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収納魔法は逃げるための切り札です。

 この2年間でお金も大分貯めた。

 稼ぐといっても出来たことは主に3つ。

 修行だと言われて迷宮に放り込まれた時に得たものを国に売却することと、治癒魔法や薬師としての報酬。

 これ以外には聖女達にシャンプーやリンス、マッサージをして得たものだ。


 他の聖女達がドレスや貴金属などに費やしてるのを見ながら支給品だけで生活した。

 いつか来る逃げ出す日のために街に降りた時にコッソリと買い揃えてきた数々の品々を収納魔法に溜め込みつつ、機会を伺い続けた2年間。


 長かったなぁ…。

 しかもよく溜め込んだなぁ。

 食べ物と化粧品ばかりだけど。

 アウトドアグッズはしばらくは必需品だし…。

 一応、布やレース、糸なんかも商品として用意はしてあるけど自分では縫えないし、どちらかといえば物々交換用として持っていくことにして侍女や聖女達からこっそりと集めていた。

 人間、食べないと生きていけない。

 だから食べ物メインなのは正しいはず。

 だって水は魔法でなんとかなっても他は中々難しい。


 えーと…あと、鍬やスコップもあるね。


 離宮の薬草園の手入れや孤児院で畑を作る時に畑仕事もした。

 種や苗も持っている。

 定住した先で必要になるかもしれないし、何より最悪は山や島に引きこもって生活も視野にいれている。それに、野営の時のトイレは穴掘ってそこにして埋めた方がいいと聞いたので持っていくことにしたのだ。


 剣はどうせ使えないから置いていくとして、投げナイフは沢山用意した。

 基本使い捨てになることが多いけど、これなら片手で投げられるから牽制にも使えるし、いざとなれば狩りも出来る。

 弓じゃないのは…うん、聞かないで。

 適性が全くなかったんです、ハイ。


 定住、一生出来なかったらどうしよう。でも、商人になるのは難しい世界だしなぁ。


 この国というか、この世界には商人ギルドというものがない。

 どうやら色々やり過ぎて職人達のギルドに潰されたらしい。

 その歴史を繰り返さないために国か領主が商売許可証を発行しているが、この商売許可証が簡単には発行されない。

 まずはどこかのギルドに所属して自分で背負子を担いで回る行商人から始めて信用を積み、荷馬車が持てるくらいになってようやく審査が受けられるというような形だ。

 他には商売許可証を持っている商人に雇われて、その商人の推薦で審査を受けることもできるらしい。

 どちらにせよ商売許可証を持つ商人になるのはかなり大変ということだ。

 自分1人で背負える分くらいであればお目こぼしをされている状況だが、それでは商売出来る範囲も狭い。

 国や領を跨ぐような商売をするならやはり商売許可証は必須だ。

 それに街の広場で露店を出すにも基本はどこかのギルドに所属する必要がある。

 どうせ旅をするなら少しはお金も稼ぎたいとなると、やはりどこかのギルドに所属した方がいい。

 今のところ私が入れそうなのは、治癒ギルド、薬師ギルド、お菓子ギルドに料理人ギルドだ。

 残念なことに化粧品ギルドはない。

 化粧品の一部は薬師ギルドの扱いになっている。

 商売許可証は中々とれないのでメイン商品のギルドに属して、街では露店やギルドを通して物の売り買いをするのが一般的だ。


 化粧品ギルドがあれば、よかったんだけど、とりあえずは料理人ギルド辺りに登録して屋台かな?


