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ファンタジックな冒険譚  作者: コノハ
目指せゴブリン洞窟!
4/13

ギルドでの相談-そして負傷

 冒険者ギルド。冒険者の前身である探検者同士が情報を交換するために酒場に集まることを習慣としたのが始まりだった。冒険者の管理、依頼の受付など様々な側面を持つようになった今でもその性質、つまり酒を酌み交わしながら語り合う習慣は衰えておらず、『酒乱はギルドにあり』と言われるほど、酒場としても活性化している。国ごとに冒険者ギルドの様相に差があり、ここセイクリッドではかなり荒くれ酒場に近いものとなっていて、女子供を近づけてはいけない場所になっていた。

「あー酒臭い。ファラン、この不快すぎて今にも吐きそうなこの臭いから守ってよ。ガードナーでしょ?」

「俺だってやだよこの臭いは。でも仕方ねぇだろギルドなんだから」

「何ここ酒臭っ!? 二人とも、場違いだよ、出直そうよ~!」

 喧騒の中、ルミナ、ファラン、ゼロの三人はギルドの扉を潜った。

 もううるさくてうるさくて、ゼロは思わず耳を塞いだ。それでも喧騒の音は全くと言っていいほど防げていないのだが。

「おいで」

 顔をしかめつつ、ルミナはゼロの手を引いて二種類あるうちの一つ、『冒険者』と書かれたカウンターの前まで歩く。

「いらっしゃいませ。……って、あれ、ファランさん?」

 酒乱どもが騒ぎまくっているにも関わらず柔らかい営業スマイルを絶やさないある意味ツワモノの受付嬢が、甲冑に身を包んだファランを見て驚いたような声を上げた。

「なんで私が前にいて脳筋の名前が出てくんのよ」

 ルミナは不機嫌になって言った。

「いえ、その、他意はないのですが。それで、予定よりお早いお帰りですが、まさかお二人、依頼に……失敗した? 敗走ですか、ゴブリン相手に」

「んなわけあるか! 私らを誰だと思ってんのよ!」

「魔法使いのルミナさんに、ガードナーのファランさん二人の冒険者パーティ『ルミナ冒険団』ですよね?」

「そーいう杓子定規的な答えを聞いてるんじゃないわ!」

「では。初心者だと思ってます」

「だからね、それは……」

「街で如何様な技能を身に付けようと、依頼を受けて生きて帰って始めてその技能は『意味があった』と言えるのですよ?」

「だから失敗したんじゃないっつってんでしょ!?」

「では、もう全滅させたというのですか? ならあの洞窟に調査団とあなた方に、ゴブリンの全滅を確認するためもう一度洞窟に行ってもらいますが」

 本来ならそんな無駄足を踏ませるような真似はしない。ようするに疑っているのだ。

「だーかーら! 人の話を聞け! 中断したのよ!」

「……中断?」

 ギルドの中の喧騒が、少しだけ遠くなる。

「中断条件は三つほどありますが、どれですか?」

 一つ、依頼に虚偽があったと判明した場合。

 一つ、依頼以上の脅威が現れた場合。ゴブリン退治の依頼ならば、オーガという魔物がいたらこれに相当する。

 どちらも人の生死にかかわるものであるからして、冒険者たる者『中断条件』と耳にしたのならよくその話を聞くのが鉄則となっている。

