プロローグ
お読み頂きましてありがとうございます。
■登場人物
(おにつかあずさ)
鬼束梓 20歳(通称栗本)
鬼束スタッフ社員。BL創作女子。デザイン系の専門学校卒業。
将来の夢は好きなカップリングが愛し合っているところを覗くことというリアル腐女子。
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(おにつかゆきひろ)
鬼束幸広 30歳
鬼束家具副社長。主人公の夫。有名私立大学卒業。
自己資金で始めた派遣会社鬼束スタッフが急成長し、その腕を買われ父親の会社の
鬼束家具副社長に就任。業界トップの急成長を成し遂げる。
BLコン大賞受賞した人気漫画家キヒロとして有名になったが
列島書房の編集部に性的差別を受け断筆。
今は読者の夢を壊さないように同人作家を続ける隠れ腐男子。
(さとうゆうこ)
佐藤裕子 30歳(旧姓鈴木)
鬼束スタッフキャリアカウンセラー。有名私立大学卒業。
受付兼キャリアカウンセラーとして活躍する彼女だが、
臨時スタッフとして鬼束家具の現場でも働いている。
BL2次オタクの彼女は同人作家キヒロの窓口として
多くのサークルに顔がきく。
(さとうただし)
佐藤正志 30歳
鬼束スタッフ総務部長。有名私立大学卒業。
部長と名ばかりの何でも屋。
鬼束スタッフの業務を全て取り仕切っている。
佐藤裕子の夫。ノンケの彼だが妻に洗脳されている。
(おじまそういちろう)
小島総一郎 30歳
鬼束スタッフ社員。帝都大学経済学部卒業。
前職で好きになった男と関係を持ち解雇された。
(おじまそうじろう)
小島総二郎 30歳(通称聡子)
鬼束スタッフセールスマネージャー。有名私立大学卒業。
その美貌で他社より先んじて仕事を奪い取ってくる。
日常生活では1度も男だとバレたことは無いのが自慢。
兄のために会社を設立してくれたキヒロを尊敬している。
(ほうじょうつかさ)
方城ツカサ 23歳
鬼束スタッフ社員。有名私立高校卒業。
1年社会人を経験したあとニューハーフのボーイとして勤務。
20歳の誕生日からニューハーフのスタッフとしてショーに出演。
21歳のときに念願の豊胸手術を行なう。
22歳のときに性転換手術を行なう。
23歳に鬼束スタッフに転職し、昼間の仕事に就く。
(おにつかよしひろ)
鬼束由広 32歳
鬼束家具本店店長。帝都大学文学部卒業。
大学卒業後店長・取締役・専務と昇進。
28歳のとき社長になるが2期連続赤字を出して店長兼平取締役に降格。
(おにつかかずひろ)
鬼束千広 58歳
鬼束家具社長。帝都大学法学部卒業。
大学卒業直後父親の急死で社長となる。
鬼束家具をバブル期に急成長させ東証2部に上場させる。
(おにつかゆり)
鬼束ゆり 28歳(旧姓一条)
鬼束由広の妻。有名私立大学卒業。
鬼束家具のメインバンクの系列銀行の頭取の次女。
大学時代に婚約、卒業と同時に結婚。小1の娘の母親。
(おにつかれいこ)
鬼束玲子 60歳
鬼束家具常務。鬼束由広の母。学究院短大卒業。
鬼束家具のメインバンクの創業家当主の姉。
「お義父さまが?」
実はまだご挨拶が済んでいない。別に急ぐことは無いと言われるままに過ごしてきたのだが、流石に結婚したことを伝えて欲しいと思っていたら、とんでもないニュースが飛び込んできた。
「ああ。入院した。軽い脳梗塞らしい。」
「大丈夫なの?」
「見舞いに行ったら、ピンピンしていた。でも当分、投薬治療になるみたいだ。」
お見舞いも一緒に連れて行ってくれたらいいのに。でも良かった。そのときに結婚したことを伝えてくれたらしい。退院したら、お会いすることになった。大事を取って1ヶ月くらい先になるみたい。
「会社はどうするの?」
代表取締役社長が長期入院じゃ、イロイロ滞りそう。
「今のところ順調だから、特に指示を仰ぐこともないかな。兄貴と相談しながら進めていくよ。」
会社の代表取締役でもあるキヒロが仕切ることになるみたい。
「来週の全社集会は?」
来週の金曜日に全社集会が行なわれる。先期の業績が固まり、貢献した従業員に社長賞や特別賞与が渡されるという。
「とりあえず、常務取締役の本妻さんに代行してもらうさ。社長賞はきっちり出しておかないと社員のモチベーションが落ちるからな。」
「そうよね。販売員グループの3組に海外旅行だよね。今年こそカップルが出るといいね。」
社長賞として、男性販売員と女性販売員と配送担当の3人に対して、1週間の休暇と共に海外旅行が贈られる。去年は女性販売員の裏切りによって男女販売員でカップルが誕生してしまったが、本来は女性販売員に振られた男性同士が親しくするチャンスなのだ。
