表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は、前世怠惰な魔法使い。  作者: 皐月乃 彩月
続章 そして、世界は大罪に染まる。
30/31

??????

 

「なぁ、何でここから出ぇへんの? あんたなら全部壊して出ていけるのに……」


揺蕩う意識の中、少女の話しかける声によって再び意識が浮上する。

薄く眼を開けると、この前……いや、ずっと昔の事かもしれないが、前とは別の少女がフラスコの前に立っていた。

そして、この少女もまたあの傲慢な少女と同様に傷だらけで、同じ質問を私にした。


別にここに居たい訳ではない。

けれと、逆に出ていきたいかと言われればそれも違うと答えるだろう。

私はもう全てがどうでもいい。

ただ、面倒な事はしたくないだけだ。


「答へん、か……ウチはな、此処には親に売られて来たんよ。まぁ、此処に居る殆どの子供が売られたか、拐われたかやけど」


此方は返事をするつもりはないのに、少女は1人身の上話を始めた。


”親に売られる“


それは何も特別な事ではない。

世間一般では、親は自らの子にそれなりの愛着を持っているらしい。

だから、無償(タダ)で子を悪魔に引き渡す者など殆ど居ない。

皆、金や権力など自らの欲望と引き換えで子を売るのだ。

ほんの一握り、子を唯一無二の宝とした者だけは例外として殺され、子は拐われて連れてこられる。


此処に居る者は、1人(・・)を除いて皆売られたか拐われた者だ。

私の生まれた家は、とても裕福で強い権力を持った家であった。

魔術界の王家とも呼べる家からの呼び掛けだったとはいえ、家ほどの名家ならば拒む事も出来た筈だった。

だが、私はあっさりと何の躊躇いもなく引き渡された。

つまり、こういう事だ。

両親は、私に欠片も愛情も愛着も罪悪感も抱いていなかった。

私は家に不必要であった為に、厄介払いされたのだ。


……まぁ、今となっては全てどうでも良いことだが。

初めに懐いた憎悪も、助けを期待する心も、今では粉々になり消え去っている。


「ウチはな。いつか……近い未来にウチ自身を買い戻すんよ。ウチの能力は等価交換……何でも手にはいる能力なんよ。そんなウチがこない奴隷にも劣る扱い……我慢出来る筈せぇへんやろ? そしてぜぇんぶウチは手に入れるんよ。この世にある価値のあるモノは全て、ウチのものなんよ」


少女は言ってる事と噛み合わない、幼い純粋な笑みを浮かべた。


等価交換とは……前にやって来た少女と同様、この少女も稀有な能力を持っているようだ。

上は一体何を望んでいるのか……2人の少女は共に反逆の意志があるというのに………。

遠くない未来、ここもおしまいかも知れないな。


《何故、私にそんな事を話す?》


しかし、解せないのは何故その話を私に態々するのなだ。

私は何一つするつもりはない。


「お、喋りはった!賭けはウチの勝ちなんよ!」


《……賭け?》


私が反応したのが余程嬉しかったらしい。

少女はニコニコと笑みを浮かべて喜んだ。


「そう、ウチら6人で誰がアンタの反応を得られるか……アンタを動かせたなら、なおよしってやつなん。勝ったら、一月に一度出される甘味を総取り出来るんよ! 今のところウチが一歩リードと言ったところやけど……まぁ、このままウチの1人勝ちやろ」


少女の話によると、まだまだ此処には人が来る予定らしい。

騒がしいし、実に迷惑だ。


「まぁ、ウチとしては動いて欲しくはあるけど、そこまで期待はしてないんよ。ウチがアンタに話しかけたのは、アンタは将来ウチの上客になると思ったからなんよ」


私は何もするつもりはない。

欲しいものもない。

だから、少女の言う未来は訪れないだろう。


私は眼前の少女への興味を失って、意識を再び沈めようとした。


「……それに、復讐は自分の手でせぇへんと意味はないからね」


最後に聞こえたその声には、強い意志が込められていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