 そして、最後の一つ。

「保護対象を見つけたの」

「幼児、身体的損傷が著しい一般人、どちらですか?」

 ちっちっち、とルミナは受付嬢の前で指を振った。イラついたように彼女のこめかみが引きつったが、ファランは見なかったことにした。

「一つ忘れてる保護対象がいるでしょ?」

 受付嬢は驚きに目を丸くした。

「い、いえ? しかし、まさか」

「じゃじゃーん、こちら保護対象のゼロちゃんでーす! 幼児とフォリナ族、ダブルで保護してやってくださいな!」

 完全に、ギルドの喧騒は消えていた。

 ファランが周りをみると、皆一様にゼロのことを見つめていた。

「……フォリナ族、ですか。その、少女が」

 受付嬢はカウンターから乗り出して、ゼロの姿を見た。彼女の腰にはフォリナ族であることを示すフォリナンダガーが下げられていた。

「こんにちは、お姉さん。私、ルーナー家が一人娘、ゼロと申します」

「こんにちは。それにしてもルーナー、って……最後の一家じゃない」

 最後の一家。その単語を二人は聞き逃さなかった。

「どういうこと?」

 二人が同時に聞いた。

「フォリナ族らしい最後のフォリナ族、ということです」

「は?」

 つまり、と受付嬢は続けた。

「各地を旅し、好奇心の赴くままに新しい土地へ向かう、古来よりの生き方を続ける最後の一家が、ルーナー家なのです」

「そ、そうなの!?」

 驚いたのは、ゼロだった。

「し、知らなかったの、ゼロちゃん?」

 受付嬢が聞くと、ゼロは頷いた。

「うん。だってパパと、ママも、フォリナ族ってこうして生きるものなんだ、って……ずっと……い、言って、て……」

 それから先は、言葉にならず、汚ならしいギルドの床に水滴がポタポタと落ちる。

「よしよし、大丈夫だからな」

 ファランが優しい手つきで、ゼロの頭を撫でる。

「……何かあったのですか?」

「この子の両親、依頼の洞窟の中でゴブリン共にやられたのよ」

「……それは、また、ご愁傷様です」

 ゴブリンにやられるとは、フォリナ族とは伝承通り、弱々しい種族なのだな、と受付嬢は思った。

「それで、この子、保護してくれるんでしょうね?」

 いえ、それが、と受付嬢は何かを渋っている。

「何よ、歯切れ悪いわね」

「保護の、話なのですが」

「なによ?」

「その、最後の一家、の話に戻りますが」

「ほう」

「それが判明したのが、お二人が発ったすぐでして」

「で?」

「最後の一家まで保護してしまうと、フォリナ族としてのフォリナ族がいなくなる、ということを危惧した国王様が……」

「が?」

「その、保護はせぬように、と。金と服、旅の荷物を好きなだけ持たせて放り出せ、とお触れが……」

「……そう」

 図太く何事にもズケズケと物を言う彼女でも、国営施設の職員の前で『何トチ狂ってんだかクソ国王が!』なんてことは言えなかった。

「でもこの子七歳よ? 旅どころかまだ両親がいないと知らないところにもいけないような年頃でしょ? 一人で外に放り出したらあっという間に魔物の餌よ? ……この子可愛いし、幼児性愛者の薄汚い欲の犠牲になるかも」

