5話 快眠に抱き枕は不可欠
異世界転移、転生のジャンル別日間一位!
沢山のブクマありがとうございますm(__)m
ですが大勢の方に読まれているこの状況に、ちょっとハラハラ(-_-;)
何度も言うようですが、主人公は若干クズいです。
テーマは、人間って突き詰めていくとこうだよね?です。
皆、欲望のまま生きています。
弟が出来て、2週間。
案の定、アリシュタはババア達から虐めにあった。
タイミングも悪かった。
父が領地に視察に行っている為に、王都の屋敷を留守にしているのだ。
使用人もぐるになっているのか、細々と幼いアリシュタに嫌がらせをしていた。
「本当に汚らわしい! こんなのが公爵家の屋敷にいるなんてっ!」
そしてそれは私がおやつを食べに、部屋を移動していた時だった。
不快な騒音が聞こえると思ったら、姉(仮)がアリシュタを苛めていたのを目撃した。
《………………うるさい》
「何よ!? あんたには、関係ないでしょ!? あんた、ちょっと顔がいいからって生意気なのよ!!」
私が少し事実を言っただけなのに、今度は私に向かって姉(騒音)は更にヒステリックに叫んだ。
《…………》
「何とか言ったら、キャアあ゛ぁあ゛……」
ウザかったので、電気ショックを魔法で食らわせて黙らせた。
「あ、あの!」
私はそのまま放置して移動しようとしたが、アリシュタによって呼び止められた。
《……何だ?》
「ありがとうございます!」
私は助けたつもりは一切なかったが、アリシュタは目を輝かせてお礼を言った。
私は頷くと、また移動を開始した。
「ま、まって!」
後ろでアリシュタの私を呼ぶ声が聞こえたが、スルーして食堂へ向かう。
そんなことより、小腹が減っていたのだ。
《チョコバナナクレープを》
侍女に食べたいものを注文して、私は席についた。
「あの、ま、マリアおねえさま!」
名前を呼ばれて横を見ると、アリシュタがよじよじと椅子に上ろうと悪戦苦闘していた。
《……………》
見かねた私が、魔法で席に座らせてやった。
普段、無駄に魔力を使うことはない私だが、気紛れで助けてやることもあるのだ。
「あ、ありがとうございます、マリアおねえさま! おねえさまはとっても、すごいですね!」
しかし、そんな私の心情をよそに、何故かアリシュタからは尊敬の眼差しが返ってきた。
「お嬢様、ご所望のチョコバナナクレープです」
そうこうしているうちに、私のおやつが侍女によって運ばれてきた。
一緒にいるアリシュタには、勿論運ばれてこない。
ババアに嫌われてるアリシュタを、態々庇うものはいないのだ。
〈ぐーぎゅるるるー〉
隣で腹の音が、盛大に響いた。
《……………………》
「ご、こめんなさい……」
アリシュタは顔を赤くして、うつ向いた。
《……食うといい》
私は仕方なく、半分を譲ってやることにした。
このまま、ぐーぐー腹の音をならされても迷惑だ。
「ありがとうございます! おねえさま!」
アリシュタは私が魔法でナイフとフォーク動かして食べるのを、傍目に見ながらも一心に食べ始めた。
余程お腹がすいていたのだろう。
食事も抜かれていたのかもしれない。
《メイド、フォンダンショコラ2個だ》
私はアリシュタに譲ってやった分を、近くに控えているメイドに注文した。
「……畏まりました」
メイドはアリシュタに譲ったことに対し、一瞬眉を潜めたが直ぐに姿勢をただし頭を下げた。
私は姉(仮)にしたように、邪魔者に対して容赦はない。
過去、ババア達に命令されて私に嫌がらせをしようとした者は、皆返り討ちの倍返しで返した。
そして、それを知った兄が更に踏み潰していた。
それを見て、学習したのだろう。
今や私に逆らう使用人など、この屋敷にはいない。
まぁ、ババアや姉(仮)は全然学習しないようだが。
その後、運ばれてきたフォンダンショコラのうち1つをアリシュタにまた譲ってやると、目をキラキラさせて喜んだ。
実に、単純なやつだ。
そして今――――
《何している?》
アリシュタは、私の部屋まで付いてきた。
「ぼ、ぼく、おねえさまともっとあそびたいです!!」
《嫌》
私は即答した。
だって、今から寝るとこだし。
「え?……だめ?」
アリシュタは泣きそうに顔を歪めた。
《……臭い》
しかし私はかまわず、先程から思っていたことを指摘した。
多分、風呂入ってないなコイツ。
「あ、ごめんなさい」
アリシュタは、もう半泣きだった。
半泣きで謝ると、直ぐに部屋を出ようとした。
《…………》
私は仕方なく、アリシュタに洗浄と清浄の魔法をかけた。
すると、今まで小汚なかったのが、随分とましになった。
「お、おねえさま?」
そのままアリシュタと共に、布団の中に入る。
《寝ろ》
アリシュタを抱き枕にして、目を閉じる。
うむ、中々いいかもしれない。
子供体温と、幼児のミルクっぽい独特の匂いは、私を快眠へと導くことだろう。
《おやすみ、弟よ》
そして私は、夢の国へと旅だったのであった。




