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新たな仲間、交差する道(前編)

 大きな音に振り返ると、ヒト型が氷漬けにされていた。氷の中にはヒト型が固まっていて、全く動かない。ヒト型達がざわめく。


「みんな、おちついてよ!」


そう声を張り上げたのは、男の子だった。周りのヒト型たちが一斉に、一帯に広がった。くまなく探しているようだ。


「まだちかくにいるはずだよ!」


 柊の後ろのほうでカサコソ音がした。柊にしか聞こえなかったのか、ヒト型は気づいていないようだ。振り向いてみると、人影が・・・。その人は静かにとでもいうかのように、口の前に自分の指を立てた。そして、瞳が赤く光る。刹那、それまで柊を縛り付けていた拘束具が氷に覆われ、パキッと割れた。柊は自由になった。しかし、逃げようとすると行く手を塞がれた。ヒト型のリーダーに・・・・・・。


「お兄ちゃん、どこいくの?」


 そう言うと、別のヒト型が大きな爪と化した腕で襲いかかってきた。彼らの化けの皮が剥がれた。柊はギリギリのところで能力を発動し、その動きを止めた。吹っ飛ばそうとしたが、ヒト型のお腹あたりがちょっとへこむだけだった。そのまま、また捕まってしまった。どうやら念動力は人型に対して、効果が薄いようだ。後ろから来たヒト型クリーチャーが、不意打ちを仕掛けてきた。が、瞬く間に氷漬けにされる。


「だれ!?」


男の子が叫んだ。その隠れていた人は見つけ出され、捕まってしまった。

隠れていた人は眼鏡をかけ、いかにも真面目そうな顔だちをしていて、髪を七三分けにしていた。その手には電子辞書のようなものを持っている。そんな姿の彼は、古典的な超真面目エリートの模範のようだった。他のヒト型がぞろぞろと集まってくる。


「お、お兄ちゃん。どうすればいいの?」


 男の子がおずおずと質問した。捕まった人は、その幼い子供を睨みつける。その凄みに男の子は身体をビクッと震わせた。涙目で柊を見る。それは助けを求めている瞳でもあった。二回目の・・・・・・。


「このヒト型のクソガキめが。俺らの仲間をあんな目に合わせやがって、ただで済むと思ってんのか?」


彼の外見はすごく真面目そうなのに、言葉が汚い。その人が不敵に嘲笑う。ヒト型達が身構えた。幼い男の子が、一生懸命抗議しようとする。


「ち、ちがうの!ぼくたちは、にんげんをおそうなんてことはしないよぅ!」

「じゃあ、あれはなんだ?嫌がらせか?」

「あ、あれは、ぼくにもわからないの!いつの間にかあんなのがあって・・・」

「ざけんな・・・・・・。いいかげんにしろ」

「ち、ちがう!ちがうの!」


 子供の言うことに耳を貸そうとしない彼は、その目を赤く光らせた。柊はとっさに能力を発動し、幼い男の子の氷漬けを防いだ。


「てめぇ、何様のつもりだ?」

「話、聞いたらどうでしょうか?」


 能力者は口をつぐんだ。柊は男の子に問う。


「違うって、どういうことなの?」

「お、お兄ちゃん・・・・・。うわああぁぁぁぁぁぁぁん!」


 男の子が自由になった柊にしがみつき、泣いた。子供をあやす柊。ようやく収まると、男の子は口を開いた。


「・・・・・・ひくっ・・・くすん・・・・・・聞いてくれる?」

「うん。大丈夫だよ。」

「・・・あのね、ちょっとまえにね、おとこのひとがふたり、おんなのこがひとり、ここをうろうろしていたの。」


 柊は何かを感じた。


「その人の特徴は覚えてる?」

「・・・・・・よるだったから、みえなかったの」

「・・・そっか。」

「ごめんなさい。ほかのひとなら、わかるとおもったの・・・・・・」


 それだけ言うと、男の子はうつむいてしまった。男の子の言ったことが本当なら、このヒト型たちは罪を擦り付けられたようなものだ。一体誰がそんなことをしたのだろう。柊は思索を巡らした。

