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10話 婚約者は眠り姫

名前もまだ出てきてないけど、王子視点。

この話も折り返しに入りました。

この話の怠惰って……ある意味脳筋の事かも。




「なっ! 王子である俺との婚約が断られたんですか!?」


俺は父からそう知らされた時、怒りに我を忘れて叫んだ。

別に会ったこともない女だ。

好意を抱いていた訳じゃない。

父が信頼を置いている人の娘で、身分も年齢も釣り合いが取れる。

俺はこの国の第一王子で、将来父上の後を継ぐことになる立場だ。

感情抜きの政略結婚も仕方がないと思って、特に反対も意見もしなかった。

まぁ、媚びたり五月蝿かったりする女は嫌いなので、従順で美しい婚約者であればよいと仄かに期待はしていたが。


「……本当だ。公爵は娘の体が弱いことを理由に断られた。……出来れば権力欲のあまりないアイツの娘がよかったが……仕方あるまい。次点の侯爵家の娘を、お前の婚約者に据えるとするか」


父上は特に怒りを見せる様子もなく、坦々と次の候補へと目を向けた。

だが、俺は父上のように簡単に割り切ることは出来なかった。


俺はこの国の王子だ。

望むものは、何でも与えられてきた。


その俺を拒絶する?


――そんな事は俺のプライドが許さない。


病弱何て、体のいい嘘に決まってる。

国一番の医者が宮廷にいるが、彼が公爵家に呼ばれたことはない。

娘を溺愛していると噂の公爵なら、娘の為にいい医者にみせる位の事はするだろう。

だが、娘の病状は噂にも上がらない上に、誰も娘を見た者はいない。

娘を王家へ差し出したくない公爵か、娘が婚約を拒む為に理由にしているに過ぎないだろう。


「どうせ病弱何かじゃないんだ。俺が直々に確かめてやる!」


俺はそう心に決め、護衛に止められる前に行動に移した。








◆◆◆◆◆◆◆◆








「――それでルヴィーア殿下、本日は護衛も連れずに我が家に何の用で?」


普段温和な公爵が、俺を厳しい眼差しで責める。


怒りのままに城を飛び出してしまったが、少し冷静になった今なら自分の行動がどんなに危険な事かよく分かる。

俺も魔法や剣を習得しているから、その辺の賊にやられることはないが、それでもどれだけ不用心な行動だったかは理解できた。


「……我が婚約者殿が、体調を崩しているそうだからな。お見舞いに来たのだ」


だが、俺は今回の目的を忘れたわけではない。

絶対にその面の皮を拝むまでは、帰るつもりは毛頭無い。


……確か、姉はケバケバした厚化粧だったし、妹である婚約者も同じだろう。

あの程度の女が俺との婚約を、蹴飛ばすなど全くもって許せる事ではない。


「婚約? 何を言っているのですか王子殿下? 僕のマリアにそんな予定は、ありませんよ? 何か勘違いされているのでは?」


「……ミカエラ、ノック位しなさい」


突然、部屋に入って来たのはこの家の長男のミカエラ。

以前会ったときもそうだったが、コイツは何処か上から目線で俺を下に見ている節がある。


「でもお父様、マリアお姉様に婚約者なんていない筈ですよね?」


兄のミカエラの後ろから姿を現したのは、恐らく数年前に養子として引き取ったアリシュタだろう。

初対面であるのに、心無しか殺気を向けられている気がする。

2人とも、社交界では大変優秀であると評判であった。


「うーん。……ルヴィーア殿下、我が家のマリアとの婚約の話は、無くなった筈です。陛下ともそのように、お話ししましたよ? それにマリアは、体が弱くてあまり人に会わせるのは……」


公爵は困った表情で、俺に優しくそう諭した。


……そんな事は、知っている。

だが――――


「あぁ、聞いている。しかし王子である俺が、態々見舞いに来たのだ。別に長時間、無理を強いるつもりはない。一目顔を見るくらいは、構わないだろう?」


王子である俺の申し出だ。

流石の公爵も断れないだろう?


「マリアは休んでいるので無理です」


「絶対に無理です!」


しかし答えは、乱入してきた兄弟によってキッパリと出された。


コイツら……不敬ではないか?


「ミカエラ、アリシュタ、お前達は自分の部屋に戻っていなさい。ルヴィーア殿下、2人の言った通りマリアは今休んでいます。一目見るだけでよろしければ、ご案内いたしますが……それでよろしいですか?」


「「お父様!?」」


「あぁ……それで構わない」


納得していない2人の兄弟を後目に、俺は公爵の申し出に頷いた。


先触れもなく来たんだ、そのくらいは仕方ないだろう。

要は会えればいいのだ。


「……では、此方に」


背後で兄弟がいまだ文句を述べていたが、それを無視して公爵の後に続いた。


「……そんなに、公爵家の娘がいいなら、長女でもいいのでは? 本人も喜んで引き受けるでしょうし」


「ですよね! それなら何も問題ありませんし!」


長女は俺と6歳も離れているだろう……それにあの女は随分と我が儘放題な性格ブスだ。

王妃には相応しく無いだろう。

……そう考えると、ここまでむきになる必要もなかったな。

あの女の妹だ。

どうせ、ろくな奴ではない。

寧ろ、向こうから断ってくれて良かったんじゃないのか?


俺はここに来て漸く、冷静な思考に戻った。


万が一、俺が娘に会って婚約が復活したら面倒な事になるのでは?

俺は余計なことをしてしまったのではないかという思考が、頭を占め始めた。


「ここですよ」


そんな思考がグルグルと頭を巡る内に、とうとう部屋の前まで来てしまった。


「あ、あぁ……」


「マリア? 入るよ……」


公爵が部屋をノックして、扉を開いた。


ま、待て、まだ心の準備が……!


もう後には引けない俺は、冷や汗をかきながらも公爵に続いて娘の寝室へと入った。


「……あぁ、すみません殿下。マリアは眠っているようです。マリアは1度眠ったら中々起きないので、今日のところは……殿下?」


公爵が何か言っていたが、俺には最早周囲の音は聞こえなかった。

俺はノロノロと、でも一歩一歩確かに寝台へと足を運んでいく。

俺の視線は、ある一点に引き寄せられていた。


「……これが、俺の(・・)婚約者……きれいだ」


寝台で眠る少女は、俺が今まで見たことある誰よりも美しかった。

まるで――人ではないかのような、そんな神秘さを秘めた美しさであった。

年の頃は俺と同じだろうか?

父上は同い年だと仰っていたが、眠る少女は俺より年下にしか見えない。

根本は真っ白であったが、毛先へいくほどに漆黒へと変わる不思議な色の髪。

瞳の色は何色であろうか?

早くこの瞼で隠された、宝石の様に美しいに違いない瞳で俺を写して欲しい……


「で、殿下!?」


俺は公爵の制止の声も聞かずに、寝台で眠る美しい少女の頬へと触れた。


「あぁ、俺の(・・)婚約者殿。早く目を覚まさないだろうか?」


俺は寝台で眠る美しい姫に、一目で心を奪われた。

もう一度、言っておきます。

基本的に登場人物は自己中の、あれな人達です。

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