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腐男子御曹司の彼  作者: 一条由吏
第1章 最終面接
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プロローグ

お読み頂きましてありがとうございます。


■登場人物

 (くりもとあずさ)

    栗本梓 20歳

 BL創作女子。デザイン系の専門学校卒業予定。

 将来の夢は好きなカップリングが愛し合っているところを覗くことというリアル腐女子。

     x

 (おにつかゆきひろ)

    鬼束幸広 30歳

 鬼束家具副社長。有名私立大学卒業。

 自己資金で始めた派遣会社が急成長し、その腕を買われ事業低迷中だった父親の会社の

 鬼束家具副社長に就任。業界トップの急成長を成し遂げる。隠れ腐男子。

 ここは今最も成長が著しい高級家具販売最大手鬼束(おにつか)家具の会議室。


 私はここでイケメン副社長による最終面接を受けている。


 最終面接なのに社長じゃないのには訳がある。


 副社長が経営する派遣会社に登録し、そこから全国各地の店舗に派遣されることになっているらしい。


 派遣会社なので給料は安いがキッチリ定時に終わるのが凄くいい。


 さらに魅力的なのが同僚となる男性社員の約半分がイケメン揃いであること。


 日本中の企業の中で女子大生人気トップ10の常連になっているのも頷ける話よね。


 だが私に取って最も魅力的なのは冬と夏の同人誌即売会の時期に棚卸しがあり、販売員は公休日になっていること。


 そしてイケメンに次いでガチムチの男性社員が多いこと。


 彼らは裏方で家具を運ぶ仕事をしているらしい。


 私の好物であるひょろ長イケメンxガチムチのカップリングが社内に転がっている。


 職場見学のときに見た。彼らが微笑み合う姿や真剣に話し合う姿、そしてアイコンタクトで意思疎通している姿。


 ああっ、・・・なんて理想的な職場なの。


 ガチムチとはそう今副社長の肩に手を置いて話している総務部長のように筋肉質だが僅かに脂肪もついている体形である。


(キャーーーーーっ)


 総務部長が私を横目で見ながら、副社長の耳元に顔を寄せて内緒話をしている。


 何を言っているんだろう?


 耳元で喋られてくすぐったそうにしている副社長の姿になんか思わず妄想してしまいそう。


(今夜可愛がってやるからな……だろうか?)


 気のせいか副社長の肩に触れている手がモゾモゾと動いている。いや私の妄想かっ。


 総務部長が離れていくとともに、心底軽蔑した視線を向ける副社長。これも私の妄想かっ。















「栗本さん! 栗本さん!! 聞いてますか?」


「は、はい!」


 いかんいかん。


 昨日、夏の同人誌即売会の印刷所締め切りに合わせて貫徹で仕上げたから、もうちょっとで妄想に取り込まれるところだった。危なかった。


「スマートフォンは社内持ち込み禁止……おい! 正志(ただし)。ティッシュだ! ティッシュ!!」


 総務部長の名前はタダシさんと仰るらしい。そういえば、昔好きだったBL漫画のカップリングの()めにそんな名前のキャラクターが居た。彼もガチムチ体形で総務部長の薄くなり始めた髪の毛がフサフサしていればソックリかもしれない。


 記憶の中の()めキャラクターと現実の男性を重ね合わせるのは腐女子の宿命ともいうべき(サガ)であり楽しみである。


 確か(さそ)()けの社長にノーマルの男が徐々に落されていくのをドキドキして読んでいた記憶が思い出される。テニス倶楽部で出会った2人が徐々に接近、スカウトされ部長に納まると捕まえたとばかりに肉体関係を迫る鬼畜社長。


 あれは商業誌だったからエロいシーンもグロいシーンも無かった。思えば清かったな。あの頃は。今では18禁しか読まないし描かないものな。


 この総務部長も副社長がスカウトしたのだろうか?


 昔好きだったキャラクタたちを彼らに重ねあわせる。正にピッタリだ。私の妄想の原点とも言えるべき、理想像が目の前にある。


 現実の男性たちに幻滅する腐女子も多いが私は違う。これに萌え無くて何に萌えるというの?

 

 しかし、ティッシュをどうするんだろう。


 疑問に思っているうちに私の目の前にティッシュボックスが差し出される。


「これは?」


 私は差し出されたティッシュボックスから視線を上げるとスマートフォンを構えた副社長の姿があった。へえ、副社長は持ち込めるんだ。


 カシャ。


 電子シャッター音が鳴った。


 えっ。・・・私が撮られたの?


 なんで?


「ほら、これを見なさい!」


 スマートフォンに写っていた私の鼻から僅かに血が顔をのぞかせていたのだった。


 慌ててティッシュを数枚取り、鼻にあてがうが時すでに遅し。


 鼻から血が滴り落ち、机の上に血溜まりを作ってしまった。


 副社長と総務部長の姿に昔好きだったBLキャラクタたちを重ねあわせて妄想を続けていたのがイケなかったらしい。

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