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仲間との手合わせ、磨かれる道

 午後2時になった。4人は最下層地下124階へ向かった。どうやら、他人と手合わせが出来るイベントがあるらしい。そのイベントは4ヶ月に1回行われ、模擬戦による戦闘、戦略が問われる。何でもありのルールでケガ人が絶えないが、終了後は強力な治癒魔法、治癒能力のおかげでぴんぴんに戻るという。死人は絶対に出ない。また、それだけでなく、技や知恵を競う種目もあるようだ。ちなみに賞金は、1位で200,000pt、2位で150,000pt、3位で100,000pt、それ以下は全員10,000pt。この世界では賞金が『一億~十億円』に値する。たとえ負けても、必ず10,000pt貰えるというのだから、すごくおいしい話だ。ポイントを貯めるなら、このイベントに参加する方が早いと言う人もいるほど。

入り口近くに来ると、なにやら騒がしい。普段は地下2階の受付にいる女性も、ここにいた。


「皆さん、おそろいで来てくださったのですね」


 受付の女性が笑顔を向ける。


「さて、一通りの説明をします。ここではトーナメント式で、模擬戦、あるいは競技を行います。模擬戦では常人コースと、超人コースがあります。常人コースは、魔法、能力などの特殊な力を使わずに、戦闘が行われます。超人コースは魔法、能力などによる戦闘ももちろん出来ます。基本どちらを選んで頂いても構いません。競技では、技の技量や、知識を生かして行われる、頭脳戦のようなものです。では、エントリーして下さい」

「じゃあ、俺と柊は模擬戦、超人コースでお願いすっぜ」

「かしこまりました。では、こちらの控え室で待っていて下さい」


 柊と川原は、控え室へ向かった。水瀬と花形は参加せず、二人に「頑張ってね」とだけ言うと、観客席へ向かった。

観客席では、闘技場の広さゆえに裸眼では見られないこともあり、主に巨大モニターで見ることとなる。そのモニターは、どの席からでも満足して見られるように、20台ほど設置されている。もちろん控え室にも巨大モニターが6台設置されている。

 また、攻撃の余波や流れ弾などが観客席に届かないように、かなり強力な魔法でシールドバリアを張っている。だから観客は安全に見ることができ、参加者も遠慮なく力を発揮することが出来るのだ。また、実況が流れるので、どうなったのかを細かく知ることも出来るのだ。


「なぁ、柊。俺、お前にはぜってぇ負けねぇぜ」

「僕だって。君には絶対に負けないよ」

「はん。泣きをみるのがオチだ。まぁ、それまでガンバ」

「おい、ボウズ」


 柊と川原が話をしていた最中に、聞き覚えのある声がした。


「ジェレミーさん、あなたも参加するんですか?」

「おうよ。賞金が欲しいからな。お前らに当たっても手加減はせんぞ」

「オッサン、あんたに1位は無理だぜ?」

「何だ?そこのクソ生意気な小便小僧は」


 川原の不敵な態度にムカついたジェレミーが、柊に紹介を求めた。


「あ、ごめんなさい。こちらは川原イチヨウです。川原君、こちらはジェレミー・アスラさん。僕が初めてここに来た時、少しだけ一緒にいてくれた人なんだ」

「そっか~。じゃ、よろしく。ジェレミーのオッサン」

「・・・・・・小僧、俺とぶつかったら覚悟しておけ」


 機嫌を損ねてしまったジェレミーは、川原から離れるように移動した。川原も川原だ。吊り目でメガネを掛けていて、いかにも真面目な印象なのに、性格と見た目のギャップが極端に激しい。何とかならないのだろうか・・・。


「それでは皆さん、トーナメント式手合わせ大会を開催いたします!」


 係員の声がマイクを通して拡声され、闘技場に響き渡った。途端、大きな歓声が挙がる。始めは常人コースから行われた。控え室にいる柊たちは、その様子を巨大モニターで見ていた。情熱溢れるファイトで盛り上がり、無事に終わった。次は超人コースの番だ。


「あ~あ、俺最初かよ。めんどくせ」


 巨大モニターに映し出されるトーナメント表を見て、愚痴りだした川原。相手はエルフの女性、『ザラス・エルベージナ』と書かれている。魔法使いのようだ。


「さぁて、楽しませてもらうぜ?」


 川原は不敵で、それでいて楽しそうな様子を見せた。川原って戦闘狂(バトルマニア)ッぽいよな・・・。あいつ、絶対早死にするぞ。うん。やっぱなんとなくそう思う。

 戦闘が始まった。が、勝負はあっけなかった。川原が、魔法を出される前にエルフの後頭部に一発、手刀をお見舞い。あっという間に気絶させてしまったのだ。なんつー早業。観客はほぼ全員が唖然としていた。

