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ファンタジックな冒険譚  作者: コノハ
目指せゴブリン洞窟!
10/13

エレナ

 彼女、エレナ・フォン・フライハイトは誇り高き竜の一族だった。

 それがトカゲに劣るようになるのは、三年前のこと。

 人間だ。豚みたい。面白そう。

 その三つの言葉を思い浮かべ、でも脅かしてはいけないからと彼女は人間の姿を取って彼の、菜園伯爵のもとに立った。

『こんにちは、おじさま』

 返事は、人形使役の魔法だった。

 竜が化けていることに気付いた菜園伯爵の魔法使いはとっさに人形使役を使っていたのだ。

 本来なら罰せられることでも、菜園伯爵は笑った。

「よい。お前は私におもちゃをくれた。これは喜ばしいことだ」

 そういって、菜園伯爵は指示、エレナの注文を出していく。その注文に従い、魔法使いはエレナを作り変えていく。

「おはよ、お父さん」

 自分の体が勝手に動いて勝手に言葉を話して、エレナは例えようもないショックを受けた。

「おはよう、エレナ。では家に帰っていつものようにするぞ」

「うん。エッチしよ、お父さん」

 自分が、信じられなくなった。それからエレナが味わった地獄を、エレナが誰かに話すことはないだろう。

 そんな地獄が三年ほど続いたとき、菜園伯爵が言った。

「よし、今からゴブリンの住処に行ってゴブリンとまぐわってこい」

「うん、わかったよ」

 エレナにはわからなかった。唐突に、なんの脈絡もなくそんなことをいう菜園伯爵も、それを笑顔で了承する自分も。

 それでもエレナの体はエレナの意思とは無関係に動き、指定された洞窟へと辿り着いた。

「げぎゃ?」

 もう、私なんて死ねばいい。

 ゴブリンの前で卑猥な誘い文句と共に服を脱ぎ始めた自分に、エレナはほとほと嫌気が刺した。

 そんな地獄が終わったのは、突然だった。いきなりなんの刺激も与えられなくなったと思ったら、頬に何かが当たる感触がする。

「……おはよ。ところであなたたち、誰?」

 エレナではないエレナは、このとき始めてエレナ自身が望む問いを発したのだった。

 ルミナ、ファラン、ゼロ。

 エレナの心に刻んだのは、その三人の名前だった。あり得ないだろうがもし自分が戒めから解き放たれたとき、真に彼らの仲間となろう。そう心に刻ませるほど、三人との時間は心地よかった。


 道中は、ぬるま湯に浸かっているような優しい時間が過ぎた。

 朝早くに起きて朝食をとり、昼間まで歩いて、休憩がてらに昼食をとる。夜まで歩いて、あとは夕食をとってあとは寝る。そんな、他愛のない時間が過ぎて行った。しばらくはゲスト扱いだったエレナも、時と共に仕事を任されるようになる。それが認めてもらえたことの証左のようで、エレナは特別暖かい気持ちになった。

 そして、ゼロというフォリナ族との会話。

 面と向かって、おかしいと言ってくれた。それはなんでもないようなこと。けれど、中のエレナも、最近は自分の常識が揺らぎ始めていた。だから、ゼロにそう言ってもらえて、エレナは心から嬉しかった。

 そして、トドメの言葉が発せられる。

 力があると言ってくれた。

「そ。どんな理不尽だって、どんな仕組みだってエレナなら力づくでなんとかなるよ。ハックアンドスラッシュって、いかにも冒険者じゃない?」

 そう笑う彼女は、エレナの目には天使のように映った。

 ファランにも、ルミナにも、優しい言葉をかけてもらって、そして、救われた。

 彼らしかいない。彼ら以外のところは嫌だ。次第にエレナはそう思うようになる。

 冒険者ギルド、というところでファランはエレナに了解をとった上で受付嬢にエレナの事情を話した。冒険者ギルドは人間ばかりで怖いところだが、三人がいるのでエレナもがまんしていた。

 受付嬢とルミナが言い争いをしているうちに、エレナの恐怖の象徴が、現れた。まるで探知魔法でも使ったのではないかというほどの早さで。

「さぁ、エレナを返してもらおうか。今ならそのフォリナ族を差し出すだけで許してやろう」

 そう彼が言っただけで、エレナの頭は沸騰する。

 ゼロにも手を出す気か。この腐れ野郎。殺してやる。絶対に殺す!

