騎士として大事なこと
「誰かを守れる騎士にはどうしたらなれるの?」
「俺は誰かを守ろうと思って騎士などやっていないから知らん」
午後の稽古の走る反復練習に入ると、慣れて余裕ができてきたのかそう尋ねてきたので素直にそう答える。
守るものは大概守れないと相場が決まっている。
俺には存在自体が胸糞のフラグにしか思えない。
「え、でも領民を守るために盗賊団から助けてくれたんじゃないの?」
「赤の他人など守ってなにが楽しい。俺がお前らを救出したのは王命があったのと個人的に胸糞が嫌いだったからだ」
「ムナクソ?」
聞き慣れない言葉だったのか、ユノが俺に尋ねてくる。
まだ子供で人のドロドロとした部分を見ていないので、胸糞をまだ認識していないようだ。
俺がどれだけ禍々しいものか、教育しなければならない。
「まだ知らんか。領民が真面目に働いて得たものをなんの苦労もしていない盗賊が横から奪って美味しい思いをしたりすることのことだ」
「なんとなくわかった」
ユノは捕えられている時に盗賊の行いを見ていて、具体的にイメージできたようで不快感に顔を歪めて返事をする。
「あれほど不快なことはない。胸糞は殲滅しなければならない。俺は胸糞を殲滅するために騎士として戦っている」
「守ることよりも胸糞を殲滅することの方が大事?」
「大事だ。胸糞を殲滅することは全てのことよりも優先される」
「胸糞を殲滅することが最優先……。騎士として大事なことがわかってきた気がする」
「貴様は頭が優秀なようだな、ユノ」
俺はその後も稽古をしつつ、胸糞がどれだけ悍ましいものかを説明していた。
稽古が終わる頃にはユノは少女ではなく、胸糞を駆逐する立派な同志となっていた。




