16 対立
「倒したいモンスターが居るんです。そのために強くなりたいんです」
ドワージン師匠の質問に答える。
『ふむ、そのモンスターはどういったモンスターなんじゃ? 悪魔? 他の特徴は? オスモウサンを大きくした感じ? オスモウサンとは何じゃ? まあ悪魔なら大体聖属性が弱点じゃな
武器に聖属性が付いていると与えられるダメージが増えるぞい、他には呪文やマジックアイテムも有効じゃろ』
なんだ性属性武器って、大人の武器とかマジックアイテムとかあるのかな? なんかドキドキしちゃう。
『なんか勘違いをしてそうな雰囲気じゃな。清らかな、神様とか、そういう意味での聖じゃよ』
「いっいっいやだなー、そっそんなかんちがいするわけないじゃないですかー」
だいぶ棒読みになってしまった。そうだよな聖属性だと思ってました。
『メジャーなところだと聖水じゃな。ただ一回使うと無くなるし、強いモンスターには効果が弱いな。教会があるから行ってみると良い』
教えられた場所に向かう。教会の前には中学生位の若いシスターが居たので挨拶をして尋ねる。
「あのこんにちは。聖水を頂きたいのですが」
『信者への救済も教会の務め、ご協力しましょう。ただお譲りするかどうかは貴方の信仰心次第です』
と言いつつ、右手の親指と人差し指で丸い輪っかを作って見せつけている。ようはGという事ですね。
「では百Gで」
顔を思いっきり歪めて睨んでいる。いや相場何てしらないから、そんな顔されても。
「じゃあ三百G」
『ッチ』
悪態つくなら相場を教えてくれよ、面倒だな。
「五百Gで」
『あなたの信仰心は良く分かりました。お譲りしましょう。では此方に』
シスターと一緒に教会の中に入る、左右には長椅子があり、正面の壁にはステンドグラスがあり、この世界の神様のような白い石像が、更にその手前に教壇のようなものが、百人ぐらいは入れそうだな。
『では此方でお待ちください』
聖堂の方には進まず、横にある扉にシスターが入って、戻ってくると多分聖水が入っていると思われるガラスの瓶が、籠いっぱいに収まっている。取りあえず五百Gを支払い一つ購入して鑑定する、自分に振りかけると自分より弱い敵は遭遇する確率が低くなり、武器に振りかけるとしばらくの間、武器に弱い聖属性が付くらしい。
思ったより効果が低い、これじゃあんまり役に立ちそうもない。一本だけで良いか。
『聖水をお求めになるという事は、もしかして何かお困りですか? ふむ悪魔と戦おうとしている、と、なかなか素晴らしい心掛けですね。聖職者として私も何か協力をしてあげたいのですが……。
そうだお守りを授けましょう。あーーーですが材料がありません。材料を用意していただけたら、作製してお譲り致しますわ』
少しうつむいてから額に手を当てて顔を若干左右に振ってシマッター的な動作をした上で、閃いたようにクエストが出て来た。
『ユーニククエスト:“聖なる守り”を受けますか? “はい” “いいえ”』
特別なクエストっぽいけど何が必要か分からないから、それを聞いてから判断かな?
「何を集めればよいのですか?」
『イスト村から小麦粉一袋、チーズ五個、あっホールのやつです。サスの港でウマール海老五尾は欲しいな。それと新鮮な魚や貝は、こっちは適当でいいです。最後にウエスマウンテンで宝石の原石を沢山採掘して下さい、その中で一番良い宝石を使ってお守りを作製致しますよ』
……どう考えてもウエスマウンテン以外は関係がないと思われる、宝石の原石だって本当にお守りに必要なのだろうか? ジト目でしばらくシスターを見つめる。
『でっでは、ウマール海老は無くても大丈夫です。ただ他のものは必要なので……』
いいえを選んで、その場を離れました。ギャーギャー言っているが無視して。どう考えてもたかっているよな、ここの人たちってがめついのかな?
