未来へ繋ぐ、運命の道標
柊と水瀬はもちろん、出月も生きている。川原と花形も生きている。沢渡コウスケとその孫3人も生きている。
柊と水瀬は自分たちの子供も生きていることを沢渡から聞いた。二人は会おうとしたが、子供が行方をくらませてしまったために会うことも出来なかった。
川原と花形は、クレアと対峙していて殺されかけたが、間一髪のところで沢渡コウスケの孫に助けてもらった為、命を永らえることが出来た。その後、クレアも行方知れずになったらしい。
そして、あれから10年。彼らは大人になった。
沢渡コウスケは刑務所を出た後、今までの罪を償う為に教師をしていた。彼の孫である3人は祖父の沢渡コウスケと共に生活していた。マリアは教会の修道女として、オリビアは剣道の師範として、アリスは自然愛護家として、それぞれの職業についていた。
出月は、最年少にしてギルドをまとめるリーダーとして活躍していた。
それから、どこかの公園で。
「楽しみだね。僕らの子供」
「えぇ、よい子に育ったらいいわね」
そう会話しているのは、柊レイと柊ユキネ。ユキネのほうは妊娠6ヶ月だ。あと3ヶ月ほどで赤ちゃんが生まれるのだ。
彼らは籍を移し、結婚を終えた後だった。そんな新夫婦のそばには、もう2人の新夫婦がいた。川原イチヨウと川原ミサキだ。こちらにはすでに1歳の子供がいて、二人目の子供がミサキの腹の中にいる。
「あれから10年か。もうそんな年なんか」
「早いですわね」
4人はしみじみと、シェルターの中のかなり広い公園の中心に座っていた。4人は空を見上げている。空は実のところ天井で、本当の空ではない。しかし、その天井は外の赤い空ではなく、綺麗に澄んだ青空を映し出していた。
「今度はきっと、平和で幸せな未来が来るよ」
「その未来は私たちが自分で切り開いていくのよ」
柊レイに同調して、柊ユキネも言った。
「そうだよ。僕ら人間だけでなく、全ての命にはまだまだ可能性が秘められているんだ」
「おいおい、柊、何カッコいいこと言ってんだよ!?」
「え?いや、僕は思ったことを口にしただけなんだけど・・・・・・」
「それであの台詞か?いろんな意味でうらやましい頭してんなぁ、この野郎」
川原イチヨウが柊レイの頭に拳をグリグリと押し付けた。
「ちょっと痛いよ、イチヨウ」
そこに小さな足でトテトテ近づく子供がいた。イチヨウとミサキの子供だ。その子は大きな目をキラキラさせながら言った。
「パパ、めっ」
「うおっ!?子供に怒られたぞ!?」
「あんたがバカやってるからでしょ」
「は、ははは、そうだよな。はははははははははははは」
「あはははははははははは」
「くすくすくすくすくすくすくす」
「ふふっ、ふふふふふふふふ」
4人は、公園の中心で笑いあった。その笑い声は、『共に困難を乗り越えた仲間』としての意味だけでなく、『今』という『同じ時代を生きる者』としての笑いでもあった。
その場の空気はとても穏やかで、全てが眩しくて、そして何よりも暖かかった。そして彼らは、新たなる未来に向かって、一歩を踏み出していったのだった――――――――――。
(完)