 叫ぼうとしても、エレナは表情一つ変えることができない。

「おいで、エレナ」

 その言葉だけで、エレナの体は簡単に動く。彼女の意思には関係なく、まるで『人形』のように。それが悔しかった。結局は、人形。

 そう絶望したときだ。

「……」

 三人が、エレナの体を止めてくれた。不意にルミナが、エレナの瞳を覗き込む。何か語りかけるように。ルミナは僅かに術の本質に触れ、真のエレナとほんの一瞬、視線を交わす。

(私はここ! ここよ! ルミナ、助けて!)

 エレナの涙ながらの叫びは、届かなかった。でもそんなことは関係なかった。

「ほら」

「え? こ、これ、解珠? なんであんたがこんな高価なもの……」

 ファランは、時々底が見えず、エレナも不安に思うことがあった。でもその底しれなさが仲間を助けることに繋がるなら、全部許すことができた。どんなに得体が知れなくても、どんなに不思議でも、ファランなら許せる。エレナは心の中で涙しながらそう思った。

 ルミナはファランと二言三言言葉をかわし、エレナの額の前にその宝玉を翳す。

 自分を縛る枷が消えていくのを感じる。作られた紛い物のエレナが消え、エレナ自身が浮上していく。

(私が、戻る、戻る!)

 エレナは心の中で歓喜する。

(やっとだ、やっと外に出れる! やっと私は私を取り戻した!)

 パキン、と解珠が壊れたのと同時、エレナにかかった魔法も解けた。

「ルミナ」

 数年ぶりの、生の自分の声。歓喜で、涙が流れた。

「……あれ、は?」

 喜びも、つかの間だった。エレナの視界の端で、小さな体に槍の尖端を向ける不届きモノを見つけたのだ。

「……」

 すぅ、と息を吸い込む。咆哮しようとしたのだった。

 しかし、遅かった。

「みんな、大好き」

 そのみんなに、エレナももちろん入っているのを、エレナがわからないはずがなかった。そして、次の瞬間。

 ドッと、ゼロの幼い四肢を、四本の槍が貫いた。

 直後、天を突く咆哮が王国全土に響き渡った。

 

 このとき、王宮。王宮内で生活している全部の竜が、その悲しげな咆哮に同調し、遠吠えのような咆哮をした。

「……」

 王直属のブルードラゴンは、青年の姿をとっていた。王宮内で王に渡す書類を運んでいた最中だった。

「……」

 しかし彼はその書類を放り出し、王の元へとかけた。

「失礼します、陛下」

「何用か」

「長い間行方知れずだった竜王様のお声がこの耳に届きました」

「それはよかったな」

「悲鳴なのですが、『王』。釈明は」

「……我は知らん」

「しかし、条約に則り、全竜を調査に向かわせます。よろしいですね」

「バカを言うな。今日急ぎの要人を運ぶ任がある竜だっている」

「竜王様に関しては全ての条約、約束に勝るとの取り決めでしたが?」

「……わかった。ただし、お前がまず調査し、必要ならば好きに調査人数を割り当ててもかまわん。だが、最初から全竜を動員するのは非効率だ」

「わかりました」

 青年はそういうと、失礼しますとだけ言って、ベランダから外に飛び降りた。人の身体から本来の姿である青き竜に戻り、悲鳴の出どころ……冒険者ギルドへと向かった。王宮から冒険者ギルドは離れており、馬でかけても少しの時間がかかるだろう。だが、彼にとってこの程度の距離は数歩歩く感覚とそう大差なかった。

 その青き竜が冒険者ギルドの上空にたどり着いた瞬間、それは起こった。冒険者ギルドの屋根が吹き飛び、中から全長七メートルはあろうかと言う金色の竜が姿をあらわしたのだ。