そういえば良いクエストが無いか確認してなかったのでギルドに戻ってみる。ギルドのクエスト掲示板にはクエストが増えていた。その中でも良さげなのがデイリークエストだ。
“デイリークエスト:チュートリアにある森の恵み亭に肉を十個収めよう。一日一回限定。報酬は肉の種類によって変わる” など、良い感じのものを幾つか受けてみる。
『いらっしゃい。おっ肉の納品だねありがとう。イノシシ肉か、それじゃあ報酬はおまけしとくよ』
目つきが悪いが、ハンサムでスラっとしたお兄さんが笑ってくれた。が、ニヤっとした顔はどう考えても悪だくみをしているようにしか見えない。思わずビクっと身構えてしまう、ちなみに頭の上には角があるので鬼さんだと思う。
『あー鬼だからと怖いかも知れませんが、決して悪い鬼ではないですよ。物凄く悪い鬼です』
「余計こえーよ! フォローになってねーよ!」
『冗談ですよ。ツッコミが得意の旅人が来ていると話題になっていましてね、ツッコンで貰えるかなと思ってボケけてみました、ごめんなさい、でもありがとう。
そうそう良かったらテイクアウト料理もあるから、是非ご利用ください』
良さそう人だな、種族で差別しちゃだめだね気を付けないと。料理のラインナップを見る、牛ヒレのステーキが三千G、イノシシ肉の生姜焼き、鳥ももステーキ、ウサギ串焼き、……燕麦パンまで結構幅が広い。在庫が五個ずつしかないのは、生産プレイヤーの販売を阻害しないためと課金のためだろうな。
ただ、どう考えてもステーキとかはテイクアウトする料理じゃないと思う。しかもこの料理がポシェットに一枠で複数保管できるっていうのも理解出来ない。
満腹度を求めるなら安い料理だろうけど、高い料理には追加効果があるみたいだし、一長一短だな。でも妖精があるから回復しなくていいし、テイクアウトも要らないわ。
次は師匠の店に入り挨拶をしてから、納品しに来た旨を伝える。
『青銅十個じゃな、これからもよろしく頼むぞい』
しかしおかしい、師匠なら鉱石を取ってきて幾らでも生成出来るのに、態々旅人から買う必要なんて無い筈だ。
『必要だからじゃ』
何度聞いても必要の一点張りだ。まあゲームだしな、生産の方が消費より多そうだし、こうやって消費するところがないと成り立たないのだろう。次は変態のところか。
『ちょっと待った! わしも行くぞい』
師匠も一緒に行くようです。沢山の花をポシェットにしまっている、もしかしてプレゼントか? 頑張れ師匠、わたしも何か協力してあげたいな。
雑貨店に入ると変態が直ぐそばに居た。私の顔見ると溢れんばかりの笑みが出て、キャッキャッと小さく飛び跳ねながら喜んでいる。
『おおおーカトウじゃないか、いらっしゃい、よく来たわね、今日は何用だいカトウ。どんな楽しい事をしてくれるんだいカトウ。早く面白い事を言ってくれカトウ、なんだ勿体ぶっているのかカトウ。あっドワージンさんお久しぶりです。どうしたんだカトウ、そんなところに突っ立ってないで、ほらこっちに来て来て』
変態! ちょっちょっちょっと空気読んでくださいよ! 師匠の顔にカトウという名が出るたびに、怒りを表すような+マークが二つ三つ浮き上がってきて、とんでもないくらい数の怒りマークが、それこそ五目並べ出来るくらいに出ている。
『カトウや、お前とは一回決着をつけねばならぬようじゃの』
こぶしを力強く握りしめ、露出している腕には血管が盛り上がってきて、全身プルプルしている。これはヤバいな、何とか挽回しないと。
『ドワージンさん何をそんなに怒っているの? カトウは凄いのよ!(ツッコミが) 私は何度も気持よくなって! もう無理と言ったのにどんどんとたたみかけてくるんだもの! 激しかったわー! あんなの初めて!!(のお笑い)』
やめてーー誤解を生むような発言は止めてーー! なんかもう師匠の顔には原型をとどめないくらい、の+マークが。
『……。一度地獄に送ってやるわい。閻魔様によろしくと伝えてきてくれんかの』
あー駄目だ、終わった、師匠は本気モードだ、もう何も無しでは済まないだろう。私も覚悟を決めて白黒をつけるべきだろう。
「ドワージンさん。ちょっと横になってください」
今の師匠の顔ならリバーシが出来るはずだ、これで決着をつけよう。
『ほほう。ワシを叩き伏せると。なかなか面白い事をいう奴じゃな!! 掛かって来いヒヨッコが! ぐうの音も出ないようにしてやるわい!!』
あー冗談まで持っていけなかった、もう駄目だ終わった。ただ最後に言わせてくれ、師匠は仏教かヒンドゥー教らしい。
『そこまでよ! 私の店で無法は許さないわ』
そこには、いつもの無邪気な変態ではなく、真剣な顔つきのマルグリットさんがいた。




