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腐男子御曹司の彼  作者: 一条由吏
第6章 ハラスメント
38/40

3.腐女子は演出ができるらしい

「では実践して頂きましょう。加害者役は社長。被害者役は大川賢次さんにお願いします。」


 ハラスメント委員会の第1回会合が行われるため、試案作成者として説明を求められた。それが終わり、次は実践編に移った。


 横からキヒロがつついてくる。


 実は予定では説明に続き、質疑応答に移る予定だったのだが参加者の中にガチムチ体形のゲイで、しかも鬼束スタッフの出資者(パトロン)の1人であるZiphoneのCOOを見つけた。これ幸いと実践編を急遽実施することにしたのである。


 聞いてはいたがCOOの視線はいつも社長を追っていて本気で好きなんだと解る。以前言っていた本気で好きな男性は社長のことだったんだ。でもプラトニックな愛らしい。COOの異母妹が社長の奥様なのだそうだ。


 ゲイがノンケの男性に対してプラトニックな愛を捧げるというのもそそられるシチュエーションよね。


「俺と賢次さんがするの? すみません。お義兄さんお願いします。」


 私が頷くとあっさり了承してくれる。COOの恋心を全く気付いている様子は無い。これだけ近くに居て解らないなんて鈍感すぎる。


「まずは愛の告白編です。セリフは『賢次さん。好きだよ。』でいきましょう。少し俯き加減から視線を合わせて想いをぶつけるように言ってください。」


 社長のどことなくぎこちない様子がウブな男の子を思わせてそそられる。


「賢次さん。好きだよ。」


 COOの頬がピンクに染まる。嬉しいらしい。


「想いが篭っていません。告白することは凄く勇気の要る行為です。それは男同士でも男女間でも全く同じです。もう一度お願いします。」


「賢次さん。好きだよ。」


 今度は心を込めて言ったらしい。


 COOの頬が更に赤くなり、モジモジしだす。ある意味苦行なのかもしれない。


「次は相手の手を持って言ってください。」


 社長が手を掴もうとするがCOOは手を引っ込めてしまう。イジらしくて何とも萌える光景よね。それでも強引にCOOの手を掴み取る。


「賢次さん。好きだよ。」


「次は相手の腰に抱き付き、相手の胸に顔を埋めて横に向いて言ってください。」


 社長がCOOの腰に抱きつくとCOOが必死に何かを我慢している。自分の欲望が相手に伝わらないように我慢しているのだ。でも抱きつかれたCOOは幸せそう。


「賢次さん。好きだよ。」


「3種類の愛の告白をして頂きましたが、どこまでがハラスメントに当るか解りますか?」


 演技とはいえ、合計4回の愛の告白をして貰ったけどCOOは満足してくれたかな。でもまだ続くのよね。


「最後のはセクシャルハラスメントだよね。」


「いいえ違います。全て大川さんが嫌がればハラスメントで、嫌じゃなければハラスメントじゃないんです。1回目は問題としないのは嫌だとわからずに行ったためで、嫌だと解った上で行う2回目以降とは意味合いが全く違います。」


「そうか。全てハラスメントなんだ。」


 COOは嫌そうに見えなかったけど。目が腐っているんじゃないのかな。この人。


「次は強引にキスをしてください。」


 このあと何故か必死にCOOが逃げ回り、素早く動いた社長が捕まえて押さえ込んで強引にキスをする。小柄な割りに思いのほか力が強いらしい。これならBLの攻め役もこなせそうだ。


「ああっ。キスの真似で良かったのに…まあいいです。この場合1回目でも大川さんが嫌がればハラスメントです。」


 眼福。眼福。ご馳走様でした。


「なるほど。嫌がっている相手以外なら愛を告白するだけではハラスメントに当らないのか。でも性的な行為を強要して相手が嫌がればハラスメントなんだな。」


「但し社長の場合、奥様がいらっしゃいますので相手を不倫の罠に掛けようとしているも同然なので、ハラスメントかどうかに関係無くコンプライアンス違反と言えます。」


「この申告者は正社員、契約社員、パート、アルバイトなどの従業員や派遣社員に限るというのはどういう意味かな?」


 社長が渡した資料の一文を指して質問してくる。


「取締役の方々は個人対個人の付き合いとなり、それぞれ解決して頂きます。」


「そうじゃなくて被害者が取締役で加害者が従業員の場合は?」


 社長が一番の被害者だものなあ。やはりそこを突いてくるか。


「ハラスメントはパワーハラスメントに限らず力の強い人が力の弱い人に行うものです。会社の中で強い権限を持つ取締役の方々は被害者になり得ません。違いましたでしょうか?」


 しれっと言っておくことにする。社長に対する下剋上まで禁止しては詰まらないものね。


「そ、そうだね。……この制服は機能的に自由にスラックスとスカートを選択できるという提言は面白いね。」 


「女性がスラックスを着用しても可笑しくないけど、男性がスカートを着用するのは可笑しいと思い込んでいること自体が間違いなんです。イギリスのキルトなどの例もありますし、昔の日本でも身体に布を巻くだけの着物を着ていた事実があります。勝手な思い込みだけで差別しています。MTFの方々さえも『スカート=女』という思い込みがあるようなんです。そんな思い込みなどぶち壊してしまえば良いんです。」


 キルトとはスコットランドのスカート状の伝統衣装で今でもイギリス陸軍ロイヤル・スコットランド連隊の兵士たちが使っている制服でもある。


 他にも古代ギリシャ、古代ローマなど布を身体に巻きつけるだけの服装が普通だったことを考えると『スカート=女』という思い込みができたのはごくごく近代のことで特にアジア人の思い込みは強い。


