表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/32

決戦、膨れ上がる道

 柊、水瀬、ノア・ロード、出月の4人は最下層へ向かっていった。結界が張られているらしく、瞬間移動では進めなかった。そのため、フロアをひとつひとつ降りていかなければならなかった。ぞろぞろと湧いてくるように、『人型機械兵(サイボーグ)』『戦闘機型機械兵(スカイサイバー)』がやってくる。それらはクリーチャーとは違って生身ではない為、ものすごくしぶとい。おまけに攻撃力も高い。さらに『能力』やその他の攻撃に対抗できるように特殊コーティングがなされ、ある程度のレベルまでは無効化するという耐性のついた、厄介なものだった。

 しかし、出月の能力は非常にレベルが高く、次々と破壊していった。他の3人も同じく、能力のレベルは高い。柊は剣撃と銃撃、念動力をうまく組み合わせて次々と破壊し、水瀬は戦いながら回復サポートを施していた。ノア・ロードは柊と同じ念動力と雷の能力を併用し、弱点を確実に突いていった

 そうして、中継点に着いた。そこはまったく何も無い部屋だった。あるのは扉だけ。


「一回、ここで休もう」

「えぇ、そうしましょう」


 柊が提案し、水瀬が賛同した。ノア・ロードも出月も頷いた。4人は削ったスタミナの回復のために数分だけ休んだ。



 川原と花形はボロボロになり、花形はクレアの前で手と膝をついていた。その隣では川原がかろうじて立っている。


「あ~あ、君らもその程度のものかぁ」


 対するクレアは服が少々切れていたが、それ以外はまったくの無傷だ。


「新種のクリーチャーといえど、その程度なんだね」


 二人はクレアを睨みつけている。二人とも体力を消耗し、汗を流しながら一生懸命にクレアを見据えている。クレアは何かに対して納得したような笑みを浮かべた。


「あぁ、そっか。『ヒトの心』が邪魔をするんだね」


 クレアが剣を上に掲げた。


「まぁでも、楽しかったよ。またどこかで会えたらいいね」


 そういうと彼は、剣を二人の頭上に振り下ろした。



 数分の休みをとり、柊、水瀬、ノア・ロード、出月の4人は次の扉を開いた。その先にあったのは。


「なんだ、ここ・・・・・・」


 部屋は円形でかなり広く、そして黒かった。黄色い液体の入ったカプセルが、部屋中の壁にずらりと並んで淡く光り輝き、その一つ一つには誰かが眠っていた。全員が翼の生えた、『天使』。胎児のようにうずくまっているそれらは液体に揺られて、体がわずかに上下している。よく見ると液体だけで、誰も入っていないカプセルがいくつかあった。部屋の中央あたりには、並んでいるカプセルとは比にならないほど大きなカプセルがあり、その中には、とびきり美しい『天使』が眠っている。

 水瀬は恐怖に震えた。柊が倒れそうになる水瀬を支えた。


「大丈夫?」

「う、うん・・・・・・」


 ノア・ロードはそんな二人を見た。そして、部屋中のカプセルを見渡した。


「こんなところにあったのか。あれから変わってないな」


 一つ一つのカプセルに複雑そうな瞳を向けているノア・ロード。その瞳には憂いの色が浮かんでいるように柊は感じた。出月が一番大きなカプセルをじっと見つめていたその時。


「我が部屋にようこそ」


 巨大なカプセルの中の『天使』が言った。甘美な響きをもったその声は、静かな部屋の中を駆け巡った。カプセルにひびが入り、破片が飛び散ることなく割れた。黄色い液体が外に流れ出た。ゆっくりと顔を上げ、ゆっくりと目を開いた。瞳も髪も銀色に輝き、肌は透き通るように白い。中性的なその姿は男とも女ともつかない。敵なのに、その神々しさは眩しかった。背中の白い翼が大きく広がった。


「よくここまで来た。我はそのことに賞賛の意を込めよう」


 不意にノア・ロードが笑みを浮かべる。その笑みは非常に冷めていた。


「あいつ等から見たら、俺もこんな感じだっただろうな」


 そういうと、彼も翼を生やした。カラスのように、真っ黒な翼を。


「傲慢のルシファーか。その姿、もはや魔王ではないな」

「あぁ。俺はもう魔王じゃない。人に近き『魔なる者』だ」

「クフフフ。驚いたよ。かのサタンもベルフェゴールも魔王でなくなった上、『傲慢』なはずのお前までもが魔王の座を降りようとしているとはな」

「まるで始めから知っていたような言い方だな」

「まるでではない。始めからだ」

「俺らのその様子を見ていたんなら、さぞかし滑稽だっただろうな」

「あぁ。滑稽だった」


 『天使』の姿をした『強迫観念の魔王』ディーメルトラは、左手をノア・ロードにかざした。刹那、黒い光が掌に収束していき、何かを凝縮したような黒い玉を作り上げた。ノア・ロードがハッとする。


「離れろ!!!」


ズドドドドドドドドドドドドォォォン


 4人のいる場所に、突然宙に出現した数多の黒い槍が、連続して放たれた。轟音を響かせて床に次々と刺さる。そして、黒い槍はすぅっと消えていった。


「4人とも無事とはな、いやはや驚くべきことばかりだ」


 柊と水瀬は、柊の念動力による瞬間移動で、間合いを空けてディーメルトラの後ろに回りこんでいた。ノア・ロードと出月も同じく、ノア・ロードの瞬間移動で攻撃をかわしていた。


「新種、神玉。この二つさえあれば、私は完全に、世に顕現できる。さぁ、よこせ。よこすがいい」


 柊と水瀬に手を差し出すディーメルトラ。


「絶対に渡すんじゃねぇぞ!」


 ノア・ロードが叫んだ。


「うるさい奴だ」


 ノア・ロードの体が吹っ飛んだ。壁に掛けられているカプセルの一つに打ち付けられ、その衝撃でカプセルが割れた。中にいた天使はすぐに液状になり、床に流れ落ちた。


「ぁあっ!」


 悲痛な叫びを上げるノア・ロード。出月が瞳を赤く光らせた。ディーメルトラの肩で爆発が起こったが、ディーメルトラは少し仰け反っただけだった。その後も連続して爆発を起こした。それに伴って煙も大きく広がっていく。しばらくすると凄まじいほどの轟音が鳴り響き、それからは二度と爆発は起きなかった。


「我の手に!我の手に!!我の手に!!!」


 突如、煙の中から二人の場所へ手が伸びた。それも急激な速度で。

 柊は能力でバリアを作り出し、かろうじて受け止めた。しかし、少しずつバリアにひびが入る。彼はすかさずディーメルトラを吹っ飛ばした。


「クフフファハハハハハハハッ!!!」


 煙が晴れ、『天使』はそこにいた。先ほどまでの神々しさは一切消え、その代わりに冷酷な表情を浮かべている。


「面白い。この我に刃向かうか」


 本当の最後の決戦が、今始まった―――――――――。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