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腐男子御曹司の彼  作者: 一条由吏
第6章 ハラスメント
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1.腐女子は性転換できない

「じゃあ頼むな。」


「待って。なんで私がやるのよ?」


 いつのまにか私が『ハラスメントの社内規定』を作ることになったらしい。


「義母を訴えた梓ならそっち方面に詳しいだろ。」


「詳しいといえば詳しいけど、主にLGBT方面だよ。」


「それでいいんだ。LGBTも含めて、それぞれの立場で最低限のハラスメント規定にして欲しいとのご要望だ。」


 どうも社長さんが私のことを名指ししてきたらしい。キヒロじゃあ、知り合いも多いから第3者的立場に立てないと思われているらしい。腐女子としては圧倒的にLGBTを擁護する立場なのに後悔しても知らないから。


「私の報酬は? あの社長のことだから、何の報酬も出さずに依頼するはずが無いよね。」


 お金持ちだから。というよりは従業員愛に満ち溢れてて、これまで自分だけが我慢すればいいと思って諦めてきたことは想像できる。


 でも会社が大きくなってきて労働基準監督署からのツッコミで作らざるを得なくなったに違いない。お役所だから社内事情に関係無く規定が有るか無いかだけで判断するからね。


 従業員の意に反するものを作るのに最善のものを作ろうと思ったのだろう。社長としてはお金を掛けるしかできない。これが報酬がゼロじゃないと思った理由だ。社長をやるのも大変ね。


「良くわかったな。経費は別で成功報酬は1億円だ。」


「成功報酬って。社内から異論が出たら失敗ということ?」


 それって失敗する前提じゃん。


「もちろんだ。半年後に意見を募り、反対が5割を超えれば見直しになるそうだ。そのときにはアドバイザーとして参加する際の報酬があるから、失敗しても報酬が入ることになるな。」


「つまり敲き台をを作れってことね。」


「違うな。完璧を目指せ。あの社長が無理矢理作成した規定に対して、従業員たちが本気で反対するはずが無い。社長の従業員愛ばかり目に付くけど、従業員の社長愛もハンパじゃないんだ。あの会社は。」


「キヒロもあの人を愛していたの?」


「やっぱり、そう返すか。そうだな。あらゆる意味で愛していた。それは父性愛だったり、師弟愛だったり、性愛だったり。あの人は完全にノンケだから。何故、俺は男なんだと悩んだときもあったな。」


 キヒロの本気の顔に何も言えなくなった。


「………。」


「なんだ。ツッコまないのか? あの人が壊れそうになる度、無理矢理自分のモノにしてしまおうと何度思ったことか。…好きだろ。こういう話。なんで…ツッコまないんだよ。」


 ツッコめなかった。ポロポロと涙を流しながら語るキヒロを見て誰がツッコめると言うのだろう。


「……それ性同一性障害だよ。」


 結局、腐女子としての(さが)が顔をもたげる。


「ソコにツッコむのかよ。そうだな。2割くらいそうなんじゃないかと思うときがあるよ。」


「2割って。3割にいくとどうなるの?」


 良かった。キヒロの顔色が良くなっていく。ツッコんで欲しかったらしい。


「そうだな。自分の男としての性衝動に嫌悪感を持つんじゃないかな。3割を越えると女装するようになる。オカマバーの人たちは4割から6割。6割を超えると『オカマ』って呼ばれるのに耐えられないだろうな。8割以上は居ない。」


 面白い持論だけど最後の一言が良くない。


「居ないってまさか・・・。」


「自分の心が女性だと自覚した途端、自分の外見に耐えられないだろうな。運良くお金持ちで運良く理解している親兄弟で運良く理解している友人たちに恵まれれば・・・。無理か相談しなければ、誰にも解らない。」


 そんな運の良さなんて何億分の1。医者に相談しても真面目に受け取って貰えるとは限らないのだ。


「運良く理解している医者に当たって、運良くホルモン注射で問題が出なくて、運良く誰にも知られずに手術して戸籍変更して知らない土地で暮らしたとしても、昔の自分を知っている誰かに出会ったら終わりよね。」


 ツカサさんに聞いた話だとホルモン注射で多少の体調不良なら良いほうで幻覚・幻聴など精神的な病に陥る人も多い。それを1年続けてやっと身体にメスを入れられるようになるらしい。


 気軽に性転換のことを言うけど、受ける人たちはその恐怖に打ち勝った勇者なのだ。聞いたときに凄い人たちだと思ったもの。

取材を敢行したところLGBTはコミュニティーが全く相容れない

レズビアン、ゲイセクシャル、バイセクシャル、トランスを無理矢理纏められているそうです。


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