「それで内勤者に制服は男女問わずスカート、接客を含む外勤者は自由に選択できるようにしてスカートを着用したことが無い男性を減らそうということか。そんな会社があったら誰がMTFかそうじゃないかわからない・・・即座に実行できるとは思えないが、機会があったらやってみたいね。そのときは推進役をお願いするよ。」


 ノンケと聞いていたが随分と懐の深い男性だ。キヒロを含めて皆が好きになるのも解る気がする。


 女性から見ても男性が欲望を抱いていることが丸分かりのスラックス姿は頂けない。そういったことが隠せる服装をしてほしいと思う。そういう意味ではスカートはうってつけなのである。


「はい。是非とも呼んで下さい。」


     ☆


「おいおい。ハラスメントの講義に来て、社長にハラスメントするなよ。」


 会議室を出た途端、キヒロのツッコミが入った。確かにそうだ。今回は素直に受け入れてくれたが腐女子の妄想も言葉にしてしまえば、ノンケの男性からしてみれば立派なセクシャルハラスメントに違いない。訴えられないように気をつけよう。


「あれで少しはガス抜きが出来たと思う?」


 最近、COOはスタディな関係の男性と別れたらしい。ゲイの男性はスタディな関係を長期で持つと1夜の相手を漁りたくなくなるらしく発散できないそうでキヒロが心配していたのだ。


「そんなことを考えていたのか。少しはできたかもな。」










「それで梓さんは僕に何をして欲しいのかな?」


 その日の夜、ZiphoneのCOOに呼びだされた。今日の実践編は私が欲しいものがあって行ったと思われたみたい。違うんだけどな。


「では私の前でキヒロを抱「それはダメだ。前も言った通り断る。」」


 改めて生BLのエッチシーンを覗こうと思ったのだがこれはダメらしい。この欲望は生涯叶えられないのかもしれない。仕方が無い妄想するだけにしておこう。


「冗談ですよ。特に何もありません。少し私の趣味に付き合って頂いただけなんです。でも感想は聞きたいかも、人前で公然とされた告白は如何でしたか?」


「もう死んでもいい。」


 おいおい。意外と乙女だな。この人。


「冗談は止めてください。逃げるんですか。1回目の愛の告白はハラスメントじゃないでしょ。死ぬのは当って砕けてからでも遅くはないはずです。」


「…無理だ。それに彼の心に負担を強いてしまう。そういう人なんだ。」


「キヒロを抱けないということは適当に発散もできていないのですよね。いずれ身の破滅・・・本当に大丈夫ですか?」


「………。」


「ゲイの男がノンケの男に強引に肉体関係を持てば、嫌われてキッパリと諦められると思うのですが違いますか?」


 相手に対する想いが高まりすぎて強引に肉体関係を結ぼうとして完全に嫌われてしまう。スタディな相手としてキッパリ諦めた後友人同士に戻り友情を育んでいき最終的にはノンケ側が折れてハッピーエンドになるような物語が初期のBLでは良くあった。


 この場合、セクシャルハラスメントどころか完全に犯罪者であるのであまり勧められた方法では無いのだが成功しても失敗しても自分の想いを相手に印象付ける方法ではある。


「……薬を使ってやったが失敗したんだ。薬で意識が朦朧として覚えていないらしい。そのときに妹に釘を刺された。」


 想像を上回る犯罪者っぷりだ。でも断片的な記憶でもCOOの想いを想像できると思うんだけど。


「なんか恋愛事を無意識に避けているような人ですね。」


「ああ前妻を寝取られているんだ。純粋に愛していたんだろうな。あの人が前妻の前だと性格が変わるほどの激しさなんだ。」


「これもあまり勧められた方法じゃないんですけど、大川さんに取って自分がゲイだという意識よりも相手を好きだという意識が強いから適当に発散できなくなっていると思うんです。それならば女性に性転換してしまえばいいんです。それならば相手が受け入れてくれる可能性が僅かでも広がると思うんです。」


 性転換と言うは容易いが、その道のりは平坦じゃない。女性ホルモンを打てば、鬱になる可能性が高いし、身体を作り直す際に命の危険さえも冒さなければいけない。


 この場合、メリットも存在する。個人差はあるが女性ホルモンを打てば欲望を抱かないようになるらしい。男の人の場合、欲望が想いを高めているところが大きい。欲望を抱かなければプラトニックでも長く維持できる可能性もある。


「梓さんは何故ここまで僕のことを……。」


「母性本能が刺激されているみたいです。ゲイといっても母親が居たわけですから、女性とエッチできないということとは別に母親に甘えても良いと思うのですけど。違いますか?」


「母は僕を産んだ直後に亡くなったそうです。母の妹が母親代わりでしたが甘えたことは1度も無かった。」


 母親に甘える経験をしてこなかった男性は同性愛に走るという学説があるがクソ食らえだ。そんなことで言い表せるほど人の心は単純じゃない。


「腐女子は女を捨てているそうですが母性まで捨てた覚えはありません。貴方の母になるつもりはありませんが私に対して欲望を抱かないことで私の自尊心は傷付きません。だから貴方を抱き締めてあげたいのです。」


 私はCOOの座るソファに歩み寄り、項垂れ泣きそうになっている身体をそっと抱き締める。


 30分いや1時間もそうやっていただろうか。ゆっくりとしたリズムで寝息が聞こえてくるようになったところで身体を離そうとしたが意外とガッチリと抱きつかれていた。


 それでも相手を起こさないように慎重に慎重に身体を離した。


 これって浮気よね。キヒロも母性を刺激するタイプ。でも母なのだ。子供が1人居ても2人居てもいいじゃないか。

過去から現代まで世界中で腰に布の巻く服は多く男女を問わず着用されています。

何故ここまで『スカート=女』となってしまったのか。不思議ですね。


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