4話 素晴らしき人生設計、そして弟が出来た
月日が過ぎ、6年がたった。
私はこれまでと変わらず、ぐーたらな生活を続けている。
父と兄以外とは、相変わらず険悪な関係だ。
「マリア! 今、起きたのかい? お父様とご飯を一緒に食べようか?」
私が目を覚ましてお腹が減った為、食堂へぷかぷかと魔法を使って空中移動していたところに、父と遭遇した。
因みに当初私が無詠唱で魔法を使って見せた時は、死ぬほど驚いていた父だが、今ではもうすっかり慣れたのか何も言わなくなった。
ババア達はそれで更に文句を言ってきたが、私がババア如きの為に不自由を選択することはない。
何を言われようと、卒倒しようと、好きに使いまくっている。
「ふふ、今日もマリアは可愛いなぁ。お嫁になんかいかずに、ずっと家にいればいいからね!」
父に抱き上げられながら、食堂へ向かって移動しながら父は言った。
《勿論、そのつもりだぞ。兄も私を一生養うといっていた》
「それは嬉しいなぁ。でも、孫の顔も見てみたいな……うーん? なら、婿をとるのが一番かな?」
父は嬉しそうに微笑むと、今度は頭を悩ませながら言った。
《それは、兄達が頑張ればいい。私は自宅警備員で、生涯結婚するつもりはない》
だって、面倒だし。
私はこの家で、ぐーたらと誰に気を使わずに生涯過ごすつもりだ。
夫は別にいらん。
「そう? 結婚もいいものだけれど」
父よ、自分をよく見ろ。
父とババアは、明らかに上手くいっていないだろう。
……そもそも、父は公爵家で顔もイケメンなのだから、もっと好物件があったのではなかろうか?
「君達に会えたんだから、幸せだよ。それに僕は婿入りしたんだ」
父が私の心を読んだように、そう微笑んだ。
父……腕をあげたな。
これからも私の面倒を頼む。
「はい、喜んで僕のお姫様」
父は私を溺愛しており、私をよく見ている為か、兄同様私が何も言わなくても思っている事が通じるようになった。
こうなったら、2人にはずっと私の面倒を見てもらう他ない。
うむ、素晴らしい人生設計だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「今日から、この子を引き取ることにした」
完璧な人生設計から、数日がたった頃。
その子供は現れた。
……これは、また面倒なことになりそうだな。
私は兄に抱き上げられながら、その子供とババア達を見た。
父から友人の子だと説明されたが、ババアは納得してないようだ。
愛人の子では? と疑っているのだろう。
それにしては痩せ細った、ボロボロな子供だけれど。
姉(仮)はあからさまに、蔑んだ視線を向けてるしな。
「名前はアリシュタだ。まだ3歳だよ。アリシュタも今日からここが自分の家だと思って、何でも言いなさい」
「………はぃ……」
少年もとい、アリシュタはおどおどしながら返事をした。
その目は不安と、期待が入り混じっていた。
「君達もアリシュタの面倒を見て欲しい」
父はそう言ったが、それに誰も返事をすることはない。
兄は他人に興味がないし、ババアや姉(仮)はアリシュタを蔑んでいる。
そして私は――――面倒臭い。
この一言に尽きる。
私は面倒を見る側ではなく、見られる側だ。
だから、パスで。
…………こう考えると、ろくな奴がいないな家の家族。
……まぁ、いいけど。
それより眠い……
兄よ、私をベットまで運ぶのだ。