 収納魔法使いであることを明らかにするなら荷運び出来るけど収納魔法使いに関しての扱いが国毎に違うらしいので、とりあえずは使えないと考えておく。

 それにある程度の能力をこの国に知られていることを考えると薬師と治癒魔法は姿を変えた後、少なくても2つくらい国を離れてからじゃなきゃ使えない。

 お菓子ギルドと料理人ギルド。この2つでどうにかしなきゃ。

 なので、アイテムボックスの中身は食料を多くした。

 それで屋台を出して旅費が稼げたら、と思っていたりする。

 最悪、次の次の国くらいからは収納魔法使いとして商人に雇われることも検討には入れているけれど。


 あとはバスボムがどこの所属なるのかなんだよねー。

 石鹸にはギルドがない。

 バスボムも石鹸のように露店で売る分には大丈夫になるといいんだけど…。

 でもこれも少なくてもこの国を出た次の国で売るのは止めておこう。


 冒険者ギルドが1番簡単に所属出来るけど、私、植物採取以外の依頼は受けられないしなぁ。

 でも、治癒魔法の使い手で治癒ギルドに属さないで冒険者ギルドだけって人もいるにはいるらしい。

 でも、私の場合は迷宮には同行できない。

 魔物が逃げてしまってはなんにもならないからだ。

 地道に植物の採取依頼だけをこなしていくのもありなのかな?


 襲われないのと治癒魔法のおかげなのか薬草類の見分けはつきやすい。

 危険な魔物がいる場所の薬草でも私なら取りに行ける。

 ただ、冒険者ギルドは登録料が安い代わりに国や街への入場税が少しお高め。

 依頼を受けている時にはなかったりするが、この辺りはケースバイケースらしい。


 城から出ることになった聖女達はこの国発行の身分証がもらえるから本当はこんなことを心配する必要はないのだけど、私は国からの身分証をどこか適当なところで捨てるつもりなので色々考えてしまう。

 この国の身分証を使う限り、何かあった時に探されて、呼び戻されるの気がするんだよね。

 それこそ、強引に。転移魔法を使ってでも。

 勝手に一方通行の召喚して、順位付けて、最終的には出て行くか、残ってこの国に尽くすか選べ、と迫ったことを考えたらやるとしか思えない。


 真名を握っておいて。

 真名があれば基本どんな命令にも服従させられるってことは、危険があればまた呼び戻されて死ぬまで国のために戦えと言われるだろうとわかる。


 本当にあの時、本名を名乗らなくてよかった。

 あの悪い予感って多分、特殊結界【悪意】のスキルのおかげなんだろうな、と今は思う。


 この結界、悪意を持った人や獣を近付けないだけで、なくなんとなくだがこちらに悪意を持ちそうな人には警戒心がわくのだ。


 てか、真名の説明せず、名前を名乗れっいうのは既に悪意だと思う。

 いけない。明日、出ていくのにこんなこと今更考えても仕方がない。


 点検はこれで大丈夫かな?

