9話 侵入者は、王子?
主人公がすぐ寝るために、視点が代わりやすい……
ってことで、後半はアシュリタ視点です。
ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m
婚約の話は結局有耶無耶になり、一週間程が過ぎた頃ソイツは現れた。
《む……》
私はその日、自宅に張っている結界に反応があったのを感じた。
私はあの話以降、宣言通り自宅警備員として屋敷を守っていた。
「マリア? どうかしたの?」
「マリアお姉様?」
私の反応を訝しげに、兄と弟は何かあったのかと聞いてきた。
《……侵入者だ。何者かが、屋敷内に入ってきた》
「侵入者? それは何処に? マリアの手を煩わせるまでもない。僕が始末してくるよ」
「僕も行きます! 身の程知らず知らずを、八つ裂きにしないと!」
私が今しがた屋敷に張っている結界に反応があったことを知らせると、兄と弟は嬉々として対処を願い出た。
《うむ……ここだ》
私は自作の魔導具に、映像を写す。
魔導がを態々製作するのは面倒きわまりなかったが、自宅警備に必要不可欠なので兄に用意させた。
私は割りと、約束は守るのだ。
「あっ……」
「お兄様?」
映像が写し出されると、兄が何かに気づいたのか声を上げた。
写し出されたのは私と同じ年頃の少年で、金髪金眼の整った容姿の少年……うむ、この程度なら、魔法で一発だな。
態々直接殺さなくても、屋敷に張り巡らされたトラップを発動させれば、始末できるだろう。
私はトラップを発動させようと――
「ちょっと待ってマリア!! すっごい不本意だけど、コイツを始末すると後々面倒くさい事になるかも!」
兄が慌てて、私を止めた。
……何だ?
折角、態々私が仕事をしようとしていたのに……はぁ、もうやる気がなくなった。
……寝るか。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「何故ですか? お兄様? もしかしたらマリアお姉さまを狙った奴かも知れないし、やっぱり八つ裂きにしないと!」
僕は急に方針を変えたお兄様に、納得できず異議を唱える。
マリアお姉様に何かあったら、どうするんだ。
大事なのはクズの命何かではなく、マリアお姉様の安寧だ。
その為なら、いくら命を消すことになっても構わない。
「……コレ、多分この国の王子だよアリシュタ」
「王子?」
何で王子が、家に侵入何てしてるんだよ……?
お父様からも、そんな話は聞いていない。
そもそも王子が護衛も連れずに、こんな所に来るなんて頭可笑しいんじゃないのか?
「何回か会ったことはあるから、間違いないよ。何でここに……まさか、あのとち狂った既になくなってる婚約が原因か?」
お兄様が顎に手を添えて、真剣な表情でモニターに写る王子を見詰める。
婚約?
あぁ、こないだお父様が言ってた笑えない冗談の事か。
マリアお姉様は、僕とこの家にずっと居るんだから全くもってあり得ないよね。
「あ、警備員に見つかった」
僕達が手をこまねいている内に、王子は警備員に保護されていた。
直に、屋敷の中へと案内されるだろう。
この国のトップの息子に刃を向けるような気概のある奴は、家の警備隊にはいない。
「……まぁ、屋敷に入れても、マリアお姉様に会わせる気は微塵もないけど」
お父様が王子の相手をするだろうが、また巫山戯た婚約の話が持ち上がっても困る。
僕達も応接室へと、向かっといた方がいいだろう。
「安心してください、マリアお姉様。僕達がマリアお姉様の望みを、必ず叶えて見せます」
僕はいつの間にか眠ってしまっていたマリアお姉様の額にキスを落とすと、部屋を後にした。