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11話 怠惰な令嬢は、踊らない

ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m

とても嬉しいんですが、予定通りの結末でいいのか不安になってきました……本当にこれで大丈夫だろうか?

王子が一周回って、ゲスくなるかも?

マリアの年齢を2歳上げました、10歳です。



王子の侵入から三日後、私に王子の誕生パーティの招待状が届いた。


《行かん。私は家で寝ているから、父達だけで行ってくるがよい》


私は招待状を、その辺に放り投げた。

添えられていた手紙には、好きだの愛だの書かれていたが、正直面倒くさいのですぐに読むのを止めた。


「うーん、マリアの望みは何でも叶えてあげたいけど……王子の招待があるからね……流石に行かないのは不味いかな」


父は苦笑いを浮かべながらも、私を何とか説得しようとしていた。


だが、無駄だぞ父よ。

私は梃子でも動かん、その辺の子供と一緒にしてくれるなよ?


「うん、マリアが義理立てする必要なんてないよ、赤の他人なんだし」


「そうですよ! 汚い大人達の視線にマリアお姉様が晒されるなんて、マリアお姉様が汚れてしまいます!」


うんうんと、父に対して兄と弟は私の意見に追従した。


仲良いな、兄と弟。

だが、弟よ。

私は魔法を使っているから、常に清潔だぞ?

私をその辺の風呂にもろくに入らないような、汚い引きこもりと一緒にするでない。

私は出来る自宅警備員なのだ!

部屋も自身も、常に最高の状態を保っているのだ。

快適な睡眠には、清潔さも必要不可欠であろう?


《それに、父よ。私は魔法を使わねば、移動できないぞ? 流石に王族のパーティで、堂々と魔法を使うのは不味いのではないか?》


だから無理なのだと、私は父に告げようとした――


「それなら問題ないよ! ほらっ! 特注でマリア専用に作らせたんだ」


自信満々で披露されたのは、車イスだった。

だが、ただの車イスではない。

椅子部分はクッション性にに富んでおり、背もたれを倒せる昨日付き、日除けの天井部分も出し入れ自由な優れものだ。


《中々、寝心地が良さそうな椅子だな》


「……そこで、そっちに目がいくのがマリアだよね。女の子らしく、装飾にも拘らせたんだけどな……まぁ、気に入ってくれたなら良かったかな?」


確かに、父の言った通りよくよく見れば細かい装飾や宝石まで使われていた。


……金の無駄遣いだな、父よ。

大事なのは見た目ではなく、機能だ!


《そして、私は行くとは一言も言っていないぞ》


何故か行く流れになりかけていたが、キッパリ断っておく。


「えぇ!? 行ってくれないの? ……うーん、そうだ! 一緒に行ってくれたら、隣国で人気の最高級の羽毛布団やシルクの寝具を取り寄せてあげよう!」


《!》


何!?

それは、天国のような寝心地だと有名なあの布団か!?

予約待ちで、国内の貴族ですら手に入らないと言うあの高級布団!?


「お! 食い付いた。……年頃の女の子が、布団にこんなに食い付くのも複雑だなー」


《父よ! 本当に手に入るのか!?》


「大丈夫、大丈夫! これでも伝があってね。ついこの間注文したばかりだから、来月には出来上がるはずだよ?」


……布団、……パーティ、……布団……。


《父よ、決めたぞ! 私はパーティに行く!》


よくよく考えてみれば、どうせ私は座っているだけだ。

寝ていたところで、問題ないだろう。

であれば、家で寝るか、王宮で寝るかの違いしかない。

ならば、私は布団を取る!


