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腐男子御曹司の彼  作者: 一条由吏
第2章 現場にて
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4.腐女子は疑問に思わない

「とにかく、このままじゃあダメね。私の家で休ませましょう。いいわね!」


 余程、出血量が多かったのか。上手く立ち上がれない。この場を完全に掌握しているのは『西九条』さん。誰にも文句を言わせない積もりらしい。


「従業員の控え室がありますから。」


 この近くに住んでいるのだろうか。こんな鼻血で汚れた格好でタクシーに乗りたくない。救急車なんてもってのほか。さっきまで、病院に連れて行こうとされていたのよね。


「ダメよ。そんなところじゃ。ゆっくり休めないでしょ。ほら、エレベーターに乗るだけだから。店長さん、彼女を運んで。」


 テキパキと指示を出す。頼りになるお姉さまだ。


「エレベーター?」


「『西九条』さんたちは、この上の分譲マンションに住んでいらっしゃるんだ。」


 キヒロ先生は立ち上がりながら言う。よたよたと生まれたての子馬の足取りみたいで笑える。


「あのう。僕は・・・。」


 『中田』さんは長い時間、正座させられていたのか泣きが入っている。ちょっと可哀想ね。


「イジるのは番組だけにしてといつも言っているでしょ。戻ってくるまで、そこで反省してなさい。」


 『西九条』さんは許せないらしい。


「あのぅ。そこに居て貰っては営業の邪魔なので・・・。」


こんなところで芸能人が正座させられてるのが見つかったら、パニックになる。


「優しいわね。ま、仕方無いか。あきえちゃんが無理しないように見張ってて。でも過保護はダメよ。」


 私の意図を汲み取った『西九条』さんが表情を緩ませ言った。


 キヒロ先生が軽々と私の身体を持ち上げてくれる。お姫様抱っこ。嬉しいけど恥ずかしい。先生と目があわせられなくて両手で顔を覆う。まあ、指の隙間から覗いているんだけどね。


「大丈夫か? 揺れるのが嫌だったら、首に抱きついていろ。」


 言われた通りにすると身体が密着する。これって抱き合っているよね。先生も私の腰と膝下に入れられた腕でしっかりと引き寄せてくれる。


 意外と逞しい胸。ドキドキ言っている私の心臓の音が聞こえてしまわないだろうか。


「あれっ。こっちは業務用のエレベーターですよね。」


「ええ。11階から20階まではこのマンションを建てた持ち主が確保している分で私たちは18階に住んでいるのよ。」


「なるほど。だから大型のエレベーターの他に2機もエレベーターが設置されているんですね。」


「違うわ。地下にはこの店舗の他に住民専用の駐車場があってここ以外の端に2機ずつ合計8機のエレベーターがあるのよ。全部で11機かな。」


「どうしてそんなに?」


「さあ。ここのショッピングモールと同じ5角形なのよ。だからじゃないかな。」


 『西九条』さんがエレベーターホールの手前でインターフォンのボタンを押す。


「あっ渚佑子(しょうこ)さん。後でクリーニングを取りに来てくれるかな。超・超特急便でお願い。」


 ここに管理人室はあるのは知っていたがお会いしたことは無かったが声を聞くかぎり若い女性みたいね。


「栗本先輩は同じ中学の大賢(たいけん)渚佑子さんを覚えてらっしゃいますよね。その方がここの管理人をされているんですよ。」


 横から後輩が口を挟む。


「えっえええっ、中学3年生のときに失踪した? もちろんよ。中学2年のとき、隣の席だったもの。あのときは驚いたのなんのって。あの渚佑子さんなの?」


「えっ栗本って、渚佑子様の知り合いなのか?」


 渚佑子様?


 なんで様付け?


「ええ。キヒロ先生の段筆宣言の後、随分成績を落としてしまって彼女委員長だったから補習とか付き合ってもらったの。だから大事な友人だったのよ。でも高校受験のとき、失踪してしまって戻ってきているのは知っていたんだけど、それっきり。」


 合いの手を入れていた先生の声が小さくなっていく。どういうことなんだろう。


 管理人室から、渚佑子が現われた。あれっ。余り変わっていない。中学生のときの身長のままみたい。


「『西九条』さんの近くだから、あきえちゃんは居ると思ったけど、栗本さんまでどうして?」


 後輩は『西九条』さんにベッタリらしい。


「私は鬼束家具の臨時スタッフなのよろしくね。」


「こちらこそよろしくね。ユキヒロさん? スタッフを変更するときは書類を提出してくださいと何度も申し上げていますよね。どうして守れないんですか?」


「はい。申し訳ありません。直ぐに提出させて頂きます。」


 先生は何度も怒られているらしい。渚佑子さんって物言いがキツイからね。本当は優しい人なんだけど良く誤解されるのよね。


「今日は、この個人認識タグ内蔵の指環しか無いわ。だから、ユキヒロさんが付けてあげて。何故かは知っているよね。」


 えっ。指環?


 しかも、先生が私に付けるの?


「はい。個人認識情報に連結のためですよね。俺のブレスレットとペアリングする。」


 そう言ってブレスレットを見せてくれる。


「そうです。栗本さん。右手の薬指に付けても大丈夫? 嫌なら後日ブレスレットをお渡しするわ。ピアスもあるんだけど、ピアス穴が開いていないものね。」


「大丈夫よ。誤解するような恋人も居ないわ。」


 言っていてへこむ。恋人を作る暇が無かったというよりは、男性を妄想の対象としか見れないのが敗因なのよね。


「よかった。鬼束家具のスタッフは異様にピアス率が高いのよね。他のテナントはブレスレットが多いのに。指環が一番余っちゃって。」


 なるほど。公然とピアスを付けられるならば、ゲイのスタッフは付けるよね。

耳にピアスをしている男性はあまり見たことがありません。

鼻にピアス、ホッペにピアスをしている男性は多いけど、あれはゲイじゃなさそう。


先日190センチくらいの女子高生(?)を見かけました。

こっちが娘を連れていたので声を掛けれませんでしたが、未だに(楽しい)妄想しています。


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