 その様子を怒っていると捉えたのか、男の子が言った。


「うぅ、ごめんなさい。ごめんなさい」

「あぁ、気にしなくてもいいよ。別に怒ってないから。こっちこそごめんね」

「ううん、だいじょうぶ。」

「そっか。じゃあ、彼を話してくれるかな」

「うん、わかった」


 能力者は自由になったが、特別動くこともなく、じっとしていた。


「じゃあ、君たちは元の場所に戻っていいよ」

「うん、お兄ちゃん、ありがとう!」


 そう言うと、男の子は嬉しそうに顔をほころばせた。周りのヒト型は去っていき、男の子もついていく。最後に男の子は柊に振り返ったが、数秒後に姿を消した。

 能力者が話しかけてきた。


「お前、甘いな」

「でも、誤解が解けたみたいで良かったです」

「まぁ、確かにな。甘いからこそ出来ることもある。気に入ったぜ」

「は、はい?」

「今回の件は解決したということにしてやらぁ」

「は、はぁ・・・」


 柊は不意に肩を組まれた。めちゃくちゃ馴れ馴れしい。そんなことを見透かされたのか、こんな事を言われた。


「援助、ご苦労さん。俺、川原イチヨウ。氷結の能力者だ。馴れ馴れしいのは俺の性格。気にすんな。お互い仲良ぉ~くやっていこうぜ」

「あ、僕は柊レイ。念動力の能力者です。よろしく・・・」

「そかそか。お前って真面目なのな。ヨロシク~」


 二人は帰りの道中で、話が弾んでいた。河原イチヨウは、柊レイと同じく2037年の時代からやってきたそうだ。年齢も柊と同じである。

さらに、彼の持つ電子辞書は、なんと電子辞書ではなく、小型のパソコンだった。ポケットサイズのパソコンだから、略して『ポケコン』と呼ばれている。しかも核バッテリーを使用し、防水・防塵・防炎の加工がされていて、ダイヤモンドの5倍ほどの強度を誇るという。壊れることはまずないが、壊れたらあたり一面に放射能を撒き散らすという。また、衝撃にも強く、データが消えることは絶対ないと・・・・・・。そんなものがあることに柊は驚いた。到底、彼らの出身時代ではありえない代物だからだ。


「だ、大丈夫ですかっ!?」


 シェルター地下2階に戻った時、受付の女性に真っ先に言われた。川原の服がぼろぼろだったからだ。

が、傷はしっかり治っていた。柊の念動力のおかげだ。まさか、傷を治すことまで出来るとは思いもしなかった。ほぼ万能の力だと改めて思った。


「よ、良かった・・・・・・。ご無事で・・・」


解決したと報告して報酬をもらった後、二人は近くの更衣室に入り、新しい服に着替えた。柊は川原から食事に誘われた。近くにレストランがあるのだ。

 小奇麗なレストランに入ると、店員が話しかけてきた。


「いらっしゃいませ~」


と声をかけられ、席に案内された。その席の隣の席にいたのは、水瀬と女の子だった。どうやら、彼女たちも任務を終え、ここに来たようだ。

このころには、柊と水瀬は打ち解けていた。まだ緊張はするが、前までのようなぎこちなさはなくなっていた。


「レイ君。調子はどう?」

「すごくいいよ」

「何言ってんだ。任務でやられそうになってたくせによ」


川原が口を挟む。水瀬が目を丸くする。


「えっ・・・そ、そうなの?レイ君」

「あ~、えっと・・・」


水瀬の隣にいた女の子が立った。しっかり見ていなかったから気付かなかったが、背が低く、髪をツインテールにしている。見た目は10歳くらいだろうか。その子が川原を睨みつける。女の子と川原のやり取りが始まった。


「あなた、あのときの・・・」

「ん?あぁ、あのときのちびっこか。何か用?」

「・・・ちびっこ・・・?そう見えますの?」

「どう見たってちびっこだろ?」


 川原がからかう。彼女はむすっと唇を尖らせた。その様子が彼女をますます幼くさせている。


「失礼ですわね。あたしはこれでも20(はたち)ですわ」


それを聞いた時の柊と川原の表情は、彼女にとって滑稽なものだったのだろう。彼女がプッと小さく吹き出した。


「と、年上ぇ!?」

「そうと分かればよろしくてよ。ふふん」


年上の女の子は鼻を鳴らした。川原が呆気に取られていた。柊と水瀬はその様子に微苦笑していた。そのあと、20歳のその人は柊に言った。


「あなたが水瀬の言う『柊レイ』君ですのね。あたしは花形(はながた) ミサキ。よろしくお願いいたしますわ」


これが新しい仲間であり、新しい『友達』との出会いだった。






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