「……しかし、保護は許されないですし……。そうだ」

 ピン、と何かを思いついたように受付嬢は手を打った。

「お二人の冒険者パーティに入れてあげれば」

「それができるんなら中断なんてしないわよ。実力がどれだけあろうとガキ連れて魔物退治なんてできないわ」

「ふむ……それではですね」

「困ってるようだな?」

 と、その時。柄の悪い男達が三人を囲った。

「なんか方法あるんならさ、早く教えてよ。正直、フォリナ族であることを隠してただ魔災孤児としてならなんとか施設にねじ込めるでしょ?」

「しかし、フォリナ族の特徴がとてもよく現れているその子が、誰かに気付かれないということはないと思います」

「うーん、厳しいなぁ」

 ルミナは腕を組んでうなった。

「おい、お前ら? 聞いてんの?」

「なぁ、ナナイさん」

「ちょっとファラン、なんでこの受付嬢の名前知ってんのよ」

「は? お前こそ何言ってんだよ。名前知らない相手と話してたのか?」

「名前なんて知らなくても仕事はできるでしょ?」

「でも知ってた方が親しみ湧くだろ?」

「だからなんだってのよ。……ああ、狙ってんのね、この子。悪いこと言ったわね、ごめんごめん。

 ……なんか急にムカついてきたからバニッシュぶつけていい?」

「お前プリーストじゃねえだろ」

「職業の壁なんて気合でなんとかするわ」

「気合で神の奇跡を使おうとすんな」

「はいはい私が悪うございましたよーだ。で? この受付ナナイ嬢に何か用かしら? 逢引? 二人一緒に合挽き肉にしてあげようかしら?」

「俺以外のヤツに毒吐くのやめろよな。迷惑だろ」

「はいはいごめんなさいねー。で? 早く本題に入りなさいよ」

「ずらしてるのは誰だよ……」

「あ?」

「なんでもねぇよ。それで、ナナイさん、施設ってさ、ちゃんとしたのあるのか?」

 改めて、ファランが聞いた。

「おい、お前らさぁ!」

「そうですね。国営のものはありませんね」

「て、ことはさ。経営に困って子供売る、なんてことは」

「近年、その問題が表面化しはじめましたね。あらゆる分野で他国より秀でているこの国でも、その例外ではありません。

 まぁ、子供は高く売れるそうですから」

「二人とも、私を売るの?」

「売らねえよ」

「売るわけないでしょうが」

「おぉぉい!」

 バン! と、ファランとナナイの間に割って入ってきた男がカウンターを思い切り叩いた。ファランとルミナに向かって、顔を真っ赤にして叫ぶ。

「お前らさっきから俺らのこと徹底的に無視しやがって! 舐めてんのか? あぁ!?」

 怒鳴られた二人は、一言。

「いたの?」

「がぁぁぁあ! お前らふざけてんの?」

「何の用よ? 私たち今この子をどうするか話し合ってるところなんだから。早くゴブリンなりオークなり退治しに行けば? それとも草むしりかしら?」

「バカにしてんのかっ!? と、コホン。まあ、なんだ。俺がその子、引き取る」

「さ、続き話しましょうか、ナナイ」

「呼び捨てですか?」

「ナナイ様とお呼びすればよろしいですか?」

 嫌味たっぷりな敬語に、彼女は渋い顔をした。

「……ナナイで結構です」

「わかりゃいいのよ。で、どうすればいいと思う?」

「俺に預ければいいんだよ!」

「やはり、お二人のところで育てると言うのが一番かと」

「駆け出し冒険者が? 自分だけで精一杯なのに? 子供養う? 面白い冗談ね」

「養わなくていいよ!」

「はいはいゼロはちょっと黙っててね」

「申請すれば生活費くらいは国が支給してくれますよ?」

「いらないわよそんなの。何が悲しくて国に頼りっきりの生活しなきゃいけないのよ」

「だから、お前ら! 俺らを無視するな!」

 再度、男はカウンターを叩いた。

 ここではじめて、ルミナは男たちを見た。

「で? あんたらこの子攫ってどうするつもり?」

「は? 攫うってなんだよ? 俺は引き取るって言ってんだぞ?」

「言ってるだけでしょ? なんで子供引き取ります育てますって人間がこうやって威圧するみたいに囲うのよ。ゼロが怯えてるじゃない可哀想に。で、この子を怯えさせた時点であんたに養育者たる資格はないわ」

