表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐男子御曹司の彼  作者: 一条由吏
第3章 偽装結婚
18/40

1.腐女子はとても忙しい

「ここが新居だ。ここからなら、通いやすいだろ。」


 ここは地下に鬼束家具の店舗が入っている高層マンションの11階。


 店舗の営業時間が閉店時間になり店長であるキヒロ先生が閉店処理が完了するのを待っていたところバックヤードのエレベーターで連れて来られた。


「ここ買ったんですか?」


 11階から20階まではこのマンションの所有者である会社社長の持ち物だった。


 『中田』さんの話では知り合いには売ってくれると聞いていたが1部屋2億円以上の値段がついていた。


「いや、貸してくれるんだよ。従業員や元従業員にはね。しかも、従業員には半額補助がされる。俺は辞めたから全額払っているよ。」


 キヒロ先生は元従業員らしい。


「へえ。でも高いんですよね。」


「それほどでも無いな。20万円くらい。『中田』さんところの半分の広さだけど、100平米以上あるから、家族で住んでも十分な広さだよ。」


 ひ、ひろい。


 首都圏のファミリー向け賃貸マンションの広さはだいたい60平米くらいだから、倍近くある計算。


 しかも安い。都心のファミリー向けの新築賃貸マンション程度。


 千葉県にあるといっても山の手線まで30分圏内で駅近物件の高層マンションの賃借料とは思えない。


 大企業にお勤めの係長以上クラスの人間にしか払えそうに無い金額だけど。


「普通の賃貸と違って分譲の物件だから、壁も分厚いぞ。ここなら、思う存分キスの練習ができるぞ。」


 そう言って、キスをしようと迫ってくる。


「でも、人前でいままでキスを披露したことは無いですよね。本当に練習が必要なんでしょうか?」


「も、もちろんだとも。」


「もしかして、下手だと言ったので意地になってません?」


 私は同人サークルの相方が実践派だったこともあり、彼女とありとあらゆるタイプのキスを練習している。リードする側、リードされる側、ベッドで押し倒した状態や押し倒された状態、などなど。


 以前、ホテルで行なった練習でも結局私が終始リードしたのがいけなかったのだろうか。













「なんで、貴女が副社長の婚約者なのよ!」


 これで15人目。誰かが私を婚約者と噂を流しているらしい。


 私が妻だという噂が流れてもいいと思うんだけど。


 そろそろ面倒になってきた。


「違います! 私はユキヒロさんの妻です。これが住民票です。」


 免許証の更新をするために取得しておいた住民票が役に立った。


 これはコピーしたもの。


 用意した原紙2枚のうち1枚はヒステリーを起こした女性に破かれてしまった。


「キー。なによ。こんなもの。こんなもの。」


 またしても、破かれてしまった。


 これで住民票のコピーを破いたのは10人目。


 破いた彼女は泣きながら逃げていってしまった。


 全くなんで皆、同じ行動を取るんだろう。


 1人目や2人目は少し心が痛んだけど、ここまで多ければ馴れたのか。冷たい視線を投げてしまう。













「お疲れ様。」


 受付に戻ってくると裕子さんが労ってくれる。


 今日は鬼束家具の現場での勤務が無い日なので派遣会社の受付に座っている。


 また電話が掛かってきた。


 基本、電話を受けるのは裕子さんの役割。派遣先の情報は全て彼女の頭の中にインプットされているので私が取る事は無い。


 来客を案内するのが私の役割。


 だけど今日の来客って私に会いにくる女性ばかり。


「今日は電話が多いですね。」


 前に受付に座ったときは、1日1本だったのに今日はもう20本以上ある。


「何を言ってるのよ。『御社の栗本梓さんはどこにいらっしゃるのですか?』という質問ばかりよ。」


「それでどう答えているんですか?」


 まさか。


「もちろん『今日は受付に座っております。』と答えているわよ。」


 まさかのまさかである。


「何故ですか? 『当社には栗本梓という人間はいません。』とか『栗本は結婚して鬼束になりました。』じゃないんですか?」


 うわっ。いつのまにか裕子さんの策略にハマっていた。


「それは貴女の仕事でしょ。モテる男と結婚した女の特権なのよ。誰もができる仕事じゃないわ。」


 開き直られてしまった。特権とかいらないです。


「ということは、あと5人は相手しなくてはならないんですね。」


「違うわ。昨日は30人くらいから電話があったし、一昨日は20人くらいあったから、55人くらいは来るんじゃないかな。」

モテる男と結婚した女の特権を行使したことは無いです。

婚約したと噂の男の相手を調べようとするなんて

そんな女性はいるんでしょうかね。

キスでリードもできないヘタレなのに(笑)


ブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