか?」
『ふっ、サシで向かって来たお前には教えてやろう。先日バッファローを殴り飛ばした技、あれは凄く高等なテクニックが必要で、インパクトの瞬間手首のスナップを効かせて優しく包み込むようにして持ち上げ、その後また手首のスナップと腕の筋肉を上手く活用して、放り投げるものだ。
で、手首を痛めた』
「何やってんだよまったく!」
急いで砦に戻って、遠距離から魔法を撃ち続ける。
『卑怯だぞ! 悪魔かお前、たとえ死んでも決して許さんぞ!』
「誉め言葉ととっておこう」
あっけなく敵の分隊隊長も倒すことが出来た、あとは残敵の討伐戦程度で脅威は無い筈だ。しかし、先生が愕然としている、砦の下にはマグラワシイの死体が残ったままだ、まだ何かあるのか? 直ぐに死体を処理しないと。
『渾身のボケが真実だったなんて…』
「どうでもいいよ!」
一応周辺の敵を探索しつつ倒しながら、大侵攻のイベントは終了を迎えた。
チュートリアに戻ると、シャルが走ってきて抱きついて来た。おっおう、あれだな、役得役得。しかし、すぐ後ろのビジンの視線が痛い。いや後ろは見てないよ、見てないけど分かるんだ。だってあれだけ危険な任務を行わせたんだから、私も有る程度の責任を取らないといけないと思っている。
もうすぐラスト、ラストなんだけど、纏まらないんですよね。1,5話分位書いているんだけど、しっくりこない。困ったなぁ、ちょっと来週末に上げるのは無理かも知れないし、可能かも知れない。




