3.腐女子はご飯何杯でもイケます
「あらあら、知り合いだったの。もちろん内緒にしてあげてね。」
バーのママさんの言葉に頷く。
こんなことキヒロにも言えやしないよ。
もちろん私1人の楽しみね。
「総一郎さん。キヒロにも言ってはダメだからね。」
「……あっああ。もちろん。」
総一郎さんは未だに信じられない様子で落ち着きが無い。
「由広さんは、ここでは何って呼ばれているの?」
それに引き換え、普段の店長とはうって変わってドッシリとバーのカウンターに座って、物珍しそうに私や総一郎さんを眺めている姿があった。
「ヨシコ。ヨシコよ。ママ、私ジンジャエールね。」
いつもより2オクターブくらい高い声。
「はいよ。」
いつも頼んでいる飲み物なのだろう間一髪入れずに出てくる。
「はい。じゃあ、乾杯ね。僕の大切な友人に乾杯。」
テーブルに出ていた飲み物のグラスを合わせて音を鳴らす。
「総一郎さんに聞いていい?」
「はい。何でも。」
「はじめは自意識過剰かなと思っていたんだけど、僕のこと好きだよね。どうして手を出してこないの?」
総一郎さんの思いはお見通しだったらしい。なんていう間抜け。
「そ、それは…。」
「総一郎さんは本気だからです。そうよね。」
驚きなのか、本気だからこそ、上手く言葉にできないのか言い澱む総一郎さんの代弁をおこなう。
「はい。あの…。」
「生涯のパートナーとして欲しいんだそうです。」
それでも言い澱む彼を見ているとイライラしてくる。
「なに。自分で言えないの?」
それはヨシコさんも同様だったらしく、少しキツイ口調で問い詰める。
「俺の生涯のパートナーになってください。」
「良くできました。梓さんも、アシストありがとうね。僕にもこんな素敵な彼氏が出来るなんて、思わなかったわ。僕には嫁も娘も居るけど愛し合えるのは男性だけなの。こんな僕でよかったら、総一郎さんのパートナーにしてください。」
ヨシコさんは、総一郎さんの両手を掴むと真正面に見て宣言した。
株主総会が2週間後に迫ったある日、キヒロは鞄に書類を詰め込んで出かける用意をしていた。
「何処に行くの?」
「梓も来るか? 融資の申し込みに行くつもりなんだが。」
「へえ。銀行?」
「まあな。銀行をグループの傘下に持つ経営者かな。」
大口融資のお願いに行くのなら渚佑子さんのところの社長だとばかり思っていたのだけど違うらしい。
「そんな人のところへ私を連れて行っていいの?」
「もちろんだよ。梓に対するご褒美の一環だからね。」
「ということは、相手はゲイ? キヒロの憧れの人?」
「そうだ、俺の恩人でもある。ZiphoneのCOOの大川賢次さんだ。」
凄い大物の名前が出てきた。Ziphoneと言えば、おさわがせセレブのゴンCEOが有名だが、最近Ziphoneのプレゼンで司会役で登場するガチムチ体形の男性が気になって調べたことがあったのだ。
この男性、姓は違うがゴンCEOの息子らしく。事あるごとに仲良く写真に写っている姿を良く目にした。
「大川さんがキヒロの恩人なの?」
「そうだ。ゲイバーでの人手集めは、元々彼が考えていた手法で、俺はそれに便乗しただけさ。」
「それで僕のところへ来たのか。鬼束家具の株式の30%を買い取りね。」
「賢次さん。以前、言いましたよね。嫁が出来たら連れてこいって。そうしたら、幾らでも融資してやるって。」
「言ったね。それが今というわけか。だが1文抜けているぞ。嫁の目の前で抱かれたら……だろ。」
うわっ。鬼畜だ。この人。でも、嫌いじゃないっ。
「だから、抱かれに来ました。」
「……おまえ、正気か?」
涼しげだった顔が鳩が豆鉄砲を食らった顔に変わった。
「もちろんですよ。」
「梓さんも了承しているのか?」
大川さんはキヒロの目を見て、本気だと悟ったのだろう。話をこちらに振ってくる。
「もちろんですよ。」
私の回答はこの一択しか、ありえない。
大川さんは、まるで奇怪なものを見るような顔に変わった。自分で出した条件のクセに随分な視線だなあ。
まるで理想のカップルよね。
キヒロは長身のイケメンだし、大川さんはガチムチ。彼らが愛し合う姿が見られるのなら、ご飯何杯でもいけるぞ。
流石にこのシチュエーションは萌えます(笑)
だけど自分の身に降りかかってきたとしたら主人公みたいにスッパリキッパリと
言い切れるか? 無理かも。まだまだだな私も(笑)
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