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17話 箱庭は圏外

後半視点かわります

物語も遂に終盤です。


学園生活は快適であった。

テストは面倒であったが、私は学園にいる殆どの時間を特別に用意された温室のベットの上で寝て過ごした。


《うむ、今日もよい天気だな》


ガラス越しに降り注ぐ暖かい光に、眠気が込み上げる。


今日も今日とて、昼寝日和だな。


「そうですね、マリア様。今週はゆっくりと、過ごせそうですね。来週からはテストが始まってしまいますし……」


《……またか》


日が過ぎるのが、早い。

ついこの間受けたばかりではないか。


折角の昼寝日和も、来週の事を思うと気が滅入る。


学園……行きたくない。


私はグダグダ文句を述べながらも、のんびりと日々を過ごしていた。











◆◆◆◆◆◆◆◆










「どうして、どうして上手くいかないの!?」


そう人気のない裏庭で喚き散らすのは、自らヒロインと称する平民の少女ミーナ。


「ルヴィーアも、ミカエラも、アリシュタも!! 私を愛する筈なのに、何で!? こんなの、おかしい!」


頭をかぶり振って髪を乱した姿は、まさに醜悪。

ミーナは今とてもじゃないが、自分の取り巻きには見せられない醜態を曝していた。


「何で、他のキャラは上手くいってるのにぃっ!」


ここは、乙女ゲームの世界だ。

ミーナは自分がそのゲームのヒロインであることを思い出してから、シナリオ通りに忠実に行動してきた。

その行動が実を結び、ルヴィーア含め3人以外は攻略して逆ハーレムを築いたのだ。


「クソクソクソ、まさか誰かが私の邪魔をしてるの? ……そうよ、それ以外考えられない、そうに決まってる!!……そうだ、アイツ、悪役令嬢のマリアよ! あのクソ女、私の逆ハーの邪魔しやがって!!」


グシャッと、花壇に植えられていた花がミーナによって、1つ2つと踏みにじられていく。


「……そうよ、悪役は悪役らしくしてればいいんだわ。フフフッ、フフフッ!」


ミーナは花壇にあった花を全て滅茶苦茶にした後、突然狂ったように笑い始めた。


「安心して、マリア? 私がちゃーんと、あんたを悪役にしてあげる!」


ミーナは一息つくと乱れた髪を直して、自らのハーレムの元へと駆けて行った。


「み、皆助けて!」


「ミーナ? どうしたんですか? そんなに慌てて……」


ミーナに簡単に陥落してしまった愚かな取り巻き達は、ミーナのいつにない態度に心配そうに尋ねた。


「花が……私が大切に育ててた花が!」


ミーナは偽りの涙を流し、先程までいた裏庭に取り巻き達を連れてきた。


「これは……!」


「ひどいな……ミーナが一生懸命世話をしていたのに」


「誰がこんなことを!?」


男達は口々にそう言って、怒りを顕にした。


「こ、公爵家のマリアさんが……平民は大人しくしてろ、目障りだって! 私、お花達を守れなくて……っ!」


「ミーナ……こんなことをするなんて、……許せないな」


取り巻き達はそう言ってとうとう泣き崩れたミーナを労りながら、マリアに対しての憎悪を胸に刻み込んだ。


「……ふふ、これであんたも終わりよマリア」


ミーナはそんな取り巻き達の様子をニヤリと笑いながら、一人呟いた。










恋に狂った取り巻き達は、気付かない。


――自分達が大切にしている少女の醜悪さに。


現実と妄想が混じってしまった少女は、気付かない。


――自らが破滅への道を歩んでいることを。


けれど、今更引き返したところでもう遅い。

この時、ミーナは選んでしまった。

絶対に敵にまわしてはいけない者の前へ、立ちはだかる事を。



既に破滅は約束されてしまったのだ。


――彼女が、自らの邪魔をするものを許すことはない。


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