02 チュートリアル開始
草原を見渡すと多少の木と低い草が沢山。遠くには山や丘が見える。青い空に流れる雲、うーん牧歌的だな。でも地面には不自然な黄色の線が引かれている。多分移動できる範囲を示しているんだろう。
『じゃあ、移動方法からだよ』
妖精の指示に従い、歩き方や走り方、ジャンプ、自動移動、追尾移動などの方法を学んでいく。
:
:
『次は採集スキルについて説明するよ。草原に青く光っている草があるよ、そばまでいって採集スキルを発動してみて』
光る草のそばまで行って、立ったまま採集スキルを発動してみる。手には光る草が収まっていた、これは便利だな。いちいちしゃがまないで良いのは効率的だ。ちなみに、経験値三と採集熟練度三が手に入った。
『採集や鑑定のような、アクティブスキルを発動するとSPを消費するよ。SPは時間で自動回復するし、SP回復アイテムでも回復するよ。
じゃあ、手に入れた草を鑑定スキルで鑑定してみて。鑑定が終わったらポシェットに格納してみよう』
鑑定スキルを発動すると“ヒポ草”と表示された。解説には薬草やポーションの材料になるだの書いてある、ふーん。鑑定の熟練度十が手に入った。ポシェットに格納しようとしたら自動で消えて、なぜかポシェットに格納された事が分かった。
『ポシェットには三十種類のアイテムが入るよ。もっと収納スペースが必要なら妖精の店で販売しているから、いつでも買いに来てね』
課金による収奪の仕組みだね、ワザと収納数を減らしているんだろう。まあ安ければ買っちゃうかなー、レジャー費には月二十万位割いても問題ないから。いやそんなには課金しませんよ?
しかし、普通の草は採集できないようだ、何度か採集をするが手元に来ない。SPだけ消費されている。
『採集スキルは、一定以上の価値があると明確になっているものしか採集出来ないよ。SPが切れたみたいだね。回復するね』
しかし、普通の草は採集出来ないのか。座って普通の草を引っこ抜いてみる。鑑定を使うと“草”で、説明はその辺に生えている草としか表示されていないし、鑑定熟練度は一しか入らない。
採集でヒポ草を手に入れたら経験値も入るのに、手で草を引っこ抜いても経験値は入らないのか。まあそりゃそうか、そんなんで経験が得られたら皆適当に草引っこ抜いてレベルアップするだろうしな。
鑑定の熟練度も草だと一しか入らないし、どうせSP消費するなら熟練度が沢山入った方が良いから草を抜くのはあんまり意味が無いね。
残り時間も少ないし他の事もそんなに出来ないだろうから、今回はチュートリアルだけで良いや。草が抜けるみたいだし、もしかしたら何か良いものが拾えるかもしれない。
草を取れるだけ取って鑑定しまくる。SPは妖精が直ぐに回復してくれるから、手の届く範囲の草は全部引っこ抜けた。小石も落ちていたのでそれも拾って鑑定するが、ただの石だった。
遠くまでフィールドが存在するのに、黄色の線の先は透明の壁に阻まれて進めない。百個の草と二十個の石がポシェットに入っている、役に立つか分からないけど捨てるのも勿体ないので取っておく。残るは木だな。
木に近づいてナイフを突き刺してみるが表面が若干削れるだけで、全然伐採出来そうな気がしない。数回刺したところでナイフが劣化してマイナス一になったと表示された。
『固いものにナイフや剣などを使うと刃が劣化することがあるよ。劣化したアイテムは砥石か鍛冶でメンテナンスすると回復するよ。木を伐採するなら斧が最適だよ、伐採スキルがあると楽に早く多くの木材が手に入るよ。
伐採スキルを覚えますか?』
木は直ぐには必要なさそうだから、とりあえず覚えないでおく。
『じゃあ、もう良いかな? 次は戦闘のやり方を説明するね』
OKと返事をすると場面が変わって、さっきとは違った草原になった。
『ほら、ゴブリンが出て来たよ。こちらを攻撃する気はないみたいだね。持っている武器で攻撃してみよう』
地面から穴が開いて一m位のサイズの人型モンスターが出て来た。全身緑でボロボロの服を着てこん棒を持っている。頭の形は卵っぽくて、耳がとがって少し凶悪な面構えだ、うんゴブリンだね。
こちらに気が付いているが攻撃する気は無いようだな、歩いて近づき杖で殴る。向こうも棍棒のようなもので殴ってくる、当たるとHPが減って軽く痛い。
殴って殴られてゴブリンを倒すと、いままでゴブリンを構成していた体が小さなポリゴン単位で分解して空中に散らばり直ぐに消えていく。経験値十と五Gと薬草一個が手に入った。