「マリア……チョロい、チョロ過ぎるよ」


黙れ、兄よ。

睡眠は何より、尊いのだ。


講して私は王子の誕生パーティに、参加する事になった。









◆◆◆◆◆◆◆◆










城を勝手に抜け出して婚約者(マリア)に会いに行ってから一月弱、俺は久し振りにその愛しい姿をこの目に納めた。

あの後、父上や母上は大層お怒りで、俺は城の外に出ることを禁じられた上でお目付け役を付けられた。


その間どれだけ俺が、マリアに恋い焦がれたことか。

今まで生きていたのが不思議なくらい、マリアがいない生活は実に味気無いものだった。


俺は帰って早々、マリアとの婚約の旨を両親に話した。


だって、俺は彼女と結婚するのに、侯爵令嬢との婚約何て無意味だろう?

それに俺には彼女1人で充分なのだから、側妃は不要だ。

身分だって、マリアの方が釣り合う筈だ。


俺は両親にそう説いたが、2人は許可をくれなかった。

どうやら、マリアの健康状態を2人は重く見ているらしく、後数年は様子を見たいそうだ。

だが、俺の熱意は伝わったようで、侯爵令嬢との婚約は白紙に戻った。




そして会えない日々が続き、今日俺の誕生パーティが開かれた。

勿論、招待状を送ったので、マリアも参加している。


あぁ……、やっとマリアに会える!


前回は眠っていた為に、声も聞くことが出来なかった。


どんな美しい声で、言葉を紡ぐのだろうか?

その瞳はどんな色で、光輝くのだろうか?


本当は、俺の誕生パーティでマリアとの婚約を正式に発表したかった。


公爵やその息子達の邪魔さえなければ……マリアも王宮で暮らせばいいのに。

母上も娘を欲しがっていたし、丁度いいだろう。


「先月ぶりだな、公爵」


パーティで俺は車イスに座るマリアを見つけると、すぐさまマリアの元へ向かった。

公爵に挨拶をしているが、視線はマリアで固定されている。


「えぇ、殿下もあれからこってり絞られたようで。以後、城を勝手に抜け出すのは、止めていただきたいものですね」


マリアは兄であるミカエラに、車イスを押されながらも瞳は閉じたままだった。


寝ているのか?

寝ている姿も相変わらず、愛くるしいな。


「会いたかったぞ、我が婚約者殿」


眠るマリアの手を取り、手の甲にキスを落とす。

その瞬間2方向から、凄まじい殺気が飛んできた。


「殿下? 婚約者のいない(・・・・・・・)レディに、無断で触れるのは不躾なのでは?」


笑顔で俺とマリアを引き剥がしてきたのは、公爵家長男のミカエラ。

見た目とは裏腹に、俺を殺さんとばかりの殺気を飛ばしている。


「どうしても家と縁を結びたいなら、家にはもう1人上に居ますよ?? 今日のパーティにも来てますので、今すぐ紹介して差し上げますね? アレなら全然公爵家から、嫁に出せますよ?? 寧ろ、今すぐ引き取って頂いても構いませんよ?」


俺とマリアの間にグイグイと割り込んできたのは、公爵家次男のアリシュタ。

此方も天使のような笑顔を浮かべているが、内容はエゲツない。

姉を厄介者扱いした上で、家から追い出そうとしているのだ。


「俺の婚約者は、マリアだけだ」


そう、その他など必要ない。

俺はマリアだけが欲しいのだ。


「はい? アリシュタ、僕は耳が悪くなってしまったのかな? 王子殿下から、あり得ない幻聴が聞こえたよ」


「僕も聞こえました、お兄様。妄言を吐くなんて、殿下は何か病気なのかもしれません。すぐに医者に見てもらいましょう」


「……貴様らっ!」


ここまで馬鹿にされたのは、生まれて初めてだ。

将来、俺とマリアが結婚したあかつきには、里帰りは禁じて、コイツ等も面会禁止にしよう。


俺は2人の兄弟を睨み付けながら、心に誓った。







「ルヴィーア様っ!! お会いしたかったですわ!」


殺伐とした空間を壊したのは、聞き覚えのある不愉快な声だった。


「システィア侯爵令嬢……」


その女は、父上が婚約者候補として次点に上げていた女だった。



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