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13話 倍返しは、基本中の基本

寝落ちしてしまいました……

更新遅れて申し訳ないm(__)m

後半は兄視点です。


パーティ当日、私は宣言通り車イスに座ってうたた寝をしていた。


うむ、流石は公爵家。

座り心地が半端ないな。


やはり、父との交換条件を呑んで正解だった。

ただ寝る場所を変えただけで、高級寝具が手にはいるのだから安いもんだ。


夢現の間で兄達と誰かが話しているのが聞こえたが、私は目を開く事もなく心地よく微睡んでいた。


「ルヴィーア様っ!!▲□■●●○◎▼▽▲――――」


突然甲高い声が、耳に入ってきた。

しかも騒音はその1回のみでは収まらず、その後もキーキー鳴っていた。


うるさっ……

近所迷惑も甚だしい……

寝ている奴がいるところで、騒ぐんじゃない。

常識がないぞ。


私は眠りの底から呼び覚まされ、思い瞼を開く。


《む……五月蝿い》


「この泥棒猫っ! 何を寝ているのかしら!!? 公爵家のとんだ恥さらしね!」


私が文句を言いつつ嫌々起きると、いきなり騒音が浴びせられた。


《……》


ぅ……臭っ!

騒音だけに飽きたらず、悪臭まで……

気持ち悪っ


一瞬、魔法で燃やしつくそうかとも思った。

けれど、ギリギリで思い止まった。

その汚物はよくよく見ると服装は成金趣味だが、それなりに質は良さそうな物を着ていた。

それなりの地位に、あるのかもしれない。


《うざぃ、寝る》


後々面倒臭い事になるやも知れないし……ほっといて、もう寝るか。


私は自身の周囲に防音と防臭の結界を張り、寝る体制へと移行した。


ん……ついでに、反射もつけておくか。


私は痛みを反射するバリアも、結界に付与して眠りについた。











◆◆◆◆◆◆◆◆











アリシュタは気付かなかったようだが、僕はマリアが防音と防臭だけでなく痛みの反射も結界に付与したのに気付いた。


……余っ程、マリアの癇に障ったんだね。


結界の効力の設定を見ると、100倍返しに設定されている。

これは自分の身を守るとともに、その受ける筈だった痛みを100倍にして攻撃を加えてきた相手に返還されるというものだ。

これは痛みを与えるもので、傷を与えるものではない。

しかし、侮ることなかれ。

これだとちょっと抓られただけでも、肉を抉られるような痛みが相手を襲うだろう。

マリアは相手の身分を考慮に入れて、外傷は与えない効果を結界に付与したのだ。

そして反射なので、相手から攻撃してこないとこの効果は発揮しない。

あくまで攻撃を加えたのは相手であり、正当防衛を主張できるのだ。

外傷を与えないので後で文句を言ってきても、周囲からは当たり屋のようにしか見えない中々エグい魔法だ。


まぁ、マリアを害するような奴がどうなろうと興味ないんだけどね?


僕は予測される結末に、1人ほくそ笑んだ。






「私を愚弄してますの!? っ!! このっ!!!」


侯爵令嬢が食器を振り上げたのを、僕は内心笑ってみていた。


本当に馬鹿で短慮な女だ。


僕は庇おうとしたアリシュタの腕を掴み、その場に止まらせる。

アリシュタからは、困惑の感情が発せられているが僕は気にも止めずその瞬間を見ていた。


投げ付けられたのはコップだったが、マリアに当たる寸前に結界によって勢いを無くして、ただ床に落下して砕け散った。


勿論、マリアは無傷だ。

目を覚ますこともなく、穏やかな顔で眠り続けている。


そして結界に付与された魔法が、効果を発揮した。

魔法により倍返しされた痛みが、侯爵令嬢を襲う。

あまりの衝撃に侯爵令嬢は一瞬目を見開くだけで、声をあげることも出来ずに白目を向いて倒れた。


くっ、くははっ!

馬鹿な女!


僕はポーカーフェイスを貫きながらも、心の内で爆笑していた。


「おやおや、人に危害を加えようとした上で、興奮して意識を失うなんて……常識以前の問題だな。ねぇ、アリシュタもそう思わない?」


僕は仕上げとばかりに、周囲にとち狂った愚かで常識の無い侯爵令嬢をアピールした。


「……えぇ、そうですね。この件は、後でシスティア侯爵家に抗議させて貰いましょう」


アリシュタも事の次第を理解すると、僕の作戦に乗ってきた。

認めたくはないが、こいつも僕と同じでマリア至上主義だ。

危害を加えようとした侯爵令嬢を、このままただで許す気は更々無い。


たかだか取るに足らない存在がマリアに手を出した事、死ぬ程後悔するといいよ。










システィア侯爵令嬢を、その後の社交界で見るものはいなかった。


事件の後、侯爵は何やら公爵に謝罪どころか抗議をしたそうだが、周囲は何て愚かなんだと侯爵の訴えを一蹴。

そして一家揃って王都から自らの領地へと追い出されるかのように移り住むことになり、その道中に盗賊によって命を奪われた。

侯爵領は多額の税金のせいか、平民は貧しく飢えるものも多かった。

その影響でならず者に身を落とすものも多く、治安がすこぶる悪かったのだ。


貴族達は自業自得だと鼻で笑い、裏を疑うものなどは存在しなかった。








「そう言えばシスティア侯爵一家が盗賊に命を奪われたそうだけど……お前がやったの?……アリシュタ?」


僕はその事件の報せを聞いて、アリシュタに問いかけた。


今回、僕は特に手を出していない。

システィア侯爵領の状態を考慮するとあり得ないタイミングではないが、タイミングが良すぎる。

それにそれを実行できる人物に、僕は心当たりがあった。


アレ(・・)は事故ですよ、お兄様?……それに、マリアお姉様に手を出して生きていられるなんてあり得ませんよ!」


アリシュタはいつも通りの満面の笑みを浮かべて、そう答えた。


アリシュタは僕の以前言った言葉を真に受けてから、勉学にも真剣に取り組み力を求めた。

今では裏の世界にも、多大な影響力を持っている。


まさか僕の一言でこんな事になるとはね……

全くもって予想外だよ。


僕達が不穏な会話を続けるなかで、マリアは今日も何時も通り健やかな顔で眠っていた。

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