表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/32

仲間との手合わせ、磨かれる道(中編)

 控え室に戻ると、真っ先に川原が寄ってきた。そのころには柊の傷は癒えていた。


「ヒヤヒヤさせんじゃねぇよな。ったく、あんなヤツ一発で終わらせちめぇよ」


 川原が言った。・・・・・川原君・・・・・それは無理というものです。


「それよりお前、『念動力』じゃなかったか?万能っつったって・・・・・・」

「よくわかんないけど、頭に浮かんだだけなんだ」

「へぇ、そんなもんかねぇ。おっ、次はジェレミーのオッサンの番だな」


 ジェレミーの戦闘も大盛り上がりで終わった。能力や魔法は一切使わず、圧倒的な力の差で打ち負かしてしまった。次に続くのは、女性の二人参加者だ。1人はストレートの長髪でポニーテール、もう1人もストレートの長髪だった。この二人は双子だという。確かに顔もすごく似ている。その双子の対戦相手はゴツイ男2人組み。結果は双子の女性が勝った。他の勝者2名も勝ち進んだ。観客は大盛り上がりで、熱気を帯びている。


「さぁぁぁて、皆さん!!次いきますよおおおおおおおおっ!!!」


 司会者もアツい。そこで、準準決勝・・・。次の柊の相手は、ノア・ロードという人物だった。柊は次の対戦相手を見た。全身を黒いフードで包んでいる。顔は暗くて見えない。その彼の先ほどの対戦では、土を使った攻撃をしていたことを柊は覚えている。そのときの彼の勝負は圧倒的な力の差で、相手を打ち負かしていた。

 準準決勝の最初の対戦も、最初に川原が出ることとなった。相手は『シオン・ゼベレットラ』。獣人の波導拳士。波導って・・・『気』を使って色々やるヤツ・・・?まぁ、そんなことは、この際どうでもいいか。


「レディ~・・・ゴー!!!」


 勝負が始まった。両者のにらみ合いが始まる。先に動いたのはシオンだった。無言のまま、遠距離から放った拳から『気』が放たれるが、川原は避けた。


「あめぇぇぇよッッ!!」


 川原が叫ぶ。能力を発動し、足元に氷を発生させた。それが動いたかと思うと、人間の形をしたモノになった。いわゆる氷のゴーレムだ。


「まだまだ作ってやるぜ!!!」


 川原は、およそ37体の氷のゴーレムを連続で作り出した。そのゴーレム達が一斉にシオンに向かっていく。しかし、シオンも負けてはいない。カッと目を見開き、次々と破壊していく。川原はゴーレムを壊されても平然としていた。川原は、誰にも聞こえない小さな声で呟いた。


「この勝負、俺の勝ちだ」


 シオンがゴーレムを次々と破壊していった所に、他よりも少し大きいゴーレムがやってきた。その氷のゴーレムに映る川原。シオンは、川原が後ろにいると分かると、左手をゴーレムに、右手を川原に向けた。左手から気を放ってゴーレムを破壊し、右手からの気で川原の動きを止めた。ゴーレムが全て破壊されたのを見届けたシオンは、気で動きを止められた川原に近づいていった。


「その程度で俺に向かったことが、お前の命取りになったな。一撃必殺の技をくらえ」


 そして一撃を決めようとする。


「お前も案外、頭弱いよな」


 川原がそういった瞬間、幾千もの氷の刃がシオンに突き刺さる。


「ぐぅあ・・・っ・・・・・ば、バカな・・・・・・」


 気が放出されなくなり、川原の体は自由の身となった。シオンが倒れる。実況が流れ、歓声が響き渡る。その歓声の中で、川原はシオンに言い返す。


「お前が破壊した俺のゴーレム、『破壊した』だけで、破片は残ってんだよ。油断が命取りになったな」


 氷のゴーレムは破壊されただけで、破片はまだ残っていた。その破片を全て相手に向けて放ったのだ。人は何かを破壊すると、それは復活することはないという思いこみが生まれる。その心理の隙をついた攻撃だったのだ。

川原は無傷で控え室に戻っていった。実況で、川原の勝利が流れている。次は二人の女性と、ジェレミーだ。女性の名前は・・・白麗ルリと白麗ミコト。二人とも能力者であり、ジェレミーもまた能力者である。審判の開始の掛け声が響く。途端に勝負が始まった。ジェレミーの能力は『身体能力上昇』。身体能力を極限にまで高める、少し危険な能力だ。

 逆に二人の能力は、見たところ、姉のルリが『人形使い』。妹のミコトが『未来予知』のようだ。が、ルリはあえて人形を使わず、中国の武術(棒術)を駆使していった。妹のミコトはジェレミーの動きをあらかじめルリに伝えている。伝えるといっても、直接言うのではなく、テレパシーのようなものを送っているらしかった。