これまでに4組のゲイカップルが生まれているという。
☆
全社集会では、社長に代わって本妻さんが挨拶をした。このあと社長賞の発表があり、各支店の店長から来期の目標が掲げられ、最後に副社長であるキヒロが挨拶する。
「本日は病気療養中の社長に代わり常務取締役より、お言葉を頂戴致しました。ありがとうございました。続きまして、社長賞の発表です。表彰は、続きまして常務取締役鬼束玲子さま。よろしくお願いします。」
壇上に本妻さんがスタンバイした。その後ろのスクリーンには全国13箇所の支店の販売員たちが今か今かと発表を待っている。
「というわけで、今年の社長賞は管理部から3名、本店から3名、大阪支店から3名を選ばさせて頂きました。おめでとうございました。」
えっ。
事前にキヒロからトップセールスの3組と違う人々が選ばれた。思いがけない発表にその場に居る販売員のみならず、スクリーンに映る全国の支店の店長たちの顔にも動揺が浮かんでいる。
「ここで重大発表があります。来期から現代表取締役社長である鬼束千広が代表権の無い会長に退き、常務取締役鬼束玲子が代表取締役社長に取締役鬼束由広が副社長、そして代表取締役副社長鬼束幸広が退任されることになります。」
「ちょっと待った!」
キヒロも寝耳に水らしく。壇上の司会者のマイクを奪い取る。
「誰が書いた筋書きかしらないが、誰がどんな権限でそんなことを決めたんだ。」
「私が臨時取締役会を開催して決めました。既に来月開かれる株主総会の議案として提出済みです。」
本妻さんが別のマイクで応酬する。
「委任状争奪戦をしようというわけか。このことは親父は知っているのか?」
「ええ、もちろんよ。社長を退くと言ったのはあの人だもの。」
「なるほど、それを自分の都合のいいように解釈したわけか。いいだろう、どちらが従業員たちを幸せにできるか示してやるよ。」
「そうね。鬼束スタッフの従業員たちに告知します。鬼束家具では今の1割増し以上の月給で迎え入れる用意があることを伝えておきます。では、解散。」
☆
「勝算はあるの?」
自宅に戻ってきたキヒロに聞いてみる。
「何の勝算だ?」
「何って、本妻さんたちに追い出されない勝算。」
「無いな。俺が親父から譲ってもらった30%の株式に対して、本妻が25%、兄貴が5%だから同等なんだが、向こうのバックには銀行がついているから、それだけで合計40%はいくかな。」
「じゃあ、なんで受けて立つみたいなことを?」
「ああ言っておかないと、うちの従業員たちが動揺するだろ。従業員が一番大事だからな。それに家具販売というノウハウは十分に蓄積されているから、そのうち独立しようと思っていたんだ。それがちょっと早まっただけだな。」
「でも従業員を取られたら困るんじゃないの?」
「取られないさ。ゲイと腐女子だけで5割以上居るし、鬼束家具の元従業員もいまさらリストラされた所に戻りたいとも思わないなんじゃないかな。残りの3割の半分を説得できれば十分さ。会社があっても従業員が居なければなんともならないからな。」
「あれって、本妻さんだよね。」
テレビの画面のテロップには「鬼束玲子」の名前が出ており、副社長解任や鬼束家具お家騒動などの文字が躍っていた。
「委任状争奪戦の準備は万全だったみたいだな。」
事前に記者会見の準備をしていたらしい。
記者たちからは、当然といえば当然ながら、副社長の解任理由の質問が飛んでいた。上場廃止の危機を救ったキヒロに好意的な記者たちは多いみたい。どうやら、キヒロが愛人の子供であることも知っているようである。
「鬼束幸広氏は後継者として相応しくないからです。」
本妻さんによって、その理由があげられていく。
『ガラスヤ』に出入りしていることから、キヒロはホモで後継者として不適格だというのが、その理由らしい。
なんて安易な。
ニューハーフのショーパブに出入りしているだけでゲイだとしたら、世の中ゲイだらけだよね。でも、一般人ってそれが普通なのか記者たちは、その理由で納得しているようだった。
「妻の鬼束梓さんは元男の性転換者なんです。」
なんかツカサさんと間違えられたみたい。
貴女ならゲイカップル成立させるために、どうやってお膳立てします?
私なら旅行当日から別行動を装い、こっそり覗くかな(笑)
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