 川原選手の進出が決定致しました。という放送が流れ、次の勝負へと繋がれていく。中には二人で参加している人も・・・。そんなこんなで、柊の番が来た。


「負けんなよ。お前ともバトってみてぇからな」


 彼は川原からそう一言をもらい、テレポーターで闘技場に出た。対戦相手は・・・魔法剣士の男、セベリア・ヘイルペス。銀色の鎧を装着し、肩には紺色のマントを留めている。流線型の鎧は細く、いかにも軽そうで、重量を感じさせないものだった。左手に、サバイバルナイフをそのまま刃の細いレイピアにしたような、変わった形をした長剣を持っている。右手には小回りの利く、小さめの半球型の盾が・・・。その男の装備品や体のあちこちには傷がついていた。それは修羅場を潜り抜けてきた証拠でもある。


「レディ~・・・ゴー!!!」


 審判の掛け声で勝負が始まった。セベリアは真っ先に柊へ詰め寄った。柊は能力を発動した。セベリアの動きを止めることに成功した。が、セベリアが何かを唱えると、すぐさま動けるようになった。レイピアの切っ先が柊の胸を刺しにかかったが、柊は間一髪のところでよけた。そして、セベリアを吹っ飛ばす。


ボゥン


 セベリアの体が宙に浮かんだ。そこへすかさず重力攻撃。セベリアの体を地面に叩きつけた。と、思いきや、男は風の魔法で、叩きつけられるのを未然に防いでいた。男は剣先を柊に向け、魔法を唱えた。刹那、炎の玉が急速に柊へ飛んでいった。柊はその炎の玉を能力で止める。そして、炎の玉を男へ返した。しかし、男はレイピアで両断、なぎ払ってしまった。その時、柊の後ろからセベリアがやってきた。分身だ。えぇっ?ズルいよ、それ。


「うわあぁっ!」


セベリアの分身10体(うち1人本物)が柊の周りを囲む。いっせいに剣先を柊に向け、魔法を唱え、電撃を放つ。


バチバチバチチチィッ


「ぐあぁああぁああぁあぁぁあぁあああぁあぁぁぁッ!!」


 その様子を、控え室のモニターで見ている、二人の影があった。


「あ~あ、私達のご先祖様、負けちゃいそう・・・」

「何言ってんのよ。大丈夫だって」

「どうしてそう言い切れちゃうの?お姉ちゃん」

「そうねぇ。なんとなくそう思うだけ~」

「お姉ちゃん・・・・・・」

「てへ☆」


 姉らしき人がウインクと同時にペロッと舌を出した。妹らしき人が、ハァと嘆息する。姉らしき女性はそんなことは気にも留めていなかった。根拠があるかどうかは分からないが、何故か柊が勝つことに絶対的な確信を持っているようだ。


「あ、起き上がった」


 モニターの向こうで、セベリアの攻撃を次々とまともに喰らった柊が立っていた。息が上がっている。セベリアが乾いた声で言う。こちらも疲れているようだ。観客は盛り上がっている。


「はは・・・。君には悪いが、ここは勝たせてもらう」

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

「では・・・」


 セベリアがレイピアを高らかに掲げ、振り下ろそうとした。その瞬間、セベリアは体が横に飛ぶのを感じた。


「な、何なのだ!?」


 そこにいたのはもう一人の柊レイだった。分身である。


「フッ。分身か・・・いいだろう。次の一撃で終わらせる!」


 セベリアはもう一度分身を作り出した。次は10体ではなく、25体(うち1人本物)も作り出したのだ。そして一斉に詠唱を唱える。


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「凍れ!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 柊が1人凍った。もう1人の柊はいない。分身は本体を倒せば消える。ということは、本体を凍らせたのか?


「や、やった・・・やったぞ」


ゴスッ


 鈍い音がした。セベリア(本体)の懐に柊がいた。そのまま・・・。


ピシュゥゥゥゥゥゥゥン


 セベリアを氷漬けにした。観客がざわついた。審判は勝負がついたと分かり、判定を下した。


「し、勝負ありぃぃぃぃぃぃッッ!!!勝者、柊レイ!!!」






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