「お前にはあんのかよ!?」

「ないからこうしてここで話してんでしょうが!」

 ルミナは男がやったようにテーブルを思い切りたたいた。手の平の痛みに、ルミナが顔をしかめる。そのあと、何事もなかったように男たちに向きなおった。

「無理すんなよ」

 ファランのねぎらいに、ルミナはきっと目を吊り上げた。

「我慢してるんだからほっといてよ! このバカ! ちょっとは空気読めないの!?」

「イヤ、お前体弱いんだから無理するなよ」

「うっさい!」

 ルミナは叫んで、男たちに噛みつくように鋭い視線を向けた。

「わかる!? 少なくともお前らにゼロを渡すもんか!」

「というかさ、お前らあれだろ、奴隷商人だろ? ゼロは売らせないぜ?」

 ファランの言葉に、男たちの雰囲気が、変わった。ニヤニヤといやらしいものから明確な敵意へと。

「……なんのことだ?」

「なんのことってそのままだけど?」

「あんたこいつらのこと知ってんの?」

 ルミナの質問に、ファランは頷いた。

「おう。超悪どい方法で小さい女の子を誘拐して、子供好きの貴族に売るって奴らがいるんだってさ」

 ルミナは頬を引きつらせた。

「あのね。口からでまかせで人を奴隷商人扱いしちゃダメよ?」

「デタラメじゃねえよ。知り合いの奴隷商人から聞いたんだ」

 ピク、とルミナは顔を引きつらせた。

「あ、あんた知り合いに奴隷商人がいるの?」

「おう。まああんま褒められたことじゃねえけど、違法じゃねえよ」

「いや……でも……はぁ、もういいわ。で? あんたら、何か言うことは?」

 呆れたような声で、ルミナは自らを囲う男たちに言う。

「人違いだ」

「そっか。まぁ、どっちにしろゼロが怯えてるしなぁ。悪いな、今回はご縁がなかったってことで」

「ふざけんなよ? お前ら困ってんだろ? なら俺らに引き渡せよ。そうしたら俺もお前もいいコトづくめじゃねぇか」

「一つ勘違いしてるわね、あんたら」

 ルミナがずい、と男の前に出た。

「な、なんだと?」

「私らは厄介払いがしたいんじゃないの。この子に幸せになってほしいの。だからまともなところでまともに育ってほしいのね。で? あんたらはなんだって? いいコトづくめ? 私たちはまともなヤツに引き取ってほしい、ゼロだって優しい人に引き取ってほしいだろうし。結局あんたしか得しないでしょうが。とっとと帰れ」

「んだとこのアマ!」

 拳を握り込み、男はルミナに殴りかかった。

 二人の間に、スッとファランが入る。

 ゴキン!

「………!」

 男はルミナではなく、ファランの甲冑を殴った。刃で傷一つつかない鎧に拳でかなうかどうかは、もはや語るまでもない。

「い、いぐっ、痛てぇ!」

「ファランより脳みそ筋肉ね。ほら、脳筋族の仲間よ、ファラン」

「俺は! 脳筋じゃねえ!」

「はいはい。にしてもこいつバカね~。隣に鉄塊があるのが見えなかったのかしら」

「だからこれは」

「鉄塊じゃなくてミスリルでできた云々でしょ? 一度言われたらわかるわよ」

「じゃあなんで鉄塊とか言うんだよ!」

「あんたの反応が面白いから」

「最悪だこの女!」

「最高の褒め言葉よ」

 うがぁ、とファランは唸った。

「ちくしょう……。おいお前ら! もう構わねえ、やっちまえ!」

 痛そうに拳をさすっていた男が、周りの男に命じる。その瞬間、彼らは武器を抜き放ち、三人ににじりよる。男たちは合計五人いて、さっきまで二人と話していた男が徒手空拳で、他の男は槍、剣、斧、ハンマーとをそれぞれ一つ持っている。

「ゼロ、こっちに」

 二人はさきほどまで言い争いをらしていたとな思えないほどあざやかに、ゼロを自分たちとカウンターの間に入れた。ガードナーであるファランはもちろん、非力で打たれ弱いルミナでさえも、ゼロを守るようにして杖を構えた。

「あの、二人とも……」

 ゼロが抗議するように声を上げたが、彼我の実力差ははっきりしていることがわかって、途中で黙り込んだ。彼らは決して強くないが、だからといってゼロがかなうような相手ではない。

「ゼロ、ちょっと狭いけど、我慢しろよ。大丈夫。俺ら強いから」

「はっ! よく言ったわね。ゼロにかすり傷でもつけて見なさい、ウインドぶつけて遥かかなたまでふっとばしてやるわ。ついでにガードナーとして再訓練してもらいに行きなさい」

