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腐男子御曹司の彼  作者: 一条由吏
第1章 最終面接
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5.腐女子は目を輝かした

「次は観光バー。「キヒロ! 飛ばすな!! ニューハーフのお姉さまたちに可愛がって頂いた話が抜けている。」」


 突然、BL2次オタクの女性からダメ出しが入る。


「佐藤ぉ。アレを喋れってか。」


「あのぅ。佐藤さんとキヒロ先生とはどういう関係なんですか?」


 上司と部下の関係にしては随分砕けているよね。


「ああ、紹介していなかったな。ここに居るメンバーは一人を除いて同じ大学の漫画研究会のメンバーだ。俺が在学中に列島(れっとう)書房のBLコンテスト大賞を受賞したことは知っているよな。」


 私は頷く。まさか男性だとは思わなかったけど。


「その後1年間の連載中アシスタントを勉めてくれた仲間だ。」


「なるほど、だから年に3冊という高ペースで出版できたんですね。」


「それもあるが、列島書房の編集部はさっさと受賞作を完結して欲しかったんだろうな。」


「何故?」


「相手は俺が男だと認識していなかったんだ。受賞後、初めて編集部に訪ねて行ったら、酷く驚いていた。BL漫画の応募者は女性だと頭から思い込んでいたんだろうな。だから、第1作目を完結させたらクビだった。」


「あんなに売れていたのに筆を折ったのは編集部都合だったんですか?」


「まあそうだな。全てをバラして君たちの夢をブッ壊すのも悪いと思って引き下がったんだ。ゴメンな。夢を壊して。」


 キヒロ先生はにこやかに笑いながらいう。


「そんな、酷い! BLの編集部が差別主義者だったなんて。だから、あの会社潰れたんですね。」


 キヒロ先生がBL作家を辞めると宣言してから、わずか1年余りで列島書房は破産している。しかも、事業を引き継いだ会社からはキヒロ先生の本は出版されなかった。


「まあそう言うなって。」


 先生は苦笑しながら、私を宥めようとしてくる。


「先生は悔しくなかったんですか!」


 初めてそのことを聞いたときには裏切られたと思った。だけど真実を聞けば私たち読者はオブラートに包まれ優しく大切にされていたことが分かる。


「悔しく無いわけが無いだろ!! ……わりぃ。引き摺られた。もう終わったことだ。怒りをぶつける相手もいない。この話はこの辺りで止めてくれないか。」


 バカなことを聞いてしまった。本人が一番悔しいに決まっている。


 少しの間、沈黙が訪れる。私が先生を傷つけてどうするよ。


「佐藤は知っているよな。彼女には俺の同人活動のサポートもやって貰っている。主に委託先の開拓だな。堂々と表に出て活動できないのはツライが君みたいに待ってくれている読者が居るかぎりは続けていこうと思っている。」


 そして意を決したように先生は話を再開する。先生はどこまでも優しい。優しすぎるよう。


「もちろんずっと待っていますが、今度合同誌作りましょうよ。」


 涙が溢れそうになるのを堪え、今まで言いたくても言い出せなかったことを言葉にしてみる。


「お前、大丈夫なのか?」


 先生が心配してくれているのには訳がある。元々、友人と2人で始めた同人誌サークルだけど、昨年友人が亡くなり今では個人サークルとなっている。


 当時は何も手がつかないほどショックだったのだけど、先生が参加してくれるならば友人も大ファンだったから喜んでくれるに違いない。


「ハッテン場を覗きに行って男の娘に間違われて殺されたなんて腐女子らしいというかバカというか。とにかく、あの空席を埋めるのに先生以上の人物はいません。それだけは言えます。」


 友人もBLに関しては実践・検証したいタイプだったから、生きていたなら先生に対してズルイとか言いそう。


「それならいいんだが。佐藤正志は知っているよな。あのBL漫画では名前だけ借りた。我が社の総務部長だ。」


「えっ。佐藤正志さんと佐藤裕子(ゆうこ)さんは?」


「ああ。夫婦だ。2年前に結婚した。旧姓鈴木裕子さんだ。そして、こいつが小島総二郎(そうじろう)。今日トラブル起こした小島総一郎の双子の弟だ。」


 隣に居る美貌の女性を指し示す。


 やっぱりね。


「なんだ。驚かないのか。」


「ええ、完璧な美貌っていうのは怪しいですから。」


「だってよ。総二郎。見破られているぞ。」


 その女性がこちらにやってくるとボーイソプラノで話しかけてきた。


「褒めてくれてありがとう。嬉しい。」


 近くで見ても凄い美貌。透き通るような白い肌に薄くメイクされている唇から綺麗な並びの白い歯が覗いている。


「性同一性障害とお伺いしました。戸籍変更後のお名前はなんと仰るのですか?」


「なによ。キヒロがヒントを出しているじゃない。性同一性障害じゃないのよ。今風で言うと男の娘(おとこのこ)かな。でもこの姿で居るときは聡子(さとこ)と呼んでね。」


 今度は普通の女性の声。男の娘というと天然だよね。どこをどうとっても女性にしか見えない。


「仕方が無いだろ。万が一バレたときのことを考えて保険を掛けているんだよ。」


 何かで気付いたとしても性同一性障害と思えば何も言えなくなる。酷い。めっちゃ悪用してる。


「それに去年、本物の性同一性障害の元ニューハーフも入社してきているからあながち間違いじゃないだろう。」


 本物の性転換者も居るのか。是非ともお近付きになりたい。


「今日は本当に助かったよ。あの男にトドメを刺してくれて。いつもならノンケの証明に事情を知っている腐女子に俺の恋人役をやってもらうんだが夏コミの締め切り直後の休暇中、総二郎相手に演じられるか不安だったんだ。」


「失礼ね。私の美貌ならどんな状況でも相手は納得するでしょ。」


 確かにまるで一対の絵画のような美男美女。でもやっぱり言動がおかしい。


「それから、この男は漫画研究会のメンバーじゃないんだが、初めてゲイバーでスカウトした人材なので経営に加わって貰っている。」


 先生はそのままスルーして最後のひとりを紹介してくれる。いつもこんな言動をしているらしい。


 腐男子に腐女子、男の娘とその兄弟のゲイ。


 ここまでは友人だろうから先生が設立した会社に居てもおかしくないけど、さらにニューハーフにゲイバーでスカウトした人材っていったいどういうわけなんだろう?


「BLの検証の一環として集めてるんですか? LBGTを。」

私の中で男の娘は日常生活で未改造で完璧に性別を偽れる男性を指しています。

男の娘であるとバラして商売にした時点でそれは単なる異装者でオネエかと。

だって楽しくないんだもん。この子、男の娘かもと妄想するのが楽しいのに(笑)


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