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番外編 姉の嫁入り 前編

姉視点と言われ、突発的に思い付いたものです。

もし姉が生き残れたら……という話。

本編では、生死不明です……生きてるといいよね。



――この家は狂ってる。


私も人の事は言えた義理ではないが、アレ達程ではないだろう。


私の名前は、ローズ・シュレディンガー。

シュレディンガー公爵家の長女として生を受けた私は、本来何もかもが思い通りになるはずだった。

現に幼い頃は、そうだったのだ。

シュレディンガー公爵家は名門故、何でも我が儘が許されたしお母様は私に大層甘かった。

お父様は私の行動を一々注意してきたが、お父様は入婿でお母様の方が立場は上だ。

お父様では私を、止めることは出来ない。

お兄様は私に興味がないのか視界に映ることはなかったが、私を叱るでもない。

私は幼い頃、本気で世界は自分の思うがままだと思っていた。


あの子が生まれてくるまでは――


あの子、マリアが生まれてから家の空気が変わった。

マリアを初めて見た時、人形のようだと思った。

容姿は、赤ん坊でも判断できるくらい整っていた。

けれど、泣きも笑いもしない表情は人間味がなく、気味が悪い。

私は初めて見た時から、この妹が嫌いだった。

それは、母も同じだった。


でも――お父様とお兄様は違った。

目に入れても痛くないほど可愛がっていた。

あの何にも興味がないように見えたお兄様なんて、今までが嘘のような溺愛っぷりだ。

私は益々妹が嫌いになった。


妹の異常性に気付くのに、そう時間は掛からなかった。

妹は異常だった。

まだ生まれてばかりだというのに、見たこともない魔法を行使していたのだ。

しかもそれだけに飽きたらず、その力を私達家族にも容赦なく使用された。

気絶するような雷魔法を、私やお母様相手にまで使ったのだ。

頭がイカれてるとしか思えない。

確かに私達は、あの子に手を上げようとしたことはあった。

でもその仕返しにしては、天秤がつり合わない。


けれど、それはあの子に限った事ではない。

あの子の周囲、お兄様を始めとしたアリシュタ、更には王子までもが狂った天秤を持っていた。


お母様があの子に暗殺者を向けようとしたときは、私は必死に止めた。

あの子や周囲の人間がどう行動するのかなど、容易に想像出来る。

それでも……時々感情を制御できず、電流を浴びることはあったけれど。


そしてその判断が正しかった事は、すぐに証明された。


あの子に手を出した、侯爵令嬢。

彼女は王子の誕生パーティの後、姿を見ることは2度と叶わなかった。

周囲は野盗の仕業だと信じているが、私は信じない。

彼等は、お兄様やアリシュタ達に消されたのだ。

その時、私は気付いた。

私やお母様は嫌われてはいるけれど、温情はかけられているのだ。

でなければ、とっくの昔に私やお母様は亡き者となっていただろう。


もう、あの子達に関わるのは止めよう。

それが私の辿り着いた結論だった。


この時、私はあの子の周りにいる彼等が理解出来なかった。

私は自分が1番可愛いし、自分より愛するものなどこの世界にはいなかったから――









◆◆◆◆◆◆◆








「何なの、あの穢らわしい害虫はっ!! 私のランガ様に気安く触れて……身分も弁えない男爵令嬢風情がっ!!」


私は怒りのまま、近くにあった花瓶を床に叩き付けた。




私が20を過ぎて結婚目前となった頃、それは起こった。

私には、婚約者がいた。

伯爵家で身分は下だが、とてもワイルドで格好良く軍に籍を置く同い年の人だった。

本当は学園を卒業してからすぐにでも式を挙げたかったが、彼が軍の遠征に参加することになりここまで式が延びてしまった。

漸く結婚という時に、彼の周りに虫が集り出したのだ。

ただでさえ、その害虫は男爵家の庶子で、庶民臭くて無礼な女で気に食わなかった。

それが公爵令嬢の私の婚約者に、色目を使う?

無礼どころではない、公爵家に喧嘩を売ったに等しい行為だ。

私はすぐに駆除へと行動を移した。

口頭での注意も初めはしたが、あの虫並みの頭では理解できないのか全く弁えない。

仕方ないので、ならず者や暗殺者を差し向けたが、それもランガ様を始めとした見目のいい高貴な身分の男性達によって防がれた。

しかも、それだけではない。

とうとうランガ様達は、私のやってきた事を公の場で断罪すると言い出したのだ。


「一体、どうすれば……あの女さえ消せれば!」


あの穢らわしい女さえいなくなれば、ランガ様達もお目を覚ます筈なのに……。


このままでは、私の身の方が危ない。


全部、全部あの虫さえいなければ……


「そうだわ、あの子に……ふふ、ふふふ!」


私は思い付いた案に、思わず笑った。

そうだ、簡単な事だ。


「あははははっ! あぁ、お兄様、ルヴィーア殿下、

アリシュタ……狂ってるなんて言ってごめんなさい?」


私は、この場に居ないお兄様達に謝った。


「私も、ようやく貴殿方の気持ちが分かりました……」


私は、机に飾ってあるランガ様の絵姿を指でなぞった。


「全ては愛故……そうなのですね、お兄様?」


その為なら私は、禁忌としたあの子の手を借りることも躊躇はしない。

それで、ランガ様を助けられるのだ。

プライドを捨てて、私は大嫌いなあの子に頭を下げることだって出来る。

ランガ様の為なら、何だって出来る。

だって――――


「愛していますわ、ランガ様」


愛の為に、邪魔なものを排除するのはフツウでしょ?

書き初めは、意外にまともか姉? と思ってたけど、やっぱり違いました。

この話に出てくるのは、皆自己中です。

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