 全身に生えた、金色の鱗。その鱗はただの金色ではなく、みる角度によって色を千変万化させる不思議なものだ。コウモリのような翼に、しなやかで力強い尻尾。比較的短めな前肢に、全体重を支えることができる後ろ足。鋭角的なフォルムの顔には、鋭い牙がずらりと並んでいる。その鋭い瞳には、激しい怒りが灯っている。

「よくも、よくもゼロを、ゼロを!」

 幼い竜が聞いたらそれだけで気絶してしまいそうな怒号に、青き竜は身を竦ませた。温厚だったはずの竜王。一体何が、竜王様を怒らせたのだ、と。

「竜王様!」

 叫んで近づいた彼は、絶句する。昔は人間など歯牙にもかけなかった竜王が、小さな、たかたが鎧を着て武器を持っただけで強いと勘違いするような人間に、全力で攻撃しようとしている。そんなことをすればここら一体が火の海になる。

「竜王様、怒りをお鎮め下さい!」

「うるさい!こいつは、私の友達を、仲間を! 冒険者の手足を、奪ったのだっ! 許せるものか、殺してやる!」

 友達、仲間? 青き竜は驚いた。

「竜王様。ここまま暴れなさるとそのご友人も傷つけます。取り敢えずは人の姿をお取り下さい!」

「……断る」

「なぜですか?」

「断る。お前がはからえ」

 青き竜は怪訝に思いながらも、御意に、とギルド跡へと降りながら人の姿を取った。

「して。誰だ竜王様の怒りを買った者は?」

 青き竜が聞くと、一人の豚もどきが彼に擦り寄った。

「あ、ああ、あ、あの者たちです! あの者たちが、りゅ、りゅ、竜王様のお怒りを! ブルーメ様、ヤツらを!」

「貴様に名を呼ぶことを許した覚えはない」

 いいながら、青い竜、ブルーメは爪の一つを剣のように変化させ、握りこんだ。竜族の爪は、人の姿であれば取り外しができるのだ。爪の剣を握り、鎧を着込んだファランと顔を青ざめているルミナの方へと向かう。

「青き竜様。その豚もどきの言うこと、信じんの?」

「無礼者が。礼儀をわきま……」

 ゾッとして、ブルーメはそれ以上言うことは抑えた。

「貴様が弁えろ」

 頭上から、竜王の声が降って来る。怒号ではない。だがそちらの方がまだよかったと、彼に思わせるほど冷たい声だった。

 竜は竜王に従うもの。そう魂に刻まれているからというだけではない。

 優しく穏やかな竜王様に戻って欲しい。切実に、彼はそう思っていた。

「……この者たちが原因では、ないのですか?」

「そろそろ貴様が怒りの原因になりそうだ。倒れている幼子を治療出来たなら、先ほどの無礼も不問にしよう」

 ブルーメは慌てるようにギルドの中を探った。

 すると、四肢を四本の槍に貫かれ、床に縫い止められている少女、ゼロが目に入る。ブルーメは小走りで彼女に駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

