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14話 子爵令嬢は、人形愛者

この話の登場人物は、皆自己中です。

自らの欲望に忠実です。

最後のヤンデレ?キャラ登場です。

女の子です。


――その日、私は運命に出会った。


私は転生者だった。

前世の趣味は人形収集。

日本人形よりも、ヨーロッパの美しいビスクドールが好きだった。

それは私の容姿に、起因していたのかもしれない。

私は自分の容姿が嫌いだった。


美しいものは、何よりも尊い。

それに人形の美しさは、ある意味永遠だ。

年もとらず、変わらない美しさを保ち続ける。

だから完璧な美しさを誇る人形達を、私は何より愛していた。








「……何これ、微妙」


私は鏡の前に立ち、自分の姿を確かめる。


転生して2度目の人生を得たというのに、私の容姿は理想とは程遠かった。

決して、整っていないわけではない。

けれどどちらかと言うと日本人形のような容姿で、私の理想であるビスクドールには程遠い。


まぁ、私の理想を人間が体現出来るとも思わないのだけれど。


今世でもまた私は、理想を自分以外に求めることになりそうだ。







「王子の誕生パーティ?」


「あぁ、お前も子爵令嬢として参加するのだ。王子は家の身分では難しいが、侯爵家なら家でも縁戚になることは可能だ。お前は容姿が整っているし、上手くいけば玉の輿も夢ではないだろう」


父からある日突然命じられたのは、この国の王子の誕生パーティへの参加だった。


「……はい」


私は今世の父である欲深さに嫌気がさしながらも、渋々頷いた。


パーティへの参加など面倒極まりないが、父には私の人形収集に金を出して貰っている。

拒否して、金を出して貰えなくなったら困る。


ここは、父の機嫌でも取っておくか……。

それに高位貴族に上手くとり込めたら、私はもっと美しい人形を手に出来るかもしれない。


そうして私はパーティの為に、領地から王都へと旅立ったのであった。








◆◆◆◆◆◆◆◆







「きゃーっ! 素敵! ルヴィーア殿下よ!」


「ミカエラ様も素敵だわ!」


「アリシュタ様も後数年もしたら、化けますわよ?」


「あの方も――」


きゃー、きゃーと騒ぐ令嬢を後目に、私は今日の狙いを選定する。


王子は無理だから……ミカエラ様?

でも公爵家の跡取りだと、家なんかは選ばないか……

なら、アリシュタ様が一番好物件かな?

養子だし、格下の子爵令嬢でも婚姻を望めるかもしれない。


そうと決めた私は、王子達がいるであろう人が集まっている場所へと移動した。


「この泥棒猫っ! 何を寝ているのかしら!!? 公爵家のとんだ恥さらしね!」


騒ぎの中心に近付くと、そんな声が聞こえてきた。


泥棒猫って……言ってる人初めて聞いたわ。

しかも公爵家の令嬢相手に、誰が言ってるのかしら?

王子が相手って事は……システィア侯爵令嬢?

ってことは、公爵令嬢はミカエラ様の妹君ね。

王子の婚約者の第一候補だったらしいし。

でもやっぱり、生身の人間はダメね。

年をとるごとに美しさは劣化していくし、きゃー、きゃー、きゃー、きゃーと醜くって仕方がない。


その後もシスティア侯爵令嬢らしき人物は、怒りが収まらないのか、怒鳴る怒鳴る。

周囲は聞こえてくる罵詈雑言の嵐に、すっかり気分を害されてしまった。


公爵令嬢の声が聞こえないけれど……相手にもしないってことかしら?

よくこれだけの罵声に堪えられるわね、尊敬に値するわ。


私はその様子を見ようと、人だかりを掻き分けて最前列まで出てきた。


「……ぁっ」


言葉にならなかった。

ケバケバしくまるで悪役令嬢のようなシスティア侯爵令嬢なんて目にも止まらず、私はそのお方に一瞬で魅入られた。


「私を愚弄してますの!? っ!! このっ!!!」


私は侯爵令嬢が激情に身を任せて近くにあったコップを投げ付けたのを、スローモーションか何かのように見詰めていた。


あ、危ない!


私は予想される未来に恐怖したが、実際には侯爵令嬢が気絶しただけで終わった。


よかった!

あの方に傷1つつこうものなら、私はシスティア侯爵令嬢を縊り殺していたかもしれない。


――だって、運命なのだ。


――私の追い求めた、理想そのものなのだ。


――それをたかが掃いて捨てるようにいる女如きが、損なわせていい筈がないでしょう?


「あぁっ!! 本当に美しい!」


私は頬を上気させ、蕩けるような笑顔を浮かべた。


……公爵令嬢のお名前は、確かマリア様だった。

名前まで美しいのね。

もっと、お近づきになりたいけれど、家如きが公爵家と深交なんてある筈もないし……

そうだ! 侍女としてお側においてもらえないかしら?

公爵家ともなれば、侍女も貴族の婦女子から選ぶ可能性が大いに高い筈。


「こうしちゃ、いられないわ!」


私は美しいそのお尊顔を脳内に焼き付けるように記憶してから、名残惜しくもパーティ会場を後にした。

最早、父に命じられた玉の輿は頭になかった。


まず、侍女に必要な能力を身に付けて……

公爵に雇ってもらえるように、頼み込みに行かなければ。

……あぁでも、もし既に専属の侍女がついていたらどうしようかしら?

…………そんなの許せないわ。

上手いこと事故に見せかけて消す方法も、用意しといた方がいいわよね……


「あぁっ! でも! 楽しみだわ!」


あの人形のように美しい人が、私の主になるのね!

毎日、その美しい姿を拝めるなんて、夢のようだわ!


「待っていてくださいね、マリア様!」


私は王宮の廊下を、スッキプしそうな勢いで通り抜けた。




こ、怖い((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

自分で書いてて、こんな奴が周囲にいたら速効で逃げ去るレベルですね。

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