『攻撃を当てて相手のHPをゼロにしたら、今回のように倒せるよ。相手からのダメージを受けるとHPが減るから、無くならないように回復するか、逃げるか、HPが減る前に倒してね。敵を倒すと経験値が、場合によってGやアイテムが手に入るよ。
魔法での戦闘も体験してみるかい? 魔法スキルを覚えれば、覚えた魔法スキルに特化した説明をするよ。火と風が最初から攻撃魔法が使えるよ、水と土と光と闇はスキルレベルが上がらないと攻撃魔法を覚えられないよ』
「うーん。とりあえず火を覚えたいです」
そう伝えると、スキル枠を二つ使って火魔法を覚えた。
『ファイヤーボールが使えるようになったよ。ターゲットしてから魔法を唱えて、魔法発動時間が過ぎるとロックオンと表示されるから、あとは発動したいと思うと魔法が実行されるよ』
穴から出て来たゴブリンに対して魔法を唱えてみる。杖の少し先に円状の線が表示されて、その中に六芒星の線が見えてクルクルと回り、円の上側にロックオンと表示された。しかし、随分チープな魔法陣だな。
飛んでけという気持ちになったら、ゴルフボール程度の大きさの球がゴブリンに向かって飛んでいき、あたると同時に小さく爆発した。
ゴブリンの服が少しだけ燃えている、怒ったゴブリンがこちらに向かってくるので魔法を唱えようとしたが、ファイヤーボールのアイコンはクールタイムに入っていた。こちらに到着する前に何とか二発目を撃ちゴブリンを倒した。
『魔法や攻撃を行うと熟練度が入るよ。ファイヤーボールは相手に当たると燃える場合があるよ。燃えている間は継続のダメージが入るよ』
なるほどねー風魔法も覚えて使ってみた。ウインドカッターという魔法で対象に当たると切り傷を与える可能性があり、出血した場合も継続ダメージが入る。
火と風を交互に撃てば、ほぼクールタイム無しで連続攻撃が出来る。でもフィールドだと魔法が直ぐに尽きちゃうだろうな。
妖精から、色々な説明を聞き続ける。
:
:
『モンスターの中には会話が出来るものもいるよ。ほら、穴から大きなモンスターが出て来たよ。話しかけてみて』
穴から、お相撲さんが横に二人分位、体積で言ったら四人分位の悪魔っぽい人型モンスターが出て来た。後ろに大きな翼が付いているが重くて飛べそうにも無い、とりあえず話しかけみる。
『私は、アフォー軍指揮官のアフォー』
いきなり、モンスター軍の指揮官らしい人? との会話が始まった。これは今後のイベントで何かと会う事になるのだろうか?
『様配下、第二軍団、第一師団、第四旅団、第二連隊、第一大隊、第六中隊、第二小隊、第一分隊、第二組メンバーのザーコだ』
「モブじゃん! ただのモブじゃん! 紛らわしいよ!!」
思わずモンスターNPCにツッコンでしまった。
『お前のような弱者は一撃で殺する事も可能だが、そんな虫けらを殺したところで何の価値も無い。見逃してやるから、早々と立ち去れ。“はい” “いいえ”』
雑魚のくせして生意気な態度だが凄く強そうでもある。ちょっとカチンと来てもいるので、言い返してみた。
「いいえ。立ち去りません」
『ハハハ。お前のような弱者は一撃で……』
同じセリフを繰り返してくる。何度いいえを選択しても結果は同じようだ。杖で殴ってみるがかすりもしないし、何とか当ててもダメージが入らない。ファイヤーボールを唱えると相手に当たってちょっと燃えた。
『自分の実力も測れぬ馬鹿者が!』
ザーコが右手を振りかざし降ろし、避けられず一撃でHPがゼロになった。滅茶苦茶ツエーな雑魚なのに。
最寄りの復活拠点で復活しますか? という表示がされている。“はい”を選択する。周囲が明るくなって、別の場所に切り替わった。
『HPが無くなると、最寄りの復活拠点、大抵は村や町にワープするよ。ただ今はチュートリアル中だから移動しないけど。LV九までは加護でアイテムやG、経験値をロストしないけど、LV十以上はペナルティがあって、経験値が下がるし、確率でアイテムやGをロストするよ』
『ゲームにログインして四時間が経過しました。健康のためにログアウトしてください』
ふむ、引き続きゲームは出来るようだが一旦ログアウトする事にした。しかし、先ほどの雑魚はムカついたのでネットで雑魚の情報を調べてみる。
同じくムカついたという情報はあるが倒せたという情報は無い。もしかして、チュートリアルの中でアイツを倒せたら俺は馬鹿だと認識されて、周りからウケるんじゃないか?
倒せるかどうか分かんないけど、どうせ暇だしやってみよう!