 治療魔法をかけながら、ブルーメはゼロの槍を抜いた。血があふれ出てくるが、致命傷ではない。死なせずに済んだことに、彼は内心で胸をなでおろす。

「ぐっ……え、エレナ、は? エレナの魔法は、とけた?」

「魔法?」

 なんのことだ? とブルーメは疑問に思いながら、丁寧に治療を続ける。何の因果か、とにかく竜王様が執心の少女だ。手荒に扱うわけにはいかぬ。

 ブルーメはそう思いながらも、どう『言い訳』するかを考えていた。

「冒険者、ですか?」

「え? ……うん、すごい、でしょ?私、エレナを守るために、魔法使い、やっつけたんだよ」

 ブルーメはそばに転がっている魔法使いに視線をやる。死んではいない。死ぬギリギリで自分に治癒魔法を使ったようだった。

 あるいは死んだふりをしているのかもな。ブルーメは心の中で嘲笑して、すぐに気を引き締めた。

「……自分に何が起こったか、わかりますか?」

「わかる、よ」

 それなら理解も早いだろう、とブルーメは胸を撫で下ろす。

 もうこの少女は冒険者稼業などできない。神経が絶たれており、体を作り変えるでもしない限りこの少女は立ち上がることすらできないだろう。

「……あなたが助けた人がどのような人か、ご存知ですか?」

「ドラゴン、だよね?」

 ブルーメの目が細くなる。もしや何か利権を狙って助けたのか。そんな疑念がチラリと彼の中で生まれた。

「では、どのような」

「ブルーメ。尋問をしろと言ったか?」

 上から高圧的な言葉が降って来て、ブルーメは身を竦ませた。

「も、申し訳ありません」

「治療は済んだか」

「は、はい」

「ゼロが死ぬ可能性は?」

「ありません」

 ブルーメは断言した。死ぬことは絶対にない。

「そうか。……ふぅ。すまなかった。頭に血が登っていたようだ」

 ほう、と息を吐いたのは何も竜王エレナだけではない。この場にいるゼロ以外の全員が、張り詰めていた緊張を解いた。

 だが、例外もいた。

「さて、と。菜園伯爵。貴様をどう料理してやるか」

「竜王様?」

「恨みは晴れぬ。私にした所業はもとより、ゼロに行った仕打ちはなおのこと!」

 その言葉に込められた怒りと憎しみはすさまじく、今すぐにでも復讐をおっぱじめかねない。

「貴様、竜王様を怒らせたな」

 ブルーメは怒りを露わに、菜園伯爵に詰め寄った。このまま手打ちにすれば、竜王も鎮まるだろう。そう彼は考え、剣を振り上げた。

「ひ、ひいっ! わ、私は王国に貢献して来た! わ、私を殺せば民の生活はどうなる! 誰が安定して民に野菜を届けるのだ!」

「もう届ける必要はない」

「は?」

 竜王の言葉に、ここにいる全員が凍りついた。

「な、なにを、おっしゃって……」

「届ける相手が、今日限りいなくなるのだ」

 ポッ、ポッ、ボッボウッ。

 竜王の口から、炎が漏れる。何をしようとしているのか、ブルーメはたやすく理解した。この国を滅ぼすつもりだ。竜王のブレスは滅びそのもの。こんなところで、私怨で使っていいものではない。

「りゅ、竜王様、怒りをお鎮め下さい。ご、ご友人も巻き込みます!」

 ……ゆっくりとだが確かに、エレナは炎を引っ込めた。

「だが、許すことはできぬ」

「竜王様、菜園伯爵がこの国に必要なのは確かです」

「ならば何をしても許されるのか! 幼子の四肢を奪ったことは許されるのか! あの娘達にした鬼の所業は許されるのか! どうなのだブルーメ!」

 彼は、何も答えない。エレナから湧き出るような圧力に、何も言えない。もう自分は失言を繰り返しすぎた。次何か竜王の気を損ねるようなことをいえば、即座に豚もどきもろとも燃やされるだろう。そう直感した。

