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腐男子御曹司の彼  作者: 一条由吏
第4章 鬼束家の人々
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3.腐女子はやりかえさない

 パシっ


 その日は意外な光景を目にした。由広店長が小さい子供を叩いていた。


「ここで走り回ってはイカン。解ったか?」


 そう言い聞かせているが相手は小さい子供。そのまま泣き出してすぐ近くに居た母親に泣きつく。


「ゆり。ここに子供を連れてきてはダメだと言っただろう。」


 どうやら店長に知り合いらしい。


「別にいいじゃない。こんなに広いんだし、今は客も居ないんだから。」


「すみません。お客様。ここには子供にとって危険なものも沢山ございますので、子供のお手を離さずにお願い致します。」


 この女性はフリーで入ってきたのか誰もついていない。当然、こういったマニュアルに書いてあることも聞いてない可能性が高い。


 万が一のことがあったとき、お客様に伝えていないと店が責任を取らされる可能性があるので嫌がられてもハッキリと言っておく必要がある。


「貴女。私を知らないなんて新人なのね。私は、そこに居る店長の妻よ。」


 物凄く偉そう。『私は副社長の妻です。』と言ったらどんな態度を示すだろうか。言って見たいけど、全てぶち壊すわけにいかないのでジッと我慢する。


「ほら向こうのほうで遊んでらっしゃい。」


 子供はそのまま走っていく。我が物顔だ。それでも遠くには行けないのか、近くのベッドに飛び乗る。


「ダメっ!!」


 私は慌てて追いかけて子供を抱き下ろす。


「聞こえなかったの貴女。クビになりたいわけ?」


「できるものなら、どうぞ。私は鬼束スタッフの社員の栗本梓です。」


 ここまできたら、売り言葉に買い言葉だ。


「へえ。度胸があるのね。もしかして出来ないと思っている?」


「ええできませんね。貴女がこの鬼束家具のオーナーだろうと、別会社の鬼束スタッフの社員の人事権は持っていないはずです。」


「ちっ。忌々しい。なんて社員なの。私に逆らってタダで済むと思っているの? 少なくともこの本店からは出て行ってください。」


「それはさせない! ゆり。お前が間違っている。出て行くなら、お前が出て行け!」


 横から由広店長が口を挟む。いいのだろうか。別に夫婦喧嘩をさせたいわけじゃなかったのだけど。


「わかったわよ。私が出て行けばいいのね。あれっ、(まどか)は何処?」


 ちょっと目を離した隙に逃げられてしまった。


 どこだ。どこ……あっ居た!


 あんなところを走っている。あの辺りはオブジェが沢山あって特に危ないのだ。


 全速力で走って捕まえようとした。そのとき、子供がオブジェが載った台座にぶつかったので、私は子供を庇うように飛びつく。


 うっ。


 オブジェは私のお尻を直撃してから、落ちて割れた音がした気がする。















「大丈夫か?」


 目を覚ますと病院だった。傍らにはキヒロと総一郎さんの心配そうな顔があった。あのまま、気絶してしまったみたい。


「そうだ。円ちゃんは? 円ちゃんは無事?」


「大丈夫無事よ。あの子は貴女が庇ってくれたから頭をぶつけなかったようなの。でも割れたオブジェが足に突き刺さって。今、治療中なの。」


 声のするほうを向くと由広店長夫妻が並んで立っていた。


「ありがとう。なんとお礼を言っていいか。」


 店長が頭を下げてくれる。


「いいえ。当然のことをしただけですから、小さい子供から目を離さないのも私たち女性販売員の仕事。慌てさせてしまって申し訳ありませんでした。」


 売り言葉につい買い言葉を発したがために子どもに大怪我をさせてしまったら本末転倒である。何のためにダメだと言ったのか解らなくなってしまう。


「すみませんが、円ちゃんのご両親はいらっしゃいますか? 当病院では、O型の血液が不足していまして、ご両親のどちらかから血液を分けて頂けないでしょうか。」


 そこに医者が駆け込んでくる。


「ごめんなさい。私、B型だから無理なんです。」


「じゃあ、お父さんは?」


「私もAB型なんで無理です。」


 えっ。・・・そんな。


 子供がO型なのに父親がAB型なんて何かの間違いじゃ。


 いやいや。そんなことを気にしている場合じゃない。


「私、O型です。頭をぶつけたわけじゃないので、大丈夫です。協力させてください。……痛っぅ……。」


 お尻が痛い。ベッドに腰掛けるように体勢を変えたら、この痛みが襲ってきた。きっと青痣になっている。


「キヒロ。ちょっと処置室まで、抱いていってくれるかな。お尻が痛いみたい。」


 たまには、甘えてみてもいいよね。


「栗本さんっていったい……。」


 キヒロがそうっと抱え上げると、ゆりさんが驚いた顔を向ける。


「栗本さんは弟の婚約者なんだよ。」


 キヒロと顔を見合わせると頷いてくれる。


「本当はキヒロの妻よ。大丈夫よ。由広店長をクビにしてなんて言わないから、でも当分黙っていてくれると嬉しいな。」


 ゆりさんは、ポカンと口を開けてキヒロを見つめる。


「本当だよ。ゆり。俺は結婚したんだ。」


 ゆり……って呼び捨て?


 疑問に感じるも、そのまま病室から運び出されていく。もちろん、子供のほうが優先なのはわかっているけど、気になってしかたがないじゃない。

私は仕返しなんかしたくないです。

言い返すのが精一杯かな(笑)


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