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予感、闇にうごめく道

 柊と川原は、水瀬と花形のいる観客席へ向かっていった。そこで水瀬と花形に会った。「二人ともお疲れ。」と二人は異口同音に言った。柊は水瀬を見た。あれ?なにかあったのかな。気のせいか、水瀬の表情が暗く感じた。大きなショックを受けて落ち込んでいるような暗さだった。


「水瀬、どうしたの?」

「ん、なんでもないよ。ありがと」


 水瀬は無理に笑って見せた。柊の心が痛んだ。柊は試合に出ていたから分からなかっただろうが、水瀬はノア・ロードに会っていたのだ。花形は気づかなかった。なぜなら、ノア・ロードが水瀬の分身を作り出し、花形と一緒にいさせていたからだ。その間に水瀬は、ノア・ロードから衝撃的な真実を告げられたのだ。


「気にしなくていいから。それより、怪我は大丈夫だった?」

「・・・うん、バッチリ直ったよ。一時はどうなるかと思ったけど」

「そっか。よかった」


 それから何時間か経ち、すべての試合は完結した。が、イベントはこれで終わりではない。最後にお祭りイベントがあるのだ。柊たちはそのお祭りを楽しんでいき、一日を過ごしていった。

 そのころ・・・。


「ノア、外に出ちゃダメでしょ。しばらくは安静にしてなきゃ」


 ある研究所の吹き抜けになっている外の通路で、ノア・ロードの後ろから女性が言った。近くで噴水が上がっている。その滴がキラキラと降り注いでいる


「やぁ、サラ。今日も空は真っ赤だね」


 ノア・ロードは(きびす)を返し、話をはぐらかすように言った。サラが言った。


「何をしていたのか、思考を読み取らせてもらうわ」

「無駄だ。あんたの力じゃあ、俺の思考は読み取れない」

「何言ってるのよ、生まれたばかりの赤ん坊のくせに。見くびられても困るわ」

「生まれたばかりってのは否定しない。なにせ、俺クローンだし」

「よく分かってるわね、ノア。で、あなたは何故ここにいるのかしら」


 彼は噴水のほうに目をやった。そこには噴水の周りの石垣に座って、空を眺めている出月の姿があった。真っ赤な空を、じっと見つめている。サラがしかめ面をした。


「外出許可下りたの?」

「そうだ。被害がなければいいと言われたからな。それにアイツ、外に出るようになってから、ずっと空を見てる」

「空を・・・ねぇ・・・。心のどこかで、過去から開放されたいとでも思ってるのかしら」

「そうだろうな。空は自由を表す。アイツは無意識のうちに空を見ているみたいだから、本人にも自分の心が分からないんだろう」

「心はあなたが開けたんじゃないの?」

「俺の力で心を開けたとしても、それは一時的なもの。ずっと続くことはない」

「ま、それもそうね」


 今度はノア・ロードが訝しげな表情をする。サラの目が赤く光っている。「やられた」と、ノアは嘆息交じりに思った。


「あら、あのイベントに参加して、水瀬に伝えに行ったのね。あなたの体のことを」

「プロテクトを掛けてたのに、こうも破られるとはな。さすが真祖ヴァンパイア。狡猾さは誰にも劣らないようだ」

「それは褒め言葉として、捉えてもいいのかしら」

「判断は任せる」


 煮え切らない言葉を返されたサラは、ムッとふくれた。そして話題を変える。

 サラが出月に視線を持っていくが、その目は出月ではなく、その向こうの太陽を見ていた。まぶしいのか、目を細めている。


「出月の調子はどうなのよ?」

「心の閉鎖、感情を出さない、ということ以外は調子がいいようだ」

「そう。それにしても彼、あなたにだけは懐いているのね」


 サラがもう一度ノア・ロードに視線を戻す。そして、虚ろな目を空に向けてボ~ッとしている出月を横目に、サラは続けた。


「あと、あの変人科学者が呼んでいるわよ」

「後で行こう。そっちは恋仲が待っているんだろうな。確か・・・ジェレミー・アスラって言ったか?」


 サラの頬がほんのり染まる。が、すぐにその色は消えた。彼女は自分がヴァンパイアだということを隠しているのだ。どの世界でも、ヴァンパイアを危険な存在と認識している者も少なくなかった。この世界も例外ではない。そして何より、今の関係を壊したくなかった。

 人間には人間がお似合いだと考えている。だからサラは、真祖ヴァンパイアよりも『人間』に近づこうとしていた。たとえ正体を隠し続けることが苦しくても、愛する人の隣にいたいという想いが彼女をそうさせるのだ。そしていつか、この組織から足を洗って愛する人と一つになろうと、心に固く決めている。