「答えろブルーメ! なぜ私がヤツを殺してはならない! 答えぬというなら、貴様も!」

「ダメ!」 

 叫んだのは、虫の息だった少女だ。

「……ゼロ」

 エレナの怒気が、立ち消える。

「なぜ、ダメなのだ。お前だってヤツの仲間に刺され、そうして地面に這いつくばってるではないか」

「うん。でも、そのブルーメって人が、私にこんなことしたんじゃ、ないよね。怒るのは、仕方ないけど。怒る相手、間違ったら……後悔するの、きっと、エレナだよ」

 そう言って、ゼロは気を失った。

「ゼロ!」

 ファランとルミナが、ゼロに駆け寄る。

「……熱があるわ。ってそりゃそうよあんなに攻撃食らって無事なわけが……」

 テキパキと、二人は普段の仲の悪さは何処吹く風でゼロの体を見て行く。医者というほどではないが、仮にも冒険者、人の身体にはある程度詳しい。

「ルミナ、どうみる?」

「血を失って弱ってる。まだ危険域」

「医者に行けば治るか?」

「無理ね。マジックマスターのところいって血を作って貰わないと」

「マジックマスター!? んな無茶な」

「無茶って、あんたなんとかならない?」

 自分が、と言おうとしたエレナをさえぎり、ファランが相槌を打った。

「ダンタリアンだ! あいつならきっと」

 パシンと彼の頭をルミナが叩いた。

「誉れあるマジックマスターをあいつ呼ばわりするな!」

「いいだろダンタリアンなんだし! いくぞルミナ!」

「待って!」

 ゼロを担いで走ろうとした時、エレナが引き止めた。

「どうしたエレナ?」

「仲間でしょ? みんな、私の背中に乗って」

 シュルシュルと音を立て、エレナは縮んでいく。二メートルくらいの一般的な騎竜の大きさになった。

「お、おう、ありがとエレナ! ダンタリアンのいるところはわかるか?」

 エレナは某然と突っ立っているブルーメに視線を向けた。

「えっ……はっ、先行します」

「ごめんね、ブルーメ。みんな、乗って」

 わかった、と言ってまずルミナが、そしてルミナはゼロをファランから受け取ると、大事そうに抱きしめる。

「えっと、鎧脱いだ方がいいよな?」

「当たり前よバカ! エレナにこれ以上重たいもの乗せるんじゃないわよ!」

「わかってるから怒鳴るなっての」

 ガチャガチャと慌てて鎧を脱ごうとしているファランを、エレナが止めた。

「いいよ、ファラン」

「でも、重くねぇか?」

「私にとって重いっていうのはお城とか国とか大陸とかを言うの。ほら、乗って」

「おう」

 ファランは頷くと、なんとか飛び乗ろうとする。が、鎧がうまくどうにもうまくいかない。

「乗れん。やっぱり脱ぐ」

「いいってば。魔法で軽くしてあげる」

「でもこの鎧そういう魔法も全部」

「『浮け』!」

 その一言で、ファランの体はふわりと浮き、エレナの背中に収まった。

「おおっ!?」

「ふふふ。じゃ、ブルーメ、よろしく!」

 そう言って、エレナは金色の翼をはためかせて飛び上がった。本来なら風より早く動けるはずの彼女は、背中の三人を気遣い一般的な騎竜の速さで飛んだ。

 先行するブルーメ、そして追随するエレナ達以外、上空には誰もいない。

「ブルーメ、帰ったら里帰りの準備始めて」

「やはり、帰られますか」

 ブルーメはため息をついた。

「もう人間に加担なんてしてやらない。……あ、でもファラン達は別だよ。仲間だもん」

「そりゃそうだけどよ、大変じゃね? 冒険者と竜王兼業するの」

「貴様は何を言っとるか! 竜王様は竜王という仕事に就いとるわけではないのだ!」

 ブルーメは苛立ちを隠さず叫んだ。

 もともと、エレナを騎竜代りに乗るということすら許せないのだ。しかも竜王を職業だと思っているなどと。

と、こんな感じでブルーメは怒り心頭なのだ。

「ブルーメ、怒鳴らないで」

「……はっ」

「で? ダンタリアン様は国のどこに居られるの?」

「ん? 山んなかで厭世家気取ってるよ」

 スパン! とルミナの杖がファランの頭に振り下ろされる。

「効かねえよ」

「うるさい! あんたバカでしょ!? 担ぎあげて親しそうにしてたからてっきり謎の交流そのいちかと思ってたら国外のそれも山の中? ドラゴンの領地でしょうが! 襲われたらどうするのよ!」

「ルミナ、今のルミナを襲おうとするドラゴンがいたらそれはもはやドラゴンって呼べないよ」

「へ?」

「私、ドラゴンだよ?」

「竜王様、ご謙遜を。はっきり名乗ればよいのです。ロードドラゴンだと」

「……ロードドラゴン?」

 ルミナはようやく、ほうけたような声を上げた。


 世界最強と言われるドラゴン。その上位に位置する竜王たるロードドラゴン。

 しばらく、ルミナは呆然自失で何も言えなかった。

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