22 先生からの助言
「そうですよね。お仕事もお忙しいと思いますし大変助かりました。これからは自力で頑張りたいと思います」
仕事をそっちのけで、しかもお金や消耗品をばら撒いて協力するメリットなんて無いだろうしな。
『ごめんなさいねカトウ、勘違いしてしまうような言い方してしまったけど、別に貴方が嫌いとか、面倒だとか、お金が掛かるからとか、時間の無駄とか、見込みが無いからとか、飽きたとか、そういう意味では無いの』
いや、それ凄くストーレートですよ、めっちゃへこむ。
『カトウの戦い方、LV、スキルLV、それらを総合的に見て分かったの、歪だと。貴方は戦闘経験が少なすぎるわ、そして敵に対する知識も少ない。
このまま私が力を貸してLVが上がったとしても、ただLVが高いだけで何にも出来ない人になってしまう可能性を危惧しているわ。体は大人、でも中身が赤ちゃんだったらこの先冒険や生活していけるかしら?』
なるほど、確かに先生や師匠に頼りっぱなしだった。このテーブルだけが静かで、周りのにぎやかな声と対照的だ。さらに先生が続ける。
『カトウ、貴方に必要なのは同じLV位の人よ。そしてその仲間と一緒に経験を一歩ずつ積むことで知識や経験が蓄積されて、一人前になることが出来るわ。
だからカトウ、もうこの町に留まらずに旅人達と一緒に冒険をしなさい。私たちはこの町に居るから、また会いに来たければいつでも会いに来て良いから』
「マル、ありがとうございます」
こんなにも自分の事を思ってくれるなんて、ちょっと目頭が熱くなった。シャルの目もウルウルってなってた。師匠は先生がテーブルの上においた手に手を重ねてウンウン頷いていた。いつの間に!
『カトウ、分かってくれたかしら? 良かった分かってくれて。じゃあ今日はカトウの送別会ね』
先生がオーダーを追加しようと手を挙げたところに割り込む。
「ちょっと待って下さい。理解も出来ましたし、自分の為である事も分かりましたが、もう少しだけこの町に居させてください。やり残したことが有るんです」
師匠は寂しそうに手の行方を見送っていた、まあそっちはどうでも良いや。先生に私の目的、ザーコを倒すためにLV上げや魔法スキルLV上げをしている事を伝えた。倒せるかどうかは分からないけどLV十までは最低でも頑張ってみたいんだと。
『なるほどね。カトウがもう少し頑張りたいというのであれば、それはそれで構わないわ。ただいつまでも一人じゃ駄目よ。自分と同じ位の人を探して、協力して知識を溜めなさいね。さあ、おばさんの小言はこれで終わりよ』
借りている装備はもうしばらく借りていて良いとの事なので有難く借りておく。しかし、師匠も頑張ってるな私も頑張らないと、ちょっと方向性が違うけどね。
二日後、採集や戦闘、コントロールの練習を繰り返し行っていると採集LV5に上がった。まあ、そっちよりも魔法スキルLVが上がって欲しいんだよな、嬉しい事は嬉しいんだけどね。
でも大分魔法慣れしてきた気がするし、LV10になる前に一旦ザーコと戦った方が良いかも知れない。さて、どこまで頑張れるかなと。
ザーコが湧いたけど近寄らずにナパームの魔法を唱える。炎に包まれて怒ったザーコが突進してくる、余りの迫力に思わず腰が引けてザーコと反対方向に走り出した。ザーコは既にトップスピードになっているため、直ぐに追いつかれて後ろから殴られる。
私の体は前に転がり、倒れたところを思いっきり蹴り上げられて空中に浮いた、放物線を描いて再度地面に叩きつけられる。生身だったら絶対起き上がれないだろうけど、別にたいして痛くも無いし、HPが減っているだけで行動は阻害されていない。
起き上がった後、斧を振り上げて近寄って来たザーコの顔面に叩き込む。ダメージを受けて少し怯んだが、直ぐにザーコが右パンチを繰り出してくる。左腕、そのまま脇腹まで押し込まれて体が大きく歪む、左パンチが来ると思ったので、衝撃に逆らわずにそのまま右側に倒れこむ。
ザーコの左パンチが空を切っていた、倒れた衝撃を利用して回転して立ち上がる、嘘、こんなことができるなんて有り得ない、あっ普段の自分ならの話で、そのまま前に走りザーコの後ろに回り込む。
ザーコの周りを反時計回りに進むと、ザーコもその場で振り返ろうとして、お互いにグルグル回っている。このまま走っていても何の解決にも成らないが、相手からの攻撃も受けないのでHPはこれ以上減らないで済む。取りあえず走りながら回復ポーションを一つ使うと、半分以下になっていたHPが八割程度回復した、ゲームって便利だなと思う。
しかし別の懸念点がある、そう、バターになってしまわないかなと。アホな事に気を取らていたらザーコが逆側に振り向き、左の拳が目の前に、避けられずに思いっきり宙を舞った。
体が“く”の字に反ったまま後方回転して、地面に足が着くがまだ勢いは収まらず、そのまま更に後方に回転する、咄嗟に手を着いて逆らわずにくるっと回ると、後方倒立回転の要領で姿勢が戻った。
「……」
余りの事にびっくりする、だって鉄棒の逆上がりだって出来ないのに、というか今だとお腹が邪魔で前回りだって厳しいと思う。びっくりしていたため隙が出来て、ザーコの追撃を受けて死に戻りした。
なんだろうこの違和感。いや、自分の運動能力は低いから、そんなことが出来る事が全然理解出来ない。きっとゲームだからこんな動きが出来るんだろうけれども、あれかな、幾つかの回避パターンがあって、避けたいって思うと用意されているパターンの中で最適なものが発動するのかも知れないな。
最近戦っている敵は多分格下ばかりだから、こんなに体が吹っ飛ばされることもないし、この動きに慣れないと戦っても勝てないかも知れない。
どうしよう慣れないと勝てないし、うーん、そうだ慣れよう慣れるまで戦おう。どんな立て直しパターンがあるのか実際に喰らってみよう。そうと決まれば再戦再戦。
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三十回程戦って分かったけど、逃げるより出来るだけその場で打ち合った方が受けるダメージが少ないし、斧で攻撃した方がダメージも入る。接近する事で攻撃も避けやすく成って来た。死中に活を求める、を実践してみている感じかな、ただ、まだまだだ。
翌日もザーコと戦闘訓練を繰り返す、経験値は全く入らないけど、魔法の熟練度だけは結構入る。特に満腹度百%の時には火魔法の熟練度が五、風魔法で二を得られるってのは有難い。それに五十%の時でも火魔法なら四入るからお得と言えばお得。死に戻り時間とかを考えると、普通の狩りした方が効率が良い気がするけど。
ゲームをログアウトしてトイレを済ませる。冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出して飲みながら、ソファーでくつろぐ。さて、SNSはここ三日程書き込みをしていない、コメントのお礼だけ返している。ザーコを倒すために頑張っているが、そう書いちゃうと倒せなかった時の事の反響が嫌だなと思って。
でも流石にそろそろ進展を書き込まないとなあ、スマホを片手にSNSを見て思わずスポーツドリンクを吹き出した。なんじゃこりゃ! 閲覧数が千回超えた位だったのに二万を超えてる、書き込みも三十件位だったのに二百件超えてる、何がどうなったの?
回るとバターになる話 で検索するとボケの元ネタが分かりますよ。
最近の人は知らない話らしい。いや私も詳細は知らないんですけどね。