 本当は孤児院の子達がくれたものや、街で買ったものとか、持っていきたいものもあるけど、持っていかない。

 どんなに逃げたと思っても世界は繋がっているし、魔法だってある。

 だから想い出は胸にだけしまう。

 それなら誰にも盗られたりしないし、なくさないから。


 あとは身につけていくものの点検ね。


 2年と少しの間使った部屋を見回す。

 キレイに片付けた部屋の1人がけソファの上には国が用意してくれた旅装とリュック。

 リュックの中には保存食にコップや皿に皮袋、調合道具一式にタオルや着替え、裁縫道具、それからサンダルが入ってる。

 生活魔法の軽量化と縮小化を使えばベルトポーチでも入る量だけど、魔力は有限だから担いでいくことにした。

 それに余りにも軽装だと厄介事に巻き込まれることもあるから。

 あとはベルトポーチ。これは小物入れ2つと薬入れ。

 薬入れは幅広のベルトにアンプルの形をした薬を刺して固定する形になっていて、私から見ると弾丸を並べているように見えるがこれが1番安全な運び方なのだ。

 それから身分証と薬師のメダルと国から渡された手切金。

 金貨500枚。

 これを私はわざと白金貨でもらった。

 白金貨1枚は金貨100枚。

 金貨1枚は銀貨100枚。

 銀貨1枚は銅貨100枚。

 庶民の生活で使うのは銀貨と銅貨。

 金貨も家賃だとか魔法具や魔法の代金で使われることもあるが、額の小さな買い物で金貨を出せば拒否されることもある。

 銅貨1枚が大体10円くらいの価値なので金貨500枚は5千万。

 白金貨2枚は両替して金貨にして、色々と旅支度をしている。

 金貨500枚という大金は一応、それなりの旅をしながらでも10年は暮らせる額らしい。

 街で生活をするなら贅沢しなければ20年というところだ。

 でも、私達は15才。成人したばかり。

 この世界の人達が死ぬのは60才を超えてからと考えるとこの先の人生は50年。

 異世界から召喚されて日本には帰れないと言われ、命を賭けろといわれた代価としては些か安すぎるとは思うが、何か言うのは止めた。

 下手なことをして監視を強められるのはごめんだから。


 でも、本当に安いと思うんだよね。

 聖女達が迷宮や魔物の討伐で稼いだお金を考えたら旅に出ることした10人には倍の額を与えてもいいと思う。


 ちなみに他の40人中、城に残ってお仕事するのが10人。

 騎士や仲間を連れて魔物の討伐に出るのが20人。

 王都に住むのが10人。王都に住む人には国からの招集には応じる義務があるそうです。

 てか、本当は貴族と結婚するので厳密には王都に住むわけじゃないけどさ。


 旅に出る10人は基本、国に縛られることはない。その代わりにもう援助を受けることも出来ないが、国に所属する40人にはコピーのスキルをもった聖女によってコピーされた様々なアイテムが渡されている。

 収納魔法の簡易版とも言えるアイテムボックスもアイテムの中にはあった。

 実はこのアイテムボックス、私が迷宮で見つけた宝物です。

 本来ならば迷宮で出たものを国に売るかどうかは自分で選ぶことが出来るのだが、これに関しては拒否権などなく国の所有物になった。

 それだけ滅多に出ないものらしい。

 しかもアイテムボックスのコピーは難しい上に失敗しやすい。

 なので、魔物退治の旅に出る聖女に優先的に配られた。

 見つけた本人なのでごねればコピーを貰えたかもしれないが、どんな魔法がかかっているかわからないので、軽量化と縮小化があればいいです。という形にして誤魔化している。


 国からの離れる10人にも希望すればそれなりの魔道具が渡されてはいたが、待遇にはかなり差がある。

 わかりやすいな、と思いつつも、私は魔道具をもらうことはしなかった。

 その理由はずっとほぼ固定で最下位だったからだと思われているようだが、本当は違う。


 お金以外の何かをもらったらきっとこの国は後から色々難癖をつけてくると思うのだ。

 力を貸せとか、あの時あれをやっただろう、とか。

 それで、なんとかなると思われてることが悔しいが真名を握られてもいるから基本的には仕方がないと思うしかない。

 色々バカにされているとは思うし、お金も物も本当は全部、置いていってやりたい気持ちだけど、そこはグッと抑える。

 どちらにしろ半年は監視がつくので、国を抜けるまでは大人しくしていよう。

 国の知らない収納魔法の中身の出番はその後だ。


 収納魔法がなければ、アイテムボックスを何がなんでも守ったかもしれない。

 そうしたらきっともっと監視が強くなっていただろう。

 真名を握られていたので、迷宮内で得たもの。あったことをくまなく報告するように。とは言われた。

 名字だけでもそれなりの拘束力はあるので、アイテムボックスを差し出したことで私は本名を言ったと思われているのだ。


 てか、名字だけでも効果があるって本当に真名って怖い。

 これがわかったのは日本以外から召喚された聖女のおかげ。

 ミドルネームを名乗らなかったり、通称を名乗ったりしてる人がいたのだけど、それでも真名による効果が出たのだ。

 本名名乗ってたら、今頃どうなってたんだろう、と思う。

 本当にあの時名乗らなくてよかった。


 この時見つけたアイテムボックスの容量は六畳ほどの立方体のようだ。

 重さと時間を無視できるのでかなり便利らしい。

 もっと大きくても重さはそのままものや、時間は止まらないものなどアイテムボックスには色々な種類があるらしい。


 ちなみに収納魔法が使える聖女様は魔物退治の軍に着いていくそうです。

 彼女がいればテントから食料まで何もかも持っていかなくていいそうなので、それはそれは大切にされているそうです。

 ほんと、収納魔法使えるってばれてなくてよかった。


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