最終章 その後…
弘章は、最期に遺言のようなものを残し、逝ってしまった…。
お通夜の晩に、マンションの彼の机引き出しの中から、遺品ともいえる彼の日記帳らしきものが見つかった。
それには綺麗な字で、次のように書かれていた。
若者よ、中年よ、今こそキミ達は言える時だよ。何をジレンマと感じ、そしてそこから何を感じ取ったかを。
おい、おまえらそこで立ち止まっていていいのか? 止まってしまったら、もはやそれ以上先へ進むことは絶対ない。それでいいのか? 本当にそれでいいのか?
進取の気性を忘れるな! 踏みとどまるな! 自分がもうこれでいいと思ったなら、繰り返すが、もうそれ以上前へ進むことはない。まだまだもっとやれると思ったら、目の前に自ずと道は拓けてくるはず……。
キミ達、かつてのアメリカのフロンティア・スピリットを持って、願わくばこの世をより良い方向へとチェンジしていく必要が大いにある、そうは思わないか? オバマ大統領もその就任当時、"Change! Change! " と繰り返し叫んでいたではないか!
今こそキミ達は立ち上がる時だよ、現況を打開するために。新しい政権を築き上げるために。繰り返す。この世をより良い方向へ、変革するために……。
生きるということは、悟りを開くということではないのか? 誰もが皆、その人生において戸惑い、思い悩み、ときには大失敗もする。
この意味で、人生の苦悩と挫折を繰り返し、どん底を味わってきた人間ほど、本当の意味で強いと言えるのではないだろうか?
立ち止まり、苦しみ、ときには哀愁にかられて過去の良かった頃の思い出に浸ったりもする。だが過去を振り返ることは、必ずしも間違いではない。過去から何かを学び、気づかされ、そして未来に向かって何らかの教訓なりヒントを得る。これが重要なポイントと思われる。
大事なのは、人生に向き合う姿勢・態度。あるいはそれは、直感とも言い換えることができるであろう。本気で生きているかどうか? その辺である。
昔は不言実行と言われたが、今はそうではない。むしろ有言実行! 自ら発言したことによって、「あゝ、俺は言ってしまったのだから、やらなければ…」という責任感がそこに生まれる。
そして我武者羅に生き、その自分で言った内容のことを現実に実現していく。もはやそれしかない! 脇見などしている暇はどこにもない! 決して人生を諦めてはならない! 希望を捨てないこと! 信じてみること! もう一度、人生を歩き始めよ! そして歯を食い縛って、そのドン底から這い上がれ!
願わくば各々、自分の輝ける未来に向かって突き進め! ひた走れ! 羽ばたけ! そして甦れ! そのために必要な経費とあらば大いに使うが良い。ある程度、自分に投資してやるという局面を忘れるな! それは紛れもなく生きた金となる。やがて何倍にもなって自分にはね返ってくる可能性だってある。
後退するな! 前進あるのみ! 失敗を恐れて何もしないまま留まっているだけの人生ならば、そんなものやめた方がいい。前に出て失敗するなら、それは大きな人生の糧となるはず。そして常に、物事に対し問題意識を持て! いつの時も向上心を忘れるな!
本当の敵はほかでもない、自分自身だ! 己れに勝つこと! それしかない! そして、本当の自分を取り戻すのだ!
最後に、周りにいる人達を大切にせよ。人脈=自分の最大の財産。彼らはキミ達の、偉大な協力者でありまた味方である。
このメッセージが、葬儀の合間、代表者により丁寧に読み上げられ、弘章の両親や2人の息子・友作と善勝や元妻の典子と秀子や私は、それを聞きながらその場で肩を寄せ合い、溢れ出る涙を止めることが出来なかった……。
完
この作品は、あくまでもフィクションであり、実在のものとは一切関係しません。