 それを知ってか否か、ノア・ロードは口元を歪ませた。その目は哀れなものを見ているかのよう。彼はこれから先のことを予知しているのだろうか。


「出月、戻るか」


 ノア・ロードが言うと、出月はノアに視線を戻し、消え入るような声で言った。その目はハッキリとノア・ロードの瞳を捉えている。生気はなかったが。


「空・・・赤い・・・・・綺麗・・・・・・」

「確かにな、綺麗だ。」


 ノア・ロードは空を見上げる。うっとりと目を細めると、言葉を選ぶようにゆっくり、しかしハッキリと口にした。


「空は自由を表す。海は創造を表し、大地は心の機微を表す。そして太陽は優しさと大切な人。すべてのものには、必ず『存在意義』がある」

「・・・???・・・・・・・・・・・・難しい」

「いつか分かるときが来る。それまでは気長に生きればいい。そう、生きていけば・・・」

「・・・・・・」


 出月は大人しく、隔離棟へ戻っていった。サラもテレポーターでどこかへ行った。ノア・ロードも沢渡コウスケの元へ、面倒臭く歩いて移動した。研究所内の廊下はたくさんの窓が連なり、そこから差し込まれる赤い光が廊下を斜めに照らしている。ノア・ロードは廊下の上を滑るように歩いていった。

 場所は、ノア・ロードがカプセルからはじめて外に出たときと同じ場所だった。その部屋で沢渡から質問が飛んできた。沢渡はイスに座っている。


「サラから聞いたが、柊レイと接触したらしいな。おまけに水瀬とも」

「会ったらダメなのか?」

「それはそうだろう。今回は混乱を免れたものの、次からは接触するな」

「はいはい。で、何か用?」

「・・・このクソガ・・・・・・まぁいい。コイツを知ってるか?」


 ノア・ロードに一枚の写真が渡された。「さっき、『クソガキ』と言いかけただろう。」と思いながら、写真を見た。名前の欄に、『ロゼッタ・ディ・ワイズール』と書かれている。


「クローンとはいえ、お前の精神はイリス・ウラドそのものだ。それも『(ゼロ)』の方。元『セヴンズ・ロード』のお前なら、コイツのことは分かるだろう?」


 沢渡が冷たく言い放つ。そして押し付けるように、写真を手渡した。ノア・ロードはそれをしぶしぶ手に取りながら、沢渡に問う。


「なぜ俺がイリス・ウラドだと?」

「簡単なことだ。そうでなければ、本体である『(レイ)』と、カノン・ツバサに会いに行くわけがない」

「洞察力も鋭いんだな」

「イリス、何を企んでいる?」

「いや、何も。この『造られた』体じゃあ、何も出来ねぇしな。それに、今の俺の名は『ノア・ロード』だ」

「ふん。で、コイツは?」

「コイツならまだ生きているだろうな、能力が能力なだけに。だが、場所までは分からん」

「その能力とは?」

「それを知ってどうするんだ?」

「いいから答えろ。それと、私には能力など効かん」


 沢渡の視線は相変わらず冷たい。有無を言わせようともしなかった。ノア・ロードは近くの机の上に腰掛けた。彼は頃合いを見て沢渡を操ろうと思い立ち、たった今能力を発動したが、何故か沢渡には能力が効かなかった。だからノアが能力を発動しようとも意味がなかった。もし、彼に能力が効いたなら、ノア・ロードは彼の思考を変えようとしたのだが・・・・・・。


「はいはい・・・。まぁ、言ったところで何も変わらないだろうがな」

「早く答えろ。私は忙しいんだ」

「分かったよ・・・。ロゼッタの能力は、全能無効。あらゆるものを停止、無効にする。そう。あらゆるものをね。能力はもちろん、魔法や物理的攻撃なども無効にする。命あるものが持つ、『生命維持の機能』を停止させることも出来る」

「よし。聞きたいことは聞けた。もう行ってよい」

「・・・・・・・・・・・・そうしよう」


 ノア・ロードが瞬間移動で去った。部屋に1人残った沢渡は、不気味な笑みを浮かべていた。込み上げてくる笑いが抑えられないようだ。


「ふ、ふはは、はははははっ!これはとんだ収穫だったな。ふふふふっ、あははははははははははははははははははははっっ!」


 一方でノア・ロードは、さっきまでいた外の通路に向かっていた。そして出月が座っていたところと、まったく同じところに座った。噴水がキラキラと上がっている。


「ロゼッタ・・・・・・なぜあいつの名が・・・?」


 ノア・ロードは不審に思い、思索を巡らしてみた。ロゼッタはすべてを『無効』にする能力を持っていた。武器が持つ殺傷力さえ無効にする力・・・・・・。それゆえに、やられるとは考えにくい。そして、沢渡には何故か、ノア・ロードの能力が効かなかった。これはどういうことだろうか・・・・・・?


「・・・・・・」


 ノア・ロードの脳内で、たった一つの答えが導かれた。これが本当なら、最悪だ。


「・・・・・・ロゼッタ。裏切りの果てに何を得た・・・?」


 ノア・ロードは空を見上げた。いつ見ても空は赤い。空を見つめるその表情はかすかにほくそ笑んでいた・・・・・。









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