表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/32

穏やかな道

 次の日がやってきた。柊はベッドから起き上がると、白い部屋からテレポーターで地下2階へ向かった。白い部屋は清潔だけど、どこか無機質な感じがしていた。だから柊は、さまざまなアイテムなどを売っている地下2階で買い物をして、模様替えをしようと思い立ったのだ。

柊は妙にふわふわする感じがした。体がだるいわけではない。水瀬と模様替えグッズを買うというだけなのに、なぜか緊張してしまう・・・。


「まだかな・・・?」


 柊は独り言をつぶやいた。そのとき、彼の背中を水瀬の華奢(きゃしゃ)な指が突っついた。


「おはよう、レイ君。」


柊が振りむいたところを、水瀬が言った。柊も挨拶を返す。


「あ、おはよう。水瀬さん。」


目が合い、しばらく見つめ合っていた。そして、お互いに頬を少し紅潮させてしまった。柊は目をそらしてしまう。水瀬もうつむいてしまう。


「そ、それじゃ、行きましょ?」


そう切り出したのは水瀬だった。二人はまず、今いる場所から一番近い家具店へ向かった。何から買おう・・・。でも家具を買った後は、どうやって運ぼう・・・。そんなことが顔に出ていたのか、水瀬が話しかけてきた。


「大丈夫。買った家具はテレポーターで部屋に送れるから。」

「そ、そうなんだ・・・。」


あの白い部屋の中は、ベッドと机以外は何もなかった。キッチンルームもあるけれど、冷蔵庫や包丁などの物は置かれていない。ポイントが多いわけではないので、たくさんは買えないだろう。とりあえず柊は水瀬と一緒に、長い時間家具を見回っていった。そこで椅子を買った。それ以外は、もう少し貯まってからにしよう。


「椅子だけでいいの?」

「あ、うん。ポイントもそんなに多くないし・・・。」

「じゃあ・・・。」


二人はレジに向かった。けれど、誰もいない。その時だ。


「イラッシャイマセ。オカイケイデスカ?」


突然、電子音が聞こえた。どうやらレジといっても、セルフレジのように無人らしい。

 が、その「セルフレジ」とも違うようだ。円盤の付いたチューブのような機械が出てきて、商品のうえに止まる。ピピッと音を立てたかと思うと、値段がディスプレイに表示された。600pt・・・。


「画面にカードをかざして。」


 言われたとおりに、カードをかざした。ほんの一瞬かざしただけで計算が終わり、そのまま持って帰れるのだそうだ。柊はカードを見た。600ptと書かれている。水瀬は棚を買った。そして、その棚を柊にプレゼントするのだという。


「そ、そんな、受け取れないよ。」

「いいから、いいから。物を片付けるためには必要でしょ?それに・・・・・・。」

「それに・・・?」

「あ、何でもない。いいから、受け取って。」


 結局、棚をもらうことになった。水瀬はテレポーターで家具を柊の部屋に送った。テレポーターって便利だなぁと、柊は思った。それからはいろいろなところを回っていった。水瀬が案内してくれた。


「ここが、武器を売ってるところ。いろんな武器があるから、どれか選んでおくといいよ。」


武器屋の店長が顔を出した。武器屋なので、ごつい男店長かと思いきや、活発な女性だった。しゃべり方は男性っぽいが・・・。


「ようよう、らっしゃい。今日もいろんな武器を揃えてんぜよ~!」

「あ、ポイントないんですけど・・・。」

「そんなこたぁ、気にしなさんな。ほらっ、ダガーナイフとハンドガンだよっ。今回はプレゼントさ。次からウチをひいきにしてくれッ!」


 柊はダガーナイフとハンドガンを、気前のよい女店長からもらった。


「あ、ありがとうございます・・・。」

「あいよぉ。頑張れよッ!」


戸惑う柊。それを見て、プッと吹き出す水瀬。そのほかにも、いろいろな店があった。いろいろあったけれど、水瀬の案内は無事に終わった。


「歩き回って、疲れたでしょ?」

「うん。どこか休めるところある?」

「ん~、あそこに行こっ。」


水瀬に誘われて、柊はついて行った。そこは休憩所だった。連なっているベンチがあり、その近くに自動販売機があった。これもポイントで払うようだ。水瀬は『紅茶レモンティー』を買った。その後に、ベンチに座り、紅茶を飲み始めた。


「レイ君も飲む?」


そう言って差し出したのは、水瀬の飲みかけの紅茶だった。柊は紅茶を手にした。そして、少しだけ飲んだ。水瀬は、自分の口を付けたものを柊が飲んでいるのを見て、ハッとした。


「ありがとう。」

「あ、う、ううん。い、いいよ・・・。」


 柊から紅茶を手にするも、水瀬はうつむいていた。その顔は紅潮している。それに気付いた柊は、ハッとした。『間接キス・・・しちゃった・・・・・・。』。二人は、頭から湯気が出そうな気がした。


「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」


二人は黙り込んでしまった。しばらくの間の後、話を切り出したのは柊だった。


「さ、さっきは・・・なんていうか・・・その・・・ごめん。」


水瀬はふるふると首を横に振った。


「あ、え、えとっ、大丈夫だから・・・。の、のど潤った?」

「う、うん。ありがと。」


 それからずっと二人は、他愛(たわい)のない話を交わした。そうして、時間が流れていった。夜にあたる時間になったとき、二人はさよならをして、お互いの部屋に戻った。部屋に戻った時、その白い部屋に棚と椅子が置かれてあった。柊はそれらを思い通りの場所に置くと、白いベッドに身を投げた。

 そして、ボーッとする。柊の心の中には、何かモヤモヤしたものがあった。これが恋って言うのかな・・・。

 そっと寝返りを打った。柊は、こんな生活が続いたらいいなぁ・・・と考えていた。






 が、しかし、そうはいかないのが現実なのである・・・・・・。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