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ワールド1

テーマは『癒し』。みなさんも、僕の世界を一緒に体験してください!

〜祖父と戦争〜

「人はなぜ必要以上に、力を欲しがるのか!大切な人を守れるだけの力を持っていれば、十分であるのに…。」

祖父が繰り返し熱弁した言葉。

普段、涙を見せない頑固な祖父が、男泣きしてしまう話。それが、戦争の話。

ニュースで、外国は戦争がまだ起こっていることを発表する度に、祖父は語るのだった。

「日本は、今は平和じゃが、昔は戦争が起こっていた。わしがまだ、おまえくらいの頃じゃ。」

…と言われても。

「それは、それは悲惨なものじゃった。辺り一帯、火の海。泣き叫ぶ人々。楽しんでいるかのように、爆弾を落とし続ける飛行機…」

祖父は、そこで話を止めた。固く握られた拳が、怒りのあまり震えている。

僕には、わからない。戦争が悲惨なものだってことは分かるけど、学校の授業と、祖父の話でしか戦争を知ることができないから。

「どうして…。」

祖父は、小さい声で、かろうじて聞き取れる声でつぶやき、うつむいた。

戦争か…。祖父の話し方、涙ながらに語るところから考えると、悲しいものなんだろうなあ。実際に戦争を体験し、母をなくした祖父が言うのだから、本当なんだろうなあ。もし今、戦争が起きたら、僕や僕の家族、友達…。みんな、どうなるんだろう?

祖父の話を聞きながら、僕はぼんやりと考えていた。


とある日。祖父が、懐かしそうに古びたコインを眺めているのを発見した。今まで見たことのないコイン。

「それ、何?」

僕は、祖父にそっと近付いて、聞いてみた。祖父は、まるでいたずらをしているのを見つけられた時の子供みたいに、ビクンと体を痙攣させた。

それから、ゆっくりと振り返って、恥ずかしそうに笑う。

穏やかな笑みだった。えくぼがほげていて。

「これはな、約束のコインじゃ。」

「約束のコイン?」

錆だらけで、彫ってある文字さえ見えなくなっている、もと金色のコインが?百円玉くらいの大きさで、薄さも同じくらい。

祖父は、僕に近くに座るようにと、言った。僕が、うんと返事をして隣に座ると、今度は僕の掌に、そのコインを優しく載せた。

そして、語る。

「このコインは、ばあさんとの約束なんじゃ。わしが指輪の代わりに、プレゼントしたコインなのじゃ。…ばあさんが使っていた、桐タンスの引き出し三段目の奥深くに、しまわれていた。ばあさん、大事にしててくれたんじゃなあ。」

目を細めて、遠くを見つめる祖父。

「孫よ。頼みたいことがあるのじゃが…」






「なに?」

「わしが亡くなったら、このコインをわしの墓に埋めてほしい。」

「いいよ。でも、いいの?」

祖父は、僕の手をぎゅっと握った。少し痛い。

「いいんじゃ。ばあさんとの約束を果たすためにも、これはわしが持っておきたいんじゃ。…天国に行ったら、ばあさんにもう一度プレゼントし直すつもりじゃから。」

そう言って、照れ臭そうに頬をかく祖父は、僕と同い年の少年のように見えた。


そのできごとから、3年後。祖父は、帰らぬ人となった。85歳の夏だった。

僕は、祖父の墓の地面に浅く穴を掘った。コインをそこにそっと置いて、土を被せて埋め直した。

おじいちゃん、おばあちゃんと仲良く、いつまでも幸せに暮らしてね。あ、コインを渡すのを忘れないようにね。


母さんは、祖父のことを

「なんでお父さんは、あんなに頑固なのかしら…?私が帰ったら、『飯だ!飯!腹が減ったぞ!』って言って、『今からしますよ。』って答えると、『早くしろ!』だもの。はあ、もう嫌だわ。」

って。

父さんも、

「お義父さんは、気難しい人だ。…本当になぜああなのか。」

と愚痴をこぼす。

けれど、祖父は本当は照れ臭いだけなんだ。いつも、僕にだけ話してくれた。

『頑固オヤジだと娘と婿に、思われてることじゃろう。…でも、おまえだけは誤解しないでくれ、孫よ。わしは、本当は…』

その続きは、僕の心の中にしまっておいた。

いつかは、母と父に話すつもりだけど、それがいつになるかは、僕にもわからない。


なんとなく作ったつもりが、友達に大評判でした。まだ続きもありますので、評判が良かったら、のせます☆

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