「それはいいんだが、俺、お前守れねえぞ?」

 ルミナは生唾を飲み込んだ。今まで彼女は守ってもらえない状況で戦ったことがなかった。だからこそ、恐怖も大きい。

 だが。

「……構うことはないわ。ここギルドだし、死ななきゃ回復してもらえるでしょ。戦うことがトラウマになるかもしれないけど」

 彼女はそうして、不敵に笑ったのだった。

「そんときゃ一緒に治していこうな」

「……ば、バカね。普通、お前みたいな図太いヤツはトラウマなんて負わねえよ、って言うところでしょうが」

「でも、辛いことは誰だって辛いだろ?」

「~~っ。と、とにかく! 今はゼロを守るわよ! 少なくとも憲兵ともが来るまで持ちこたえるの! ナナイ!」

「もう呼んでます」

「よくやったわ!」

 にっと笑って、ルミナは周りを見た。周囲の連中を見て、なんとか敵の動きを読もうとして、やめた。

「はっ。避けちゃダメなんだよね」

 自分の後ろには、ゼロがいる。そう思うと、ルミナの心にあった僅かな恐怖が消えて行く。

「で、ナナイ、こいつら攻撃しても大丈夫よね?」

「もちろんです。殺してくださっても構いませんよ?」

「よっしゃ! 我が眼前の敵を焼き」

「おい、魔法使いをやれ! 同時に他の連中はあのガキと鉄塊に一突きしてやれ!」

「おう!」

 男が一人、ルミナに剣を振りかぶる。普段の彼女ならどうやって避けようかを考え、行動に移しているところだ。だが、彼女は。

「連なる炎を我が敵に、その悲鳴を我が耳に」

 痛みを覚悟して、詠唱を続けた。

 一瞬だけ、ファランの方を見て、期待をしてみた。だが、彼は三人の攻撃からゼロを守るので精一杯で、ルミナを守る余裕は全くないと言ってよかった。

「燃え上がれ愚かなるものどもよ」

 剣が彼女を切り裂こうとした瞬間、ルミナは男を睨んだ。

「ぐっ、『チェインフレイム』!」

 ザン、とルミナは肩から腰にかけて袈裟懸けに斬られた。それと同時に、杖から炎の蛇が生まれ、男たちを焼いていく。

「ぎゃああああ!」

 四人分の悲鳴が、ルミナの耳に届く。男たちは服と皮膚の少しを焼かれ、気を失った。死んではいないようだった。

「な……」

「ふ、ふふ。わ、私を、誰だと思ってるのよ……。魔法使いの、ルミナ様、よ」

 息も絶え絶え、血が止めどなく流れるというどう見ても満身創痍だが、それでも男は恐怖した。なぜなら、男の仲間の誰一人、死んでいないのだから。火の魔法は非常に扱いが難しいと言われる。火力が高い代わりに、雷や水のように気絶だけさせる、ということが不得手なのだ。もちろん不可能ではないが、非常に高い技量が求められる。

 四人を、斬られながらも死なないよう魔法をコントロールすることなど、よほど習熟していないと不可能である。それこそ、『魔法序列』五位以内でないと燃やし尽くすか全く燃えないかの二つに一つ。

「……我が眼前の敵を焼け」

「ひっ!」

 逃げようと、男は走り出す。が。

「『ファイア』!」

 ボン、と男の服が燃え上がった。

「ぎゃあああああ!」

 プスプスと煙を上げて、彼は気絶した。

「ゼロを怖がらせた、報い、よ」

 ぼたぼたと、大量の血液が彼女の足元に血だまりを作る。ふらふらと身体が揺らめいて、ルミナは床に倒れ伏した。

「ルミナっ!」

「ルミナ!」

 ゼロとファランが駆け寄ったところで。

「下手人はどこかっ!」

 ギルドの戸を、銀の鎧で身を固めた騎士が開けた。

「こいつらです!」

 ギルド内のほとんどが、ルミナ達に協力的な証言をしてくれた。

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