幼馴染モルモット化フラグ破壊
「魔力を探知して、マリスを見つけろ。探知をかければ一度で識別できるはずだ」
『マスター、お言葉ですが、私は個体名『マリス』の魔力波をまだ登録していないため識別が……。東にある森林から弱々しいですが精霊らしき反応を確認』
「それがマリスだ。空間転移しろ」
『承知しました。マスター』
空間転移して、森の中に移動すると、月光を受けて魔力で構成された半透明の羽を暗闇に晒した銀髪の少女ーーマリスと優に10m以上はある狼ーーギガントウルフの姿が見えた。
行方不明になった理由はモンスターには精霊やその写し身である精霊鎧を守護しようとする特性があるため、精霊であるマリスを守護するためにギガントウルフがここに留めていたからだろう。
「グ、グルルル!!」
生物の本能からデマキとの力の差に気づいるのか、怯えの混じった唸り声を上げてこちらを威嚇する。
デマキの通常攻撃をすると、ギガントウルフに匿われる形でそばにいるマリスが巻き込まれるので、規定の攻撃をしない形で対処しないといけない。
大型モンスターは人の魔法に晒されることで、生身の人の魔法では殺し切れないレベルまで進化しているため、鎧の魔法や兵装を使わない上の攻撃で対処するというのは難しいというのが常識だが、俺はこいつの弱点ーーイヌ科全体の弱点を前世で知っているため、撃退までなら十分可能である。
奴の弱点ーー鼻に至近するとデコピンを放った。
「キャイン!!」
ギガントウルフは悲鳴を上げると、森の中に逃げていた。
守護しなければならないという本能よりも、怯えている上で痛撃を受けた恐怖の方が上回ったらしい。
「ありがとうございます。あなたは?」
「……」
デマキの影で月光が遮られたことで魔力の羽が見えなくなったマリスがこちらに問いかけてくるが、あえて無視する。
ここで俺がマリスと繋がりを持ってしまうと、マリスが死亡するストーリーフラグが立ってしまうかもしれないからだ。
『マスター、彼女は精霊です。ここで恩を着せた方が後々、有効利用できる目ができるのではないでしょうか?』
「一度有効利用したら、有力者にこいつは食い物にされる。人間の身でありながら、精霊でもあるからな。人間の脆弱さと一騎当千の兵器としての能力を兼ね備えている。存在が見つかれば、利用しやすい状態に持っていくためにモルモットにされるだろうな」
事実、ゲームのラスボスの過去ストーリーでは、汎用の鎧にマリスの精神ーー精霊体を飛ばすために薬漬けにしてトランス状態にしようとして失敗した挙句、ラスボスと決戦する頃には、鎧に人体を直接繋げて、人造精霊鎧にしたからな。
しかも発端がラスボスがマリスの体質を心配して軍の病院によこしたことというもので見た当時の俺はあまりの胸糞に発狂するかと思った。
本当に製作陣には人の心があるのか、疑いたくなってくる。
『友好を結んで彼女が精霊として成長するのを待てばいくらでも能力を使えたというのに、それにわざわざ手を加えてダメにするとはつくづく人間は愚かですね』
「本当に愚かだよ製作陣は」
俺はマリスと共に空間転移して、マリスの家に彼女を置いていくと、ヴィラン邸に戻った。