 ジェレミーが大剣を次々と打ち込むが、ルリは次々とかわす。そして、隙を突いてジワジワとダメージを与えていった。ジェレミーはミコトが予知しているのだと気付き、厄介なミコトを先に倒そうとした。

 が、目の前に不気味な人形が・・・。ルリの能力が発動したのだ。人形の腕がジェレミーの顔へ伸びる。ジェレミーは頬に切り傷をつけられたが、間一髪、避けることができた。遅れて後ろから、ルリの棒術による攻撃がきた。ジェレミーは大男とは思えないような身軽さで、横へ緊急回避をした。


「はわわわわっ・・・」

「あたしの妹に何すんのよっ!」

「いやぁ、俺の動きを予知しているみたいだから、厄介だなぁと思ってな」

「あううぅ・・・、ごめんなさい~・・・」

「ミコトっ、謝んなくていいのっ!」


 ミコトは涙目で「私、怪我したくないです」と訴えた。ジェレミーは笑ってすました。その後も善戦は続いた。結果は二人の女性の勝ちだった。ジェレミーはすっきりしたものの、激しく落ち込んでいた。


「負けた・・・・・・俺が・・・女に・・・・・・」


 控え室に戻る途中で、ルリとミコトは柊とすれ違った。すれ違いざまに・・・。


「ご先祖様、頑張ってね」

「お姉ちゃん、それ禁則事項・・・」

「かたいことは気にしない、気にしない」


 柊はどこかの変人だろう・・・と、心の中で思うだけにした。次は柊の出番だ。ノア・ロードという黒フードの男とともに、闘技場に出た。柊は、黒フードの男を見た。フードの下が暗くて見えなかったが、相手もこちらを見ているようだ。戦闘開始の合図が響く。

が、二人とも動かない。にらみ合っているのだ。柊は相手の出方をうかがっていた。その相手は、身動き一つもしていない。そのまま何分か経った。しびれを切らした柊は、こちらから攻撃に出ることにした。不意打ちを食らわないように分身を作りだし、分身だけで、ノア・ロードに向かっていった。ノア・ロードにある程度近づいた途端、分身は音もなく消え去った。気がつくと柊の後ろに、ノア・ロードがいた。瞬間移動・・・!?


「くっ・・・!」


 柊も瞬間移動で、距離を離した。これが任務か何かの実戦だったら、確実にやられている。ノア・ロードが手を柊に向けた。その手には銃が・・・。柊はその場から身動きできなくなってしまった。


「嬉しいね。俺の片割れに会えて・・・」

「片割れ?」

「ひでぇな。まだ分からないのか?」


 柊は困惑し始めた。なんだこいつ。何が言いたいんだ?


「夢の中でも会ったのに」

「えっ・・・夢?」


 ノア・ロードは、黒フードをまくり、その下から顔を出した。男でありながら、どこか艶やかな雰囲気を醸し出している。その顔は、柊レイ本人とまったくの瓜二つ。

 その顔を見た柊は言葉を失った。モニターでその様子を見ていた誰もが、絶句した。

 川原が言った。畏怖の念を込めて。


「柊が・・・・・・・・・二人・・・・・・?」


 ルリとミコトも言った。


「ご先祖様が・・・・・・二人・・・・・・?」

「どうなってるんですか・・・?これ・・・」


 ジェレミーは言葉も出ない。ドッペルゲンガー等といったものがあるのは知っているが、これはその部類なのか、見当もつかなかった。髪の色は白銀、目の色は常に赤く、肌は色白。しかし、それ以外は柊レイと全く同じ姿かたちである。モニターを見ている一同もざわついた。


「き、君は・・・・・・」

「あんたが真実を知るにはまだ早いと思う」


 柊が何か言う前に、ノア・ロードは言った。その瞳には憂いの色が混じって見えた。


「でも、元気そうで何よりだ。じゃあ、俺はこれで・・・」


 ノア・ロードは柊に背を向けた。まるで、表情を見せないかのように。


「あんたの力はまだまだ、成長していく。その先でまた会った時、今日の続きをしようぜ」


 そう言うと、ノア・ロードは審判に目を向けた。審判が突然、


「ノア・ロード選手、棄権を申し出ました。よって、柊の決勝進出とするッ!!」


 と言い放った。ノア・ロードは「またな」とだけ言うと、その場で消えていった。消えた一点を見つめる柊。このまま決勝進出したのだが、柊には引っかかる言葉があった。ノア・ロードの言った、「真実を知るにはまだ早い」という言葉・・・。よくよく考えてみた。深~く考えてみた。

 しかし、彼の脳内に思い浮かぶはずもなく、ましてや突然言われて理解できるわけがなかった。思考の中にモヤモヤを残したまま、柊は次の決勝へと進んでいった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