4.腐女子は日常に萌えを持ち込む
「あ、いや、そのなんだ……。すまん。親父の反応を見たかったんだ。」
「お義父様の反応?」
「ああ、俺は愛人の子供なんだ。母は鬼束家具本店の販売員で俺の大学卒業を目前に亡くなった。」
当時を思い出したのか寂しそうな表情をする。胸はキュウンとする。私はこの顔に弱いみたい。
「そう。」
だから自力で派遣会社を立ち上げたのか。
「父とは母の葬式で初めてあった。そのときまで向こうは俺の存在を知らなかったらしい。密かに援助の申し出をされたが、当時多額の印税を手にしていた俺は父の手を振り払ったんだ。」
当時BL漫画としては異例といわれた累計50万部も売れた。税金を差し引いたとしても、会社を立ち上げるだけの資金を手にしていたのね。
「なのに父は頭を下げて頼みにきたんだ。当時本妻の息子、つまり兄が社長で親父が会長として第一線から退いていたんだが、2期連続の赤字が確実で東京証券市場の上場廃止の危機だったんだ。」
「そこへキヒロが副社長として抜擢されただけで上場維持できるの?」
「鋭いな梓。小手先の手段なんだがあったんだよ。リストラを敢行する資金もなかったから、社長以下管理職を軒並み降格・減給して、一般社員の販売員を俺の会社で安い給料で雇い入れたんだよ。」
「従業員の抵抗は無かったの?」
「あったが労働組合もリストラで首を切られるよりもマシということで受け入れてくれたよ。末締めで翌々月の月末払いだからその年だけ2ヶ月分給料を払わなくてよくなってギリギリ黒字化ができたんだ。」
「なるほど。企業で発生する費用の大半は人件費というよね。凄いね。キヒロ天才じゃない。」
「煽てるなよ。実を言うと考え出したのは社長なんだ。俺は細部を詰めただけ。」
「渚佑子さんのところの社長だよね。あのひと凄いね。ここ数年で数千億円の資産を築くは、それとは別にあの携帯電話会社Ziphoneの後継者だし。ここだけの話、あのひとってバイセクシャルなの?」
調べてみると冷酷な乗っ取り屋だの男女に関係なく身体を使って人間を誑し込むだの。悪意のオンパレードだった。
もちろん、気になったのはバイセクシャルかどうかだったけど・・・・・・。
「違う。完全なノンケだ。男女の関係なく好意を持ってしまうのは確かだから、傍で見ている分には妄想し放題で楽しかったぞ。」
妄想していたころを思い出したのか。口角がニマニマと上がってキモい。
「わぁ。いいな。」
ただ残念なのは、彼の身長が低いことと童顔なことだ。亡くなった親友なら、ショタ受のド・ストライクなんだけど。
「とにかく、費用と名の付くものは全て俺の会社が肩代わりしていったんだ。仕入れも代行してるし、ネット通販もそうだ。さらに資金を借りて全国に10店舗を構えることで大量に人材を登用してひとり頭の管理費を削減していったんだ。」
「そんなふうに立て直したんだ。」
「それなのに優秀な販売員を鬼束家具で雇い入れたり、俺にメインバンクに関わりのある女性を結婚相手として送り込んできたりと密かに本妻や兄が画策しているようなんだ。婚約したと噂をばらまけば、何らかのアクションをしてくるだろうと思ったんだ。」
「そういう理由なら仕方が無いね。……というとでも思った? 配偶者である私に一言も相談無いことが許しがたい。それに嘘をついたことには変わりない。慰謝料を要求する。」
「ああ何でも言ってくれ。」
「ツカサさんを愛人にすること。そして高層マンションに3人で住むこと。」
「梓。お前、日常に妄想という名前の萌えを求めるつもりだな。」
「どうして!」
ツカサさんが訳が分からないとばかりに叫ぶ。
「ツカサさんはユキヒロじゃなきゃイヤなんでしょ。見えないところでコソコソ隠れずに、堂々と見えるところでやって頂戴。いえ是非見せて!」
「梓は、おコゲなんだ。男と男が愛し合っているところが見たいのさ。」
「そうよ。愛し合っている最中に男声で愛を囁けば完璧よ。」
ショーパブのお姉さん方も時々男声を挟んで笑いを取っていた。できないとは言わせないけどね。
男が語っているのに萌えを要求する腐女子(笑)
貴女なら何を要求しますか?
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