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【ざまぁ】無能聖女を婚約破棄した王国、結界が消えて竜に滅ぼされました

作者: 社会の猫
掲載日:2026/03/13

 私は聖女。代々伝わる結界魔法でこの国を守ってきた。


 それなのに、なぜか私はこの国に嫌われている。


 色々な貴族からいじめられ、庶民に陰口をたたかれ、誰も私を守ろうとしない。


「聖女、アルテシア。貴様との婚約を破棄する!」


「……そうですか」


 王子との婚約。


 それも、聖女の仕事だ。


「ちなみにですが、どうしてでしょう?」


 王子との婚約破棄ということはもうヴェルド王国に私の居場所はない。実質的な国外追放と考えていいだろう。


 最後なのだ。なぜ私が今まで迫害されてきたのか聞いてみてもいいだろう。


「どうしてって……ハハハッ!!お前、面白いこと言えたんだな!理由は単純だよ」


 王子が私の目の前に立ち、私の前に剣を突き立てる。


「お前がなーんにもしない無能だからに決まってんだろ」


 そして、そう言い放った。


 何もしない?


 聖女の仕事は存じてるはずでしょう?王子であるならば。


「結界魔法でこの国を守ってきました」


「は?何言ってるんだ?お前」


 王子があっけらかんと言う。


 まさか知らない……いや、確実に知ってはいる。忘れてるだけだ。


 私の結界は目に見えない。守られているという実感はないのだろう。この国の誰もが。


「何もしないくせにここに居て、愛想も悪い。そのうえこの俺の婚約者とまで来た」

「理由は十分だろう?」


 何もしないって……ふふふっ……。


 ……はぁ。


 呆れた。


「結界解除」


 小さい声でつぶやく。


 もう知らない。


 この国が魔物に襲われようと、私には関係ない。


 これで、この国はおしまいだ。


「お前が居なくても何も問題はないんだよ」


 王子が剣をしまう。


「馬車を用意してある。どこに行くかは教えないがな」


 かくして、私は婚約破棄をされ、国外へ追放となった。


 王城を出て、馬車に乗る。


 安物の馬車だ。だけど、構わない。


 王都を出て数分。


「あら」


 空には、ひとつの黒い影。


「もう来たんですのね」


 最強の種族、竜。


 最近よく結界に邪魔してたやつらだな。毎回追っ払ってたけど。


 今はまだ警戒してるな……すぐに王都への襲撃を始めるだろうけど。


 しかし、甘えきった今の王国の軍で竜に勝てるのか……。


 まぁ、私には関係ない話だ。


 空を見ていると、黒い影が複数体王都に向かっているのが見えた。


 そういえば、昔の文献で見たことがある。ここら辺は元々竜の住処だったと。


「あらあら……」


 少し顔がにやける。


 まぁでも、大丈夫か。


「何も問題はないんですものね」


 ガラガラガラ……


 乗り心地の悪い馬車は進む。


 しかし、不思議と気分は悪くなかった。




「ここだ」


 馬車が動きを止める。


 なるほど……ここは……


「隣国との国境ですわね」


 私は荷台から降りる。


 ヴェルド王国とサーフェン帝国の境目。トラルの森。


 ここまで運ぶなんて、通りで長い道のりだったはずだ。


「じゃあな、無能聖女。せいぜい野垂れ死んでくれ」


 馬車は音を立てて去っていく。


 あぁ。


 死んだな。


 瞬間、馬車は狼の群れに襲われる。


「助けっ……」


 御者の悲鳴はすぐにかき消された。


 複数個体が傷を負っている……が、依然健在か。


「結界魔法」


 私は体の周りに結界を張った。


 結界は魔物を退ける効果がある。狼は背中を向け走り去っていった。


 効果を目で見ると改めて優秀な魔法だな。この魔法さえあれば危険地帯は簡単に抜けられるだろう。


「あっち側が帝国ですよね」


 目の前に広がる鬱屈とした森。


 隣国の土地なんて分からないからな……まっすぐ歩けばどこかにたどり着くだろうか。


 結界を張れば安全ではあるが食料や水分が無ければ流石に死ぬ。なるべく早く村か何かを見つけないと……。


 ガサッ


 物音がした。


 誰か来てるな。複数人……結界に臆さないとなれば……人?


 しかし、こんなところに人なんて……


 草陰から何かが顔を出す。


「「あ」」


 知り合いだ。


 帝国の第二皇子、カナリア。


 複数国での親睦会でちらちら私を見ていた人。


「お久しぶりです、カナリア様」


「あぁ、久しぶり。ヴェルド王国の聖女アルテシアとお見受けするが……」


 カナリアは周囲を見渡す。


「なぜ、こんなところに?」


 そして、当然の疑問を口にする。


「はい。実は……」


 私が王国を追放されたことと経緯を説明した。


「あのバカ王子……バカだとは思っていたが、こんな危険な場所にいたいけな乙女を置き去りにするなんて、正気か?」


 明らかにイライラした表情でカナリアが言う。


 まぁ、私が何もできない無能だと思ってそんなことをしているとしたら常人の思考回路を持っていないでしょうね。


「それで国外追放と……それじゃ、今は居場所がない感じだよな?」


 カナリアが私に聞く。


「まぁそうですね」


「そうか……」


 カナリアは突然私の前で片膝をついた。


 え?


 なんで……


「では、俺と婚約しよう。アルテシア」


「へ?」


 思わず声が漏れる。


 なんでそんな突然……


「貴方は優れた女性だ。アルテシア。自分でもわかっているはずだろう?当然、嫌なら王都についてから断ってくれていい。俺は執念深いがな」


 えぇ……そんな強引に……。


「そんなに結界魔法が欲しいんですか?」


 私が聞くと、カナリアは首を傾ける。


「何の話だ?」


「いや、私の優れてるところって……」


「顔だが?」


 …………へ?


 顔?顔って……


 まぁ、そっか。王国の人間じゃないのに結界を知ってるはずがない。さらに言えば、数回顔を合わせた程度で私の性格を知っているはずもない。


「ふふふっ……」


 思わず笑みがこぼれる。


 プロポーズに顔って、ふふふ……ふふふふ……。


「ほら、美しい笑顔だ」


 カナリアが満足そうに笑う。


 私はカナリアの手を取った。


 なんとなくだけど、毎日が退屈しない。


 そんな予感がした。




「ここが我が国の帝都だ」


 馬車が止まる。


 栄えた都だ。王国の比じゃない。流石は帝国なだけはある。


「それで、俺と婚約……ということでいいよな?」


 カナリアが私に聞く。


「えぇ、もちろん」


 私は、いじめを受け続けてきて何も楽しいことなんてなかった。


 そんな私に美しいと笑う、変な人。


 しかし、心配なのは別のところだ。


 王族と言うのは身分意識や差別が酷い。カナリアも差別主義者だったり誰かをいじめてたりしてたらあまりいい気分はしない。


 私は、いじめられる人の気持ちがわかるから。


「カナリア様!どこ行ってたんですかー!」


 王城の裏門前。


 箒を持った一人の女性が飛び出してきた。


 見た目からしてメイドか。それも、かなり若い。


「どんだけ遠くに行ったんですか!王都周辺みんなで探しまわったんですからね!」


 あぁ……。

 こんな口をきいてしまうなんて、可哀想に。


 この子はすぐに酷い罰を受けるだろう。


 カナリアは歩き続ける。


「悪いなフェリア。国境付近ほど遠くに行けば無理に連れ戻されることもないと思ってな」


「もー。破天荒なのは良いですけど、死なないでくださいね」


 ……へ?


 え?嘘?こんなの即刻で拷問部屋行きでしょう?


 それに……フェリアって……名前?メイドの名前を覚えているの?


 王国でメイドの名前を覚えてる人なんていなかったはずなのに……。


「どうしたんだアルテシア。可愛く目を大きくして」


 カナリアが私に聞く。


「い、いえ……少し、文化が……」


「あぁ、そうか。アルテシアが居た王国は身分にうるさかったからな。まったく、性根が腐っているのだろう」


 それを聞き、フェリアがびっくりしたように箒を抱きしめる。


「えぇ!?身分にうるさいんですか!?フェリア、もっとちゃんとした方が……」


「バカが。アルテシアの顔をよく見ろ。こんな美人が人を差別するわけないだろう」


「確かに……!」


 二人が会話を繰り広げるのをただ茫然と眺めるしかなかった。


 だってカナリアは王子。フェリアはメイド……え?えぇ……?


「こういう空気感は慣れないかもしれないが、頑張ってくれ。うちの国はこうなんだ」


 カナリアが私に笑いかける。


「アルテシア様!よろしくです!」


 フェリアも私に笑いかける。


「えぇ、よろしく……」


 この国は王国とは全然違う。


 だが、住み心地は随分よさそうだ。


「じゃあまずは城の案内を……っと、その前に食事にしよう」


 私はカナリアについていく。


 そして、豪華なテーブルの置かれた大広間まで案内された。


「フェリアがおいしい料理紹介しましょうか!?今日の料理だと……あれとかあれとか!」


 フェリアがご機嫌にいろんな料理を指さしていく。


 焼かれた鹿肉、見たことのないスイーツ。他にもシェフがパフォーマンスをしがら料理をしている。


 この場に居る全員はちらちらと私の方を見ていた。まぁ、ここに来る人なら私のことを知ってる人が多いだろう。”無能聖女”と隣国で蔑まれている人間。悪名は轟いているはずである。


 王国じゃ私には皆と共に食事の権利などなく、他のメイドのようあまりものを食べるだけだった。もっと言うと、メイドたちのあまりものをだが。


「よぉカナリア。随分気の良さそうな顔してるじゃねぇか」


 その時、カナリアの兄……第一王子のギルズィーが話しかけてくる。


「あぁ。嫁ができたんでな」


 カナリアが私の肩を組んだ。


「おぉ、こいつはお隣の国の聖女様じゃねぇか。よく引き抜けたな」


「魔法の気配がしてな。辿ったらダイヤが落ちてたんだよ。運が良かった」


「良かったですねー!」


 フェリアも私の肩を組んでくる。こっちはなんで。


「好きに食事を楽しんでくれ。ここにはお前をいじめるバカはいない」


 そう笑うカナリア。


 親睦会で私の方をちらちら見てたのは私のことを気にかけてくれてたからなのか。


 強引そうで、意外と視野が広い人なのかもしれない。


「あのー、アルテシア様ですよね?」


 その時、一人の女性が私に話しかけてきた。


「親睦会で一度だけ見たんですけど、やっぱりすごい美人ですね!お化粧とかどうされてるんですか!?」


 そして、ハイテンションで私に聞いてくる。


「私も気になる~」


「私も私もー!」


 そして、複数人の女性が私の周りに集まってきた。


「いいえ、私はメイクなんてしてもらったことが……」


 こんな大人数に喋りかけられたのは初めて、少しおどおどしながら答える。


「え?」


 女性陣の笑顔が消えた。


 な、なんか怖い……。


 私は食事の方へ逃げる。


 そして、久しぶりに温かい食事を食べた。


 バンッ!!


 その時、ドアが開く。


「お食事中申し訳ございません!わたくし、斥候兵のザーラと申すものです!」


 そして一人の兵士が入ってきた。


「どうした?」


 ギルズィ―が聞く。


「ヴェルド王国が竜による侵略を受けていて、援軍をと……」


 その時、その場にいた全員が私を見た。


「そうか……」


 ギルズィ―も私を見て笑う。


「無理だ。勝手に滅んどけと伝えろ」


「かしこまりました!」


 兵士は部屋を出る。


 そして、何事もなかったように食事は続けられた。




「竜です!竜が……複数匹!!」


 ヴェルド王国中に悲鳴がこだまする。


 人々は慌てふためき、我先にと王都から逃げ出そうとしていた。


「はぁ!?なんで竜が……」


 王子は慌ててベランダに出、空を見上げる。


「嘘だろ……」


 複数の黒い影が空に渦巻いている。


 その時、王子の脳内にとある言葉がこだました。


(結界魔法でこの国を守ってきました)


 目の前でただうつむくだけの……


「アルテシア……?」


 王子の記憶の中では、聖女と結界の話なんてとうの昔に抜け落ちていた。


「いや、ありえねぇ」


 王子は剣を引き抜く。


「全軍集めろ。俺も出る」


 王子を突き動かすのは国を守りたいという気持ちではない。


 ”俺は間違っていない”

 はず。


 そんな焦燥感だった。




 数か月後。


 ヴェルド王国の王都が竜に陥落したとの情報が伝えられた。


「まぁ、そうですわよね……」


 紅茶を飲みながら窓の外を眺める。


 その時、一台の馬車がこちらに向かってくるのが見えた。


 あの紋章は……ヴェルド王国か。


 私はメイドや騎士たちと共にその馬車を出迎える。


「どうなさいましたの?王子様」


 私は目の前で醜く顔を歪める元婚約者を見つめる。


 その男は、私を見た瞬間私に駆け寄ってきた。


「アルテシアッ!!」


 騎士たちがそれを止める。


「頼む!すまなかった!帰ってきてくれ!お前が居ないと俺の国は……」


 そして、醜く何か言い始めた。


 あら。


 あらあら。


「私が居なくても何も問題はないんじゃなかったんですの?」


 私が笑いながら言う。


「貴様……」


 男の目は血走っている。そして腰の剣に手を伸ばした。


「俺の嫁に、何か用か?」


 その時、カナリアが私の背後に立つ。


「カナリア。来たのね」


「あぁ。無様な男が居ると聞いてな」


「……!!」


 男はそれでも私を糾弾する。


「お前のせいだっ!お前のせいで俺の国は崩壊した!結界とかいうよく分かんねぇ奴のせいで!お前のっ……」


「まだ何か言い残すことはあるか?」


 カナリアが男を威圧する。


「~~~!!クソがっ!帰るぞ!」


 そして、男は踵を返した。


「あら。貴方が帰る王都はもう火の海ですわよ?」


 男は振り向かない。


 私の声は、もう届いていないようだ。


「さようなら」


 私が口にする。


 馬車は、ガラガラと音を立てながら帰っていった。


「一緒にお茶でもしませんこと?話し相手が欲しかったの」


「良いぜ。ちょうど仕事が終わったところなんだ」


 天気は快晴。黒い影一つない。


 少し、すっきりした。


 こういうのなんて言うんだっけ。


「あはは!あいつ、ひどい顔でしたねー!今更何言ってんだって感じで!」


 隣でフェリアが笑う。


「えぇ、そうですわね」


 さわやかな風が頬を撫でる。


 婚約破棄されて、良かった。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価、感想をよろしくお願いします!


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