行商人略奪フラグ破壊
鎧につけられた起爆スイッチが押される少し前、元皇国宰相クレランは王国の辺境を彷徨っていた。
これ以上奥に行けば王国の辺境伯に見つかって撃墜されるし、戻れば皇国から撃墜される故の行動だった。
『おのれ、国に身を捧げてきたわしにこのような報いを!』
怨嗟の声を上げながら、操縦のおぼつかないスピアをギクシャクと動かす。
『あれは……』
クレランがしばらく彷徨っていると前方から商人の者であろう荷馬車が近づくのが見えた。
『何をするにしてもまずは腹が満たさねば』
ここ数日、何もまともなものが食べられおらず空腹であったため彼は商人を襲うことに決めた。
「貴様ら、ワシはクレラン・ゴーン! 大義を成すものだ! 路傍の石ころに過ぎん貴様らに偉大なるワシの糧になる名誉をやろう! その荷馬車をワシに差し出すのだ!」
「ご勘弁を! これがなければ私どもは破滅でございます!」「皇国騎士がどうしてこんなところに」
接近したクレランがコクピットから身を乗り出して、凄みをきかすと、御者をやっていた屈強な男が頭を下げて懇願し、荷馬車の幌の中から出てきた屈強な女が悲鳴をあげる。
クレランは自分に対して平伏す2人の様子に気を良くして、調子に乗った。
「ははは! 石ころのそんな事情なぞワシが知ったことではないな! だがのお、貴様らが『クレラン様万歳!』と言って誠意を見せるのであれば考えんでもないぞ?」
「「クレラン様万歳!」」
「ほほほ! 声が小さいの! もっと大きな声で言わんか!」
「「クレラン様万歳!!」」
宰相は自分の言うことを聞く2人の様子にさらに調子づき、無茶振りをすることに決めた。
「ワシの素晴らしさを体全体で表現して見せよ! ワシが気に入らなかった場合命はないと思え!」
2人がポージングし始めるのを前屈みになりクレランは眺める。
「ほほほ、愉快愉快!」
クレランの愉悦が絶頂に達した時、起爆スイッチが押された。
「ギョエエエエ!」
ハッチを開いて身を乗り出していたため、爆発での即死を免れたが、余波で吹き飛ばされてコクピットから地に落ちる。
「く、クソ何だと言うんじゃ!」
近くにあった茂みに突っ込み起き上がると凄まじい形相をした商人二人組がクレランを見下ろしていた。
「覚悟はできてんだろうな、ジジイ」
「やめろ! 話せばわかる!」
クレランはボコボコにされた。




