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俺の名前を言ってみろ!お兄ちゃんじゃないから!


「お、お兄ちゃん!? 私だよ! 遥だよ!」

「は、ハルカ? すまんが俺の記憶には、そんな名前の知り合いはいないんだが…」


 なんだこの女は…俺を一体誰と間違えてるんだ? いや、コイツの兄貴と間違えてるんだろうが。

 大体この女は一体どこから現れた?

 サイズワームの近くに居たとしてもさっきの爆発から無事なのが不思議すぎる。

 色々と混乱している。あと思考が乱れる。なぜ乱れるかというのは、俺が地面に寝そべっているお陰で、俺を見下ろしている女の子の下着がちらちらと目に入るからだ。

 なんだ?この言いようのない興奮は? 屈強な女戦士の露骨にむき出しにされた下半身の布だってここまで心惹かれるものではなかったはずだぞ。


「…あの、お兄ちゃん。なんでまだ寝そべっているの?」

「お、おう!? い、いやなんでもねえよ?うん。 あと俺はお前の兄貴じゃねえ」


 正直動揺したことは隠せなかったが、慌てて上体を起こし、両足で地面に立ち上がる。

 やっとこさ回復薬が回ってきたのだろう。俺の身体は相当回復してきていた。正直遅すぎるぐらいだが。

 まったく本当に災難だった。大半は俺の自業自得と確認不足+回復薬の品質のせいだ。


 それにしてもこのハルカという女の子は一体何者なのだろうか。俺はそこで疑問を投げかけた。


「あのさ、お前、一体誰なんだよ?俺のことお兄ちゃんって呼んだりよ」

「お兄ちゃん、記憶が無いの? …何この格好?コスプレ?」


 ハルカ(?)は俺の服装を見て、なんだか微妙な顔をする。

 俺でも確認してみるが、俺が今装備している服装といえば…


体:絹の服 鉄の胸当て

足:青鋼糸のズボン 銀のレギンス

武器:鋼の小手


 …どこもおかしいところはない。むしろ俺が冒険者だったらかなり良い装備であるはずだ。

 むしろ俺の目の前にいるこの女の子の格好も俺にとっては場違いなぐらいに優雅すぎる。

 白いワンピースにブーツ…こいつは一体どこの生まれのやつなのだろうか。

 あとこの女の子はなぜ俺を見てこんなにも激しく微妙な顔をしているのだろうか。なんだかむかついてきた。


「お前は何を言ってるんだか俺には全然わからねえが…だからお前は一体何なんだよ?」

「私は、お兄ちゃんの妹のハルカだよ?」

「ハルカな?OK。だが俺はお前のことは知らないし、兄貴呼ばわりされても困る」

「…うーん。やっぱり別人なのかな」

「…あん?誰が別人なんだよ?」

「ううん。なんでもない。ごめんね、へんなこと言って。お兄ちゃんの名前はなんて言うの?」


 だからお兄ちゃんじゃないと言っておろうが! まぁいい!名乗ればお前の兄貴じゃないことの証明になるだろ。

 俺は意を決して高らかに自分の名前を宣言する。いや、全然高らかではないが。


「俺の名前はランディだ!」

「ランディ…それってお兄ちゃんが昔書いていた妄想小説に…やっぱりお兄ちゃんなんじゃないの?」

「だから違うっつってんだろ!? 生き別れの兄弟だって言うんなら俺の姓名何だか言ってみろ!」

「オウルバロン」

「なんで知ってるんだよお前!?」


 なんだか自信がなくなってきた…本当に俺の妹…なのか?うん?

 俺はふかーいふかーいため息を吐いて、頭を抱えつつも質問を続ける。


「じゃあ何?お前はハルカ・オウルバロンさん?」

「ううん。私は丹波遥だからオウルバロンじゃないよ?」

「タンバ・ハルカ? タンバって名前なのかお前?」


 なにか引っかかる感じで質問してみたのだが、案の定ハルカは俺を困ったような目で見た。なぜだ。


「なんか大きな間違いを犯しているようだけど、ハルカが名前であってタンバは姓名だからね?」

「…どこの国の奴の常識だ。じゃあ俺お前の兄貴じゃないじゃん。姓名違うし」


 俺は頭を抱えながら答えを導き出す。お前とは二度と関わりあいがないようにここでお別れだ。うん。

 さよなら、自称俺の妹、妹なら妹らしくどこか俺の居ないところで幸せになっておくれよ。

 頭痛が酷くなってきた…。


「うーんやっぱり別人…なのかなぁ?」

「別人別人。っていうかドコでその兄貴を判断しているんだよ」

「しいて言えば…全体的に? こう、顔が瓜二つというか、ドッペルゲンガーというか…あと雰囲気も」


 ハルカが俺の全身を舐めるように見る。 視線がくすぐったいというより気持ち悪い。


「あー…じゃあなにか? 俺の外見は、お前の兄貴そっくりだってのか?」

「うん。あ、でも…髪の毛の色は茶髪じゃなかったよ」

「黒髪だったらお前の兄貴そっくりってことか」


 俺の問いにハルカは力強く頷いた。相当な自信があるっぽいが…その自信は空回りするだろうよ。


 なんて問答を繰り返していると、周りの森が何やらざわめき始める。

 どうやら長く話しすぎたようだ。先ほどの爆発騒ぎで、森の魔物がクレーターの方に動き始めたのだろう。


「…ひとまずここを離れた方がいいな。おい、近くの村まで戻るからついてこい」

「あ、うん…お洋服ボロボロの埃だらけだもんね。お兄ちゃん」

「そうゆうことじゃないんだがなぁ…」


 あと、俺はお前の兄貴じゃねえ!

申し遅れましたが、私、猫舌と申します。

尊敬する人は東映の用心